混乱の米国、ほくそ笑む中国 北京ダイアリー

混乱の米国、ほくそ笑む中国 北京ダイアリー
中国総局長 高橋哲史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM081K10Y1A100C2000000

『7日朝、北京の自宅でテレビをつけると、CNNが信じられない光景を映し出していた。

米国の首都ワシントンで、たくさんの「暴徒」が連邦議会の議事堂を取り囲んでいる。警備隊が放った催涙ガスだろうか。白い煙がもくもくと上がる。トランプ米大統領の支持者が議事堂に乱入したのだ。

チャンネルを中国国営の中央テレビ(CCTV)に替えても、同じような映像が続く。「米国式の民主がめちゃくちゃだ」。そんなテロップも現れ…

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・「米国式の民主がめちゃくちゃだ」。そんなテロップも現れた。

・米国の民主主義を象徴する連邦議会が自国民に襲われるという前代未聞の事態は、中国共産党にとって一党支配の優位を訴える格好の宣伝材料になる。

・党機関紙、人民日報が発行する環球時報の胡錫進編集長は7日、中国版ツイッターの微博(ウェイボ)にワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズなど米主要紙の1面写真を投稿し、次のように記した。

・「トップ記事の見出しはすべて『暴徒(mob)』という言葉を使っている。オレはそれに反対しない。しかし、もし同じことが発展途上国で起きれば、これらの新聞は見出しをすべて『ワシントンの春』に替えるだろう」。

・10年前、中東・北アフリカの独裁政権を次々に倒した民主化運動は「アラブの春」と呼ばれた。米メディアは運動への参加者をこぞって称賛したのに、連邦議会に押しかけたトランプ支持者は「暴徒」と決めつける。ダブルスタンダードだ。胡氏はそう言いたかったにちがいない。

・中国外務省の華春瑩報道局長は7日の記者会見で、2019年7月に香港の立法会(議会)がデモ隊に占拠された事件に触れた。「あのとき米メディアは過激な暴力をふるうデモ参加者を『民主の英雄』と美化した。しかし、今回は全く違う反応をしている」。皮肉たっぷりの口ぶりで、勝ち誇ったような表情だった。

・香港警察が53人の民主派議員を一斉に逮捕したのは前日の6日朝だ。香港国家安全維持法に違反した容疑だった。習近平(シー・ジンピン)指導部は人権問題に厳しいバイデン氏が米大統領に就任する前に、香港の民主派を完全に排除しようとしているのだろう。

・本来なら、民主主義陣営のリーダーである米国が先頭に立って中国を批判すべき局面だ。しかし、混乱の極地にある米国はそれどころでないし、中国は米国がもの申せば「自分たちも議会を占拠した『暴徒』を裁いているだけだ」と反論するのはまちがいない。

・7日午後、中南海の北側にある香港特別行政区政府の北京事務所に足を運んだ。観光地として有名な後海のすぐそばだが、新型コロナウイルス対策に加え、マイナス10度を下回る寒さを嫌ったのか、周囲を歩く人はほとんどいない。

・中国の国旗である五星紅旗と、それより低い位置に掲げられた香港特別行政区の旗が強風にあおられてはためいていた。

・前回、昨年5月に来たときと同じように、中国国旗ばかり大きくはためいているようにみえるのは気のせいか。米国からの支援を期待できず、孤立を深める香港の民主派を象徴しているようにも感じた。

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高橋哲史 (たかはし・てつし)
1993年日本経済新聞社入社。返還直前の香港での2年間の駐在を含め、中華圏での取材は10年に及ぶ。2017年から2度目の北京駐在で、現在は中国総局長として変わりゆく中国の姿の取材を続けている。

これまでの記事(2020年12月分まで)はこちら https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56599640Q0A310C2FF4000/