逃亡1年のゴーン元会長、自省なく活動活発 狭まる包囲網

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『日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(66)が海外に逃亡して29日で1年がたつ。中東レバノンに逃れたかつてのカリスマ経営者は同社の苦境をよそに、大学などで精力的に活動、自省の念はうかがえない。身柄引き渡しの見通しは依然として立たないが、仏当局も追及を強める。徐々に狭まる包囲網。日本の法務・検察当局も身柄確保への期待を捨てていない。

「レバノンだけでなく(中東)地域トップになる」。9月、レバノンの大学の壇上…

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・英語やフランス語で経営者や起業家の育成計画を雄弁に語り、自身の協力で大学に設けられた新課程の未来に胸を張った。2021年3~5月の6日間のみの授業に参加者は1万5000~2万ドル(約150万~200万円)を支払う。

・日産の資金を流出させたなどとして会社法違反罪などに問われた元会長は19年12月29日、保釈条件に違反して関西国際空港から出国した。逃亡先は少年時代を過ごしたレバノン。元会長と政府との関係は深いとされ、地元メディアによると、レバノンの検察当局は今年11月、敵国のイスラエルに入国したなどとして弁護士らが要求していた元会長の訴追を行わないと決めた。日本からの逃亡を巡る訴追にも消極的とみられる。

・海外逃亡で手に入れた〝自由〟の下、最近の活動は精力的だ。フランスの映像制作会社などは10月、元会長のドキュメンタリー映像の制作を発表した。元会長夫妻の協力の下、既にレバノンの首都ベイルートで撮影を始めている。

・11月には公式ウェブサイトも開設し、改めて日本の司法制度を「人質司法」と批判。自身の役員報酬過少記載事件の共犯として日本で続く日産元役員の公判について「長い戦いになる」と推測してみせた。ベイルートでは8月に大規模な爆発が起きたが、元会長の自宅に目立った被害はみられなかった。今も自宅で生活しているかどうかは判明していない。

・元会長がうかがわせる余裕は、逃亡計画を主導したとみられる〝キーマン〟の置かれた状況と無関係ではなさそうだ。米陸軍特殊部隊元隊員のマイケル・テイラー容疑者(60)親子について米連邦地裁や国務省がいったん日本への身柄引き渡しを認め、日本で裁判を受ける可能性が高まったが、弁護側の申し立てを受けて10月末に移送手続きは中断された。

9月、レバノンの大学に姿を見せたゴーン元会長=ロイター

・ただ、元会長への追及は厳しさを増しつつある。国際刑事警察機構(ICPO)を通じてレバノンなど各国に身柄拘束を求める日本の検察当局だけではない。仏捜査当局は自動車大手ルノーの会長当時、同社の資金を不正使用した疑惑の捜査を続けている。今年12月には、元会長が税法上の居住地を虚偽申告したとして仏税務当局が夫妻の所有財産約1300万ユーロ(約16億円)相当を差し押さえた、と仏紙が報じた。

・レバノンの国内情勢が元会長の出方を左右する可能性もある。レバノンは3月に債務不履行(デフォルト)に追い込まれ、8月には首都ベイルートで起きた大爆発で中心部が甚大な被害を受けた。長年の政治腐敗や行政の機能不全も絡み、8月以降、新政権すら発足していない。各銀行は資金不足から顧客の預金引き出しの限度額を月数万円に絞っている。

・人々の不満が頂点に達しようとするなか、英スタンダードチャータード銀行の現地トップなどを歴任したエコノミストのダン・アジ氏は「(元会長も含め)特権を享受してきた富裕層の資産をカットするしかない」と指摘する。

・レバノンに滞在する限り元会長の刑事責任追及は困難だが、元会長を取り巻く環境は変わっている。日本の法務・検察幹部の一人は「政権の考え方が国内情勢を受けて変わる余地もある。海外当局などの動向も注視し、身柄の引き渡しにつなげたい」と話している。

日産、大きな傷痕 ブランド力回復には時間

・日産自動車はゴーン元会長の逮捕後、独裁体制を生んだとの反省などからコーポレート・ガバナンス(企業統治)改革を進めてきた。2019年6月には監督と業務執行を分離する指名委員会等設置会社に移行。社外取締役を大幅に増やすなど透明性を高めた。

・「ゴーン時代は取締役会が議論すらなく、重要事項が10分で決まることもあった。今は議論が活発になった」。ある幹部は打ち明ける。

・一方、経営の立て直しは道半ばだ。19年12月に内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)がトップの新経営体制が発足したが、この1年は元会長が進めた拡大路線の後処理に追われた。値引きに依存しながら規模を追求してきたためブランド力が低下。新型コロナウイルス禍を受けた販売低迷も重なった。21年3月期の連結最終損益は6150億円の赤字と、2期連続で6000億円台の巨額赤字を見込む。

・日産は20年5月に新たな中期経営計画を公表した。内田社長は規模を追う経営からの決別を宣言し、「日産を必ず成長軌道に戻す」と力を込めた。20年秋に米国で最量販車「ローグ」の新モデルを投入するなど新型車攻勢も始まり、足元で最悪期は脱しつつある。

・もっとも、ブランド力の回復には時間がかかる。筆頭株主である仏ルノーとの資本関係を巡る議論も中長期の懸念材料だ。かつては日産との経営統合をルノーに迫る仏政府などの圧力を元会長がかわしていたが、「再び同じ状況になった時に、ゴーンのように立ち回れる人間がいないのは大きなリスクだ」(日産幹部)。カリスマ経営者の退場は同社になお大きな傷痕を残している。

カルロス・ゴーン氏が不法出国した飛行機がリアルタイムで確認か / Flightradar24(2020.01.02)
https://buzz-plus.com/article/2020/01/02/carlos-ghosn-flightradar-news/