ソ連崩壊から30年 綻ぶロシアの求心力

ソ連崩壊から30年 綻ぶロシアの求心力
2021年 世界の転換点(下)
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『2020年12月18日、旧ソ連諸国がオンラインで開いた独立国家共同体(CIS)(CIS)首脳会議は、アリエフ・アゼルバイジャン大統領の独壇場だった。「多くの占領地を奪回した」。昨秋に再燃したナゴルノカラバフ紛争の戦果を誇った。もう一方の当事国で、同じCIS加盟国でもあるアルメニアのパシニャン首相が欠席するなか、演説は1時間近く続いた。

CISは1991年12月のソ連崩壊と同時に創設が発表された。旧…

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・CISは1991年12月のソ連崩壊と同時に創設が発表された。旧ソ連圏の結びつきを維持する目的だったが、地域の安定や再統合につながる実効策は打ち出せない。いまでは外交ショーの場にすぎず、ナゴルノカラバフ紛争でもCISを率いるロシアは早期の停戦仲介をできず、トルコの介入を許した。

・ロシアのプーチン大統領は勢力圏の維持と回復をめざすが、道のりは険しい。モルドバでは昨年11月、大統領選で親欧米派候補が親ロ派の現職に勝利した。ロシアと同盟を形成するベラルーシでは8月、独裁的なルカシェンコ政権の退陣を求める抗議デモが始まり、収まる気配はない。

・ベラルーシでもモルドバでも野党勢力を米欧諸国が支え、政権をロシアが助けた。14年にはウクライナでも親欧米派による政変が起きた。民主主義で自由経済の米欧と、強権で国家主導経済のロシアという対立の構図は今年、旧ソ連を構成した各国でさらに鮮明になるだろう。

ロシアによるクリミア併合に関する条約に署名するロシア、クリミア、セバストポリの代表(2014年3月18日、モスクワ)=ロイター

・20年を超すプーチン体制で深刻になった経済低迷がロシアの求心力低下に拍車をかける。対する米国では、対ロ強硬派のバイデン政権が1月20日に発足し、「プーチン外交」への逆風は強まる。

・ただ、プーチン氏に米国に屈する考えはない。

・「われわれを『うすのろ』だとでもお考えか?」。CIS首脳会議の前日の記者会見で、プーチン氏は皮肉たっぷりに米欧に問いかけた。自国の安全保障が脅かされてきたことにロシアが気付いていないとでも思っているのかと、反発した発言だった。

2000年5月、モスクワのクレムリンでエリツィン元大統領が見守る中、就任の宣誓をするロシアのプーチン大統領(左)(AP=共同)

・ロシアの不信感は強い。冷戦終結時の約束に反して北大西洋条約機構(NATO)は東方に加盟国を拡大。02年に弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から脱退したのは米国だ。新戦略兵器削減条約(新START)の失効が2月に迫ってもロシアの延長の呼びかけに応じない。プーチン氏はまくしたてた。

・バイデン氏のロシア観はどうか。外交専門家のドミトリー・トレーニン氏は「プーチン氏ら旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身者がロシアを統治している」とバイデン氏がみているとの見方を示す。バイデン氏は、反体制派指導者ナワリヌイ氏の毒殺未遂疑惑も、その証左だとみなしているだろう。

・24年のロシア大統領選に向け、5選出馬を視野に入れたプーチン氏が警戒を強めるのは確実だ。年末の記者会見で「いつも通り、内政干渉はあるだろう」と述べ、「対抗する準備はできている」と敵意を隠さなかった。21年1月のバイデン新政権の発足を前に早くも両国のせめぎ合いは激しさを増している。

(モスクワ=石川陽平)

1991年12月8日、ソ連の存在停止と独立国家共同体(CIS)創設を宣言する(右から)エリツィン・ロシア共和国大統領、シュシケビッチ・ベラルーシ共和国最高会議議長、クラフチュク・ウクライナ共和国大統領(ロイター=共同)