中国共産党、100年目の孤独

中国共産党、100年目の孤独
中国総局長 高橋哲史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM282EB0Y0A221C2000000

『中国共産党は2021年7月、結党100年を迎える。新型コロナウイルスの猛威をほぼ抑えこみ、足元の経済は好調だ。しかし、世界から祝福の声は上がらない。習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の下で、強権的な一党支配を強める中国は、国際社会との摩擦を覚悟のうえで「強国」路線を突き進む。

昨年12月24~25日、党の最高指導部メンバーが執務室を構える中南海の「懐仁堂」は、張り詰めた空気に包まれていた。…

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・習氏が党のトップ25にあたる政治局員を全員集め、「民主生活会」を開いたのだ。生活上の悩みを民主的に話し合う会議ではない。参加者は自分の至らぬ点を反省するとともに、上司や同僚の欠点を批判する。もともとは建国の父、毛沢東が政敵をあぶり出すために始めたとされる。

・習氏は12年秋に最高指導者の地位に上り詰めてから、とりわけこの会議を重視してきた。今回のテーマは「習近平の新時代における中国の特色ある社会主義思想を真剣に学ぶ」。中国国営の中央テレビは政治局員がひとりずつ習氏に向かって報告する場面を映し出した。それぞれが習氏への忠誠を誓ったにちがいない。

・ちょうど同じタイミングで、独占禁止法を所管する国家市場監督管理総局が中国のネット通販最大手、アリババ集団の調査に入ったのは決して偶然でないだろう。

・アリババをめぐっては、傘下の金融会社アント・グループが20年の11月初旬に予定していた上海と香港での株式上場に、金融当局が待ったをかけたばかりだ。習指導部は「帝国」とも称される巨大企業グループのアリババを一気に追い詰めようとしている。

・きっかけは、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が20年10月に「すぐれたイノベーションは監督を恐れない」と発言したことだったとされる。習氏が、自身と中国共産党への挑戦と受け止めたとしてもおかしくない。大きな力を持ちすぎたアリババと馬氏をこれ以上、野放しにしておく選択肢はなかったのだろう。

・20年1月に湖北省の武漢で新型コロナの爆発的な感染拡大が始まり、習指導部はかつてない窮地に陥った。厳しい言論統制が対応の遅れを招き、共産党の一党支配そのものに批判の矛先が向いたからだ。

・しかし、その後は強権的な統治体制を逆手にとって、世界に先駆けて新型コロナをほぼ抑え込んだ。1~3月期に初のマイナスに沈んだ国内総生産(GDP)の実質成長率は、4~6月期にプラスを取り戻し、20年通年では2%程度に達したもようだ。21年の成長率目標は「8%前後」とする方向で調整が進む。

・日米欧がコロナ危機から抜け出せないなか、中国の一人勝ちといっていい状況だ。

・日本経済研究センターが昨年12月にまとめた予測によると、中国は名目GDPで28年にも米国を超える。コロナ危機の前は、早くて36年以降とみていた米中逆転が大幅な前倒しとなる。中国から始まったコロナ危機が、逆に中国を強くするという皮肉な未来が現実味を増す。

・一党支配に自信を深めた習指導部は、一気に攻勢をかける。

・20年10月下旬に開いた党の第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)では「双循環」という名の新戦略を打ち出した。習指導部が描く中国経済の未来図だ。国内市場を主体とし、外需への依存を減らす。描き出すのは、中国が世界に頼るのでなく、むしろ世界が中国抜きでは立ちゆかなくなるグローバル経済の姿だ。

・その狙いは、5中全会の直後に党理論誌の「求是」に載った習氏のことばに凝縮されている。

・「国際的なサプライチェーン(供給網)のわが国に対する依存度を高め、供給を断とうとする外国への強力な反撃と威嚇の能力を形成しなければならない」。習氏は米国の大統領がトランプ氏からバイデン氏に代わっても、中国にデカップリング(分断)を仕掛けてくる可能性は排除できないとみているのだろう。

・実際、国際社会が中国に注ぐ視線は厳しさを増している。昨年6月末には香港国家安全維持法の制定を強行し、香港の高度な自治を保障する「一国二制度」を有名無実にした。中国の公船が沖縄県の尖閣諸島に押し寄せる状況は変わらず、日本国内では習氏の国賓訪問に反対する声が日増しに強まる。

・中国共産党が定める創立記念日は7月1日だ。この日に向けて、今年の中国は祝賀ムード一色に染まる。

・党の公式な記録によると、第1回の党大会が上海で始まったのは1921年7月23日だ。なのに創立記念日を7月1日としたのは、毛沢東が1930年代にそれを決める際に「第1回の党大会は7月だった」としか覚えていなかったからだとされる。

・今年の7月23日は1年延期した東京五輪の開幕日でもある。そのとき、中国と世界の関係はどうなっているのだろうか。我が道を行く習指導部は孤独を恐れず、国際社会との衝突はいまよりさらに激しくなっているように思えてならない。