米国防法が成立、トランプ氏の拒否権不発

米国防法が成立、トランプ氏の拒否権不発
中国対抗へ基金創設、スパイ活動阻止目指す
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『【ワシントン=中村亮】米国で2021会計年度(20年10月~21年9月)の国防予算の大枠を定める国防権限法が1日、成立した。トランプ大統領は米軍の海外駐留削減を制限する条項などに反対し拒否権を発動したが、議会上下両院がそれぞれ再可決した。軍拡を続ける中国への対抗を目指す。

上院は1日、国防権限法を賛成81、反対13で再可決した。下院も20年12月末に再可決した。上下両院は同12月中旬までに国防権限法を可決したが、その後にトランプ氏が拒否権を発動していた。再可決の条件は3分の2以上の賛成で、与党・共和党からも多くの議員がトランプ氏の意向に反して賛成に回った。法案をめぐるトランプ氏の拒否権を議会が覆したのは今回が初めて。

国防権限法にはドイツやアフガニスタンでの駐留米軍削減を制限する条項を盛り込まれた。南北戦争で奴隷制維持を目指した南軍に由来する米軍基地の名称を変える条項も明記した。ともにトランプ氏が不満を表明し、拒否権を発動する理由にあげていた条項だ。

トランプ氏は1日、ツイッターでインターネット企業の責任の範囲を限定する通信品位法230条の廃止が国防権限法に明記されなかったと指摘。身内の共和党に対して「全く学んでいない!!!」と不満をぶつけた。トランプ氏はSNS(交流サイト)運営企業が自身の主張を不当に制限して安全保障上の問題になっていると主張。責任を取らせるために230条の撤廃を求めていた。

国防予算の総額は7405億㌦(約77兆円)となり、20会計年度に比べて0.3%増えた。中国への対抗を狙う政策を多く盛り込んだ。

目玉としてインド太平洋地域での米軍の強化に使う基金「太平洋抑止イニシアチブ」を創設し、22億㌦を計上した。バイデン次期政権はアジアでの防衛力増強の工程表を示し、22会計年度で基金を大幅に積み増すよう議会に求める公算が大きい。インド太平洋軍は20年春に議会へ送った書簡で基金を創設し、26会計年度までに200億㌦を計上するよう求めていた。

米軍は基金を使い、数年をかけて巡航ミサイルや弾道ミサイルに対する防衛能力の強化を目指す。インド太平洋軍のダビッドソン司令官は中国のミサイルの射程に入る米領グアムに地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を配備する意向を示しており、基金を活用していく可能性がある。

長射程の精密攻撃システムを調達したり、燃料や弾薬の在庫を充実させたりする費用にも基金を使うとみられる。同盟国との共同軍事演習や米軍設備の更新にも活用する見通しだ。

中国への情報流出阻止を狙った条項も盛った。具体的には米国の防衛関連企業で働いた経験のある人物が中国政府の影響下にある企業に勤めることを制限する。中国による米国の防衛産業などでのスパイ活動や個人情報の不正取得を阻止するため、包括的な戦略を取りまとめるよう大統領に求めた。

ロシアをめぐっては、ドイツとロシアのパイプライン建設計画「ノルドストリーム2」の完成を妨げるため米政府が制裁を科すことができる企業や個人の対象を広げた。SNSを通じた偽情報拡散によって生じる安全保障上の悪影響について国防総省での教育を充実させるよう求めた。

国防権限法はトランプ氏の拒否権発動に加え、一部の民主党議員が再可決の条件に新型コロナウイルス対策として家計への現金給付の増額をあげて成立が遅れた。下院は20年12月末に現金給付を1人あたり600㌦から2000㌦に増やす法案を可決したが、上院では共和党指導部が反対して採決のメドが立っていない。

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