揺らぐ米の覇権、新政権試練 湾岸戦争30年で勢力図一変

揺らぐ米の覇権、新政権試練 湾岸戦争30年で勢力図一変
2021年 世界の転換点(上)
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『2021年は米国、中国、ロシアという大国がそれぞれ歴史の節目を迎える。米国は30年前の湾岸戦争で唯一の超大国の座を誇示したが、その影響力は低下した。国際協調を唱えるバイデン次期米大統領は指導力を取り戻せるのか。世界の行方を展望する。

1月20日。第46代大統領に就任するバイデン氏が、言葉通りに行動するなら、米国は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への再加入や世界保健機関(WHO)への復帰手続きを行…

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・1月20日。第46代大統領に就任するバイデン氏が、言葉通りに行動するなら、米国は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への再加入や世界保健機関(WHO)への復帰手続きを行い、イラン核合意の立て直しに着手する。

・4年前の17年1月、就任直後のトランプ現大統領が行ったのが、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱やイスラム圏7カ国からの入国禁止だった。

・「我々は再び自由と民主主義を擁護する。自由主義陣営を導く信頼を取り戻す」。20年12月28日の演説でバイデン氏は多国間主義や法の支配を重視する指導者として振る舞う決意を示した。

・しかし、国内外に広がったトランプ時代の混迷と分断を簡単にリセットし、影響力を取り戻すのは簡単ではない。

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・1991年1月17日に開戦した湾岸戦争。イラクのフセイン政権によるクウェート侵攻と支配を、唯一の超大国となった米国のリーダーシップによって阻止、戦後国際政治の転換点となった。

・冷戦期に激しく対立してきたソ連も米国の立場を支持し、国連決議を法的な根拠として主要国が団結して行動した。日本も経済的にこれを支援し、戦後、自衛隊にとって初の海外派遣としてペルシャ湾の機雷除去に掃海艇を送った。

・「我々と将来世代のために新世界秩序を築く」。当時のブッシュ米大統領(第41代)は開戦時の演説で誇った。

・湾岸戦争後、自衛隊の国際貢献が問われるようになった(2002年12月、海上自衛隊横須賀基地からインド洋に向け出港するイージス艦「きりしま」)
それから30年。「パクス・アメリカーナ(米国による平和)」の陶酔は見る影もない。2001年の米同時テロを経て、力を過信した米国はアフガニスタンとイラクという2つの戦争に突き進み、単独で中東の民主化を強引に進めようとして挫折した。

・上院議員だったバイデン氏は湾岸戦争に反対した。逆にイラク戦争では、上院外交委員長の立場で積極的に開戦を後押しした過去を持つ。後にイラク戦争への賛成を「大きな間違いだった」と後悔の念を示した。

・09年、厭戦(えんせん)ムードのなかで就任したオバマ大統領は、中東からの拙速な撤退を進めた。オバマ氏は「米国は世界の警察官ではない」と言い切った。副大統領だったバイデン氏も同調した。

・14年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合の背景には、「米国は動かない」とのプーチン大統領の冷たい計算があった。ロシアはフェイクニュースの拡散やサイバー攻撃を駆使、自由主義陣営の分断を図る。

・北朝鮮はイラクやウクライナの経験から「核をやすやすと手放すのは得策でない」という誤った教訓を引き出した。「警察官」の役割を降りた米国の出方を瀬踏みしようと、中国は南シナ海で実効支配の動きを強めた。

2001年9月11日、米同時多発テロで破壊される世界貿易センタービル=ロイター

・世界の勢力図は様変わりした。米国の国内総生産(GDP)の世界に占めるシェアは今世紀初め、世界の30%を超えていたが、20年は25%まで低下。30年前にわずか1.6%だった中国は18%にまで高まった。中国は急速に強まった経済を武器に米国の覇権に挑む。

・12月にドバイで開かれた中東アフリカ最大のIT(情報技術)見本市GITEX。新型コロナウイルス禍の影響で閑散とした会場で、目立ったのは中国企業の姿だった。

・トランプ政権の警告や圧力をよそに、中東やアフリカの国々はコスト面で勝る中国製の高速通信技術や国民監視システムを相次いで採用する。

・「米国のみが世界の安定に責任を持つ」という見方は30年前ですら幻想にすぎなかったかもしれない。それでも、コロナ危機に直面する世界はかつてないほど協力を必要としている。気候変動や過激派テロ対策など一国では解決できない問題ばかりだからだ。

・中ロのような強権国家に対抗するには、米国は価値観を共有する欧州や日本という同盟国と手を携えて進むしかない。同盟と世界の修復に向けたバイデン氏の手腕が問われている。

(ドバイ=岐部秀光)

〈キーワード〉湾岸戦争

1991年1月17日、米国など多国籍軍がイラクを攻撃し始まった戦争。90年8月2日にイラクに侵攻されたクウェートの解放をめざしたもので、91年2月には地上戦に突入した。地上戦突入100時間後にはクウェートを解放し、3月3日には停戦を迎えた。イラクのフセイン政権はイスラエルなども攻撃したが、イスラエルは報復を自重した。約30カ国が参加した多国籍軍の勝利により、米国は超大国の地位を確立した。
日本は多国籍軍支援に130億ドルを拠出したものの、人的貢献がないとして国際社会に評価されなかった。政府は92年に国連平和維持活動(PKO)協力法を成立させ、自衛隊が海外で活動する道が開かれた。