米上院決選投票へ2党総力戦 トランプ氏「降伏せぬ」 バイデン氏「民主勝利なら現金給付増額」

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『【ダルトン(米ジョージア州)=河浪武史】米南部ジョージア州で5日、連邦議会上院の勢力図を決める2議席の決選投票が行われた。政権運営の命運を握るだけにバイデン次期大統領は4日に同州で「家計への現金給付を増額する」などと追加公約した。政治への影響力を残したいトランプ現大統領も「選挙に不正がある。我々は決して降伏しない」などと改めて主張した。

同州では2020年11月3日の上院選で2議席とも候補者が過半…

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・同州では2020年11月3日の上院選で2議席とも候補者が過半数の得票を得られず、今回の決選投票となった。保守色の強い同州はもともと共和党の地盤だが、大統領選は約30年ぶりに民主党が勝利した。上院決選投票も事前の世論調査では民主2候補がごくわずかにリードしている。

トランプ氏の集会は聴衆の多くがマスクをせず密集したまま演説を聴いた(4日、ジョージア州ダルトン)=ロイター

・上院は定数100のうち共和党が50、民主党は48議席を既に確保している。民主党がさらに2議席を得れば、上院の勢力図は50対50となって、上院議長に就任予定のハリス次期副大統領の票で最終決着することになる。事実上の民主党勝利となり、主要人事などでバイデン氏の裁量は大きく増す。巨額のインフラ投資と企業・富裕層増税を組み合わせた「バイデノミクス」も一歩前進することになる。

・逆に共和党が追加で1議席でも取れば、上下両院は多数派が異なる「ねじれ議会」となって政策運営で共和党の力が大きく増す。バイデン氏のリベラル色の強い一部の人事案は上院で覆される可能性があり、大型の税財政改革なども一気に遠のくことになる。

・バイデン氏は4日に州都アトランタで16分間演説し、民主党が2議席とも勝利すれば「家計への現金給付を2000ドル(約20万6千円)に増額する」と公約した。12月末に成立した9000億ドルの経済対策では、現金給付は1人最大600ドルだ。民主党はさらなる増額を働きかけており、バイデン氏も「苦境にある人々に今まさに2000ドルを届けたい」などと訴えた。

・トランプ氏は州北西部ダルトンで1時間半近く演説して「今回は民主党による社会主義国家への道を阻止する重要な選挙だ」などと強調した。同州の共和党2候補はトランプ氏を強く支持しており、2議席とも勝利すればトランプ氏は退任後も政治に一定の影響力を残せる。24年の次期大統領選に意欲があるとされる同氏にとっても、今回は重要な選挙となる。

・もっとも、トランプ氏の演説は「民主党に大統領選で票を盗まれた」などと選挙不正の訴えにほぼ終始した。同氏は20日の退任が迫りながら、なお大統領選の敗北を認めていない。6日には上下両院合同会議でバイデン氏を正式に次期大統領に選出するが、選挙人の投票結果はペンス副大統領が読み上げる。トランプ氏は「ペンス氏が我々の期待に応えてくれる」と言及し、副大統領にまで「番狂わせ」を起こすよう圧力をかけてみせた。

・トランプ氏は共和党のラフェンスパーガー・ジョージア州務長官に、大統領選の結果を覆すよう集票結果の改ざんを暗に求めていたことが発覚している。同州では共和党の結束が揺らぐが、民主党は逆に同州に500万ドルもの資金を投下。同党支持者が比較的多い期日前投票は既に300万人を超え、08年の上院決選投票の総投票者数(210万人)を早々に突破している。

・トランプ氏が演説したジョージア州北西部は、同氏を熱烈に支持する極右の陰謀論集団「Qアノン」が勢力を伸ばし、同陰謀論の信奉者が11月の下院選で初当選した異色の地だ。聴衆の40代男性は「選挙では民主党に票を盗まれた。今回は不正でゆがめられないように大差で勝利する必要がある」とトランプ氏に同調するが、演説終了前に帰路に就く参加者の姿も目立ち、支持者には温度差もある。

・同州の上院決選投票は5日午前7時(日本時間同午後9時)に始まり、即日開票される。ただ、期日前投票が多く、結果の判明まで数日かかる可能性が高い。バイデン氏は巨大IT企業の分割論などに影響する司法長官などの指名を先送りしているが、それは上院の勢力図を見極めたいからだ。民主党がホワイトハウスと上下両院を制する「トリプルブルー」になれば、規制強化や増税などを意識して、金融市場が揺れ動く可能性もある。

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

ジョージア州は2018年の州知事選挙でも黒人票を抑圧するなどして、ギリギリで現在のケンプ知事が勝利したように、民主・共和が伯仲している州。その中で州知事選で敗れたステイシー・エイブラムズが積極的に民主党支持者の票を掘り起こし、昨年11月の大統領選では民主党が30年ぶりに勝利した。トランプ大統領は受け入れられない現実だろうが、そうした地道な選挙活動が結果を生み出した。それなのにトランプ大統領は根拠のない選挙不正を訴え、共和党州知事を敵に回し、選挙の正当性を毀損している。今回の上院決選投票だけでなく、アメリカの民主主義にとって深刻な状況。
2021年1月6日 6:42いいね