https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM255FW0V21C20A2000000
『米国がインド洋の要衝にあるスリランカへ提案していた4億8000万ドル(約490億円)のインフラ支援を撤回した。現政権下で急速に中国との関係を深めるスリランカへのけん制とみられるが、支援撤回はかえって中国への接近を促すことになりかねない。
在スリランカ米大使館は2020年12月17日、米国の「ミレニアム挑戦公社」がスリランカへの支援を取りやめると表明した。スリランカ最大の都市コロンボでの道路やバス路…
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・スリランカ最大の都市コロンボでの道路やバス路線の拡充などを盛り込み、5年間で総額4億8000万ドルを助成する計画だった。米大使館は取りやめの理由を「(スリランカ側の)取り組みが十分でないため」と説明している。
・ただ支援撤回の背景にはスリランカの中国への接近をけん制する狙いがあるとみられる。スリランカでは19年11月の大統領選で当選したゴタバヤ・ラジャパクサ元国防次官が兄のマヒンダ・ラジャパクサ元大統領を首相に起用した。マヒンダ氏は親中派として知られ、現政権下で中国の存在感は大きくなっている。
・中国は20年10月、スリランカへ9千万ドルの助成金を交付すると決めた。農村部での医療、教育、水の供給などの拡充に使われる。中国は同年3月にも新型コロナウイルス対策として、スリランカに対し、5億ドルの金融支援を決めていた。
・スリランカ政府も同年12月7日、中国の山東昊華タイヤによる工場の新設計画を承認した。同社は3億ドルを投じ、南部ハンバントタ港の近くに建設する。スリランカ側は、生産したタイヤの8割以上を輸出するなど一定の条件を満たせば同社に減税措置を適用する。
・スリランカ最大の都市コロンボの海岸を埋め立てて開発する新都市「ポートシティー」計画にも中国企業が参加する。この事業はマヒンダ氏が大統領だった14年に始まり、19年に沿岸部の埋め立てが完了していた。12月17日に中国企業とスリランカ企業の合弁会社が投資計画を発表した。第1段階としてオフィス、集合住宅などの建設に計4億5千万ドルを投じる計画だ。
・このまま米国が支援を撤回していけば、中国との経済的なつながりはますます強まることが予想される。スリランカはインド洋の要衝にあり、中国との関係が深まれば地域の新たな火種になりかねない。(早川麗)
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