イラン、韓国に圧力 友好国の離反をけん制 タンカー拿捕で関係緊張

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『【ドバイ=岐部秀光、ソウル=鈴木壮太郎】イラン革命防衛隊が中東ホルムズ海峡を航行中の韓国船籍のタンカーを4日に拿捕(だほ)し、両国関係が緊張している。イラン国内では保守強硬派の勢いが増している。友好国が米国に配慮してイランから離反するのをけん制するねらいで韓国に圧力を加えている可能性がある。

イランは拿捕の理由を「韓国船が環境を汚染した」と主張する。韓国では米国による対イラン制裁にしたがって凍結した銀行口座の原油代金70億ドル(約7200億円)の返還をイランが暗に求めているとの見方が大勢だ。

イラン外務省報道官は5日、拿捕したタンカーと乗組員を人質にしているわけではないと強調する一方、「人質問題があるとしたら、それは韓国が根拠無く凍結している70億ドルの資産のことだ」とも指摘した。

韓国外務省によると、船員20人のうち韓国人は5人で、外務省と駐イラン大使館は船員の安全を確認し、船舶抑留の早期解除を要請した。同省は6日にも局長級をイランに派遣する方針で、10日に予定していた崔鍾建(チェ・ジョンゴン)第1次官の訪問も予定通り実施し外交解決を急ぐ。韓国軍も近隣海域を航海中の韓国船舶の安全を確保するため艦艇を派遣した。

韓国の主要企業がイランに投資する一方、イランが韓国に多額の原油を輸出するなど良好だった両国の経済関係は、米トランプ政権によるイランへの締め付け強化で一気に険悪となった。イランの中央銀行が開設した韓国の銀行2行の口座に原油の購入代金が振り込まれていたが、米政府がイランの中央銀行を制裁対象に指定したことで韓国がこれを凍結した。韓国は主にイランのコンデンセート(超軽質原油)を輸入していた。

イランの強硬姿勢の背景には、一気に経済協力のレベルを引き下げた韓国の態度への不満があるとみられる。欧州や日本など、米国の同盟国でありながらイランとも一定の関係を持つ国がイラン離れを加速する事態についても警戒しているもようだ。

中東地域の緊迫をあおるイランの挑発行動に米国は警戒を強めている。ロイター通信によると、国務省当局者は韓国船籍の石油タンカーが拿捕された事件についてイランに即時解放を要求した。国防総省は3日、原子力空母「ニミッツ」の中東地域への派遣を延長すると明らかにした。わずか3日前に中東から帰還させるとした方針を覆した。「イランの指導者が発した最近の脅威」への対応が方針転換の理由だと説明した。

米国のバイデン次期大統領はトランプ政権が一方的に離脱した多国間の取り決めであるイラン核合意への復帰を模索する。核合意に復帰しても米制裁は一気に解除されるわけではなく、イラン産原油禁輸の適用除外を復活させるなど段階的に進むとの見方が大勢だ。イランが中東情勢の緊張を高めてバイデン次期政権から譲歩を引き出そうとしているとの見方が米国では目立つ。

解禁された原油輸出をどこに振り向けるかはイランにとっての外交カードになり得る。イランは核施設で製造するウランの濃縮度を20%まで引き上げるなど、挑発的な行動で国際社会に揺さぶりをかけている。

韓国外務省によると、両国は凍結資産をイランが新型コロナウイルスのワクチンを購入する費用に充てる方策を協議していた。世界保健機関(WHO)などが主導するワクチン購入の国際枠組み「COVAX(コバックス)」にイランが加わり、凍結資産を使ってワクチン代金を支出する案だ。

同案は米財務省から特別承認を受けた。韓国側はCOVAXにワクチン代金を送金することをイランに提案しているが、イラン側は送金分が米国に差し押さえられることを警戒し、決断せずにいるという。

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