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『【マニラ=遠藤淳】中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が南シナ海の紛争抑止に向けて進める「行動規範」の策定作業が難航している。ASEANが域外の非当事国との連携を探る動きに中国が反発している。新型コロナウイルスの影響もあり協議は進まず、目標とする2021年の合意ができるかどうか不透明感が漂っている。
南シナ海で20年12月26日、ベトナム南部ホーチミン市に寄港していたインド海軍の艦船がベトナム海…
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・南シナ海で20年12月26日、ベトナム南部ホーチミン市に寄港していたインド海軍の艦船がベトナム海軍と共に航行する異例の合同訓練を実施した。インド海軍は「地域の安全保障と安定に貢献する」ためだと説明した。中国と領有権を争う南シナ海問題と直接利害関係がない域外の大国と連携を強めたいベトナム政府の戦略が具体化した一例だ。
・「国際法に沿い、実効性のある南シナ海行動規範の早期策定に向けた交渉を求める」。合同訓練前の20年12月21日、ベトナムのフック首相はインドのモディ首相とオンライン会談し、共同声明でこう表明した。インドは中国と国境紛争を抱えるが、当事国ではない行動規範の策定で、ここまで踏み込んだ姿勢を示すのは珍しい。
・南シナ海の領有権を中国と争うフィリピンのロクシン外相は20年11月末、交流サイト(SNS)に「行動規範では域外国は排除しない」と書き込んだ。ドゥテルテ大統領は中国との2国間協議を重視してきたが、最近は姿勢を微妙に変えている。ドゥテルテ氏は同年9月の国連演説で、フィリピンの主張に対する欧米諸国の支持の広がりを歓迎する姿勢をみせた。
・行動規範とは、ベトナムやフィリピンが加盟するASEANと中国が策定交渉を重ねている南シナ海利用の具体的なルールだ。中国の南シナ海進出に対し、ASEAN側が反発を強め、13年に交渉を始めた。19年には各国が求める項目を列記する作業を終え、集約作業に移った。内容は非公表だ。
・域外の大国を巻き込むASEANの動きに中国は不満を強めている。中国の黄渓連駐フィリピン大使は20年12月7日の声明で、南シナ海に軍の艦船を派遣して関与を強める米国を指して「行動規範の策定作業を邪魔している。すべての域内国は警戒し、対抗すべきだ」と批判した。
・中国は行動規範が同国に有利な内容になるよう、優位に立ちやすいASEANとの2者間で交渉を進める考えで、米国など域外国の関与の排除を訴えていた。中国は21年内の合意を目指す考えを示し、ASEAN側も否定していないが、新型コロナの影響で協議の場を十分に設けられないうえ、域外の非当事国を巡る立場の違いが新たな障害となっている。
・今年1月にはASEANの議長国がベトナムからブルネイにかわった。21年はブルネイがASEAN関連の国際会議を取り仕切り、対外的な声明の文言などを調整する。ブルネイも南シナ海の領有権を中国と争うが、経済面では中国への依存度が高まっており、対中姿勢は抑制的だとされる。ブルネイ外務省幹部は20年12月2日のオンラインイベントで「ASEANが中心となり、大国を含む関係国と建設的な関係を推し進める」と述べている。