東南アジア・米国、安全保障や経済分野で駆け込み合意

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『【ジャカルタ=地曳航也、ハノイ=大西智也】2021年1月20日の米国の政権交代を前に、安全保障や経済などの協力でトランプ政権と合意に持ち込む東南アジア各国の動きが相次ぐ。実利を重視するトランプ大統領の在任中に、駆け込みで成果を得たい東南アジア側の思惑がのぞく。人権や民主主義などの理念を優先しそうなバイデン次期米大統領のアジア政策への不安も背景にある。

8日、フィリピンのロレンザーナ国防相は、マニラ…

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・8日、フィリピンのロレンザーナ国防相は、マニラを訪れたミラー米国防長官代行との会談で、米国から2900万ドル(約30億円)相当の武器の供与を受けることで合意した。ライフルや即席爆発装置(IED)対応装備などで、フィリピンのドゥテルテ大統領の治安対策を強化する狙いだとみられる。

・フィリピンは11月にも、オブライエン米大統領補佐官(安全保障担当)が同国を訪れた際に1800万ドル相当の武器システムを譲り受けることを申し合わせた。

・ドゥテルテ氏と、バイデン氏が副大統領として支えたオバマ前米大統領の関係は冷え込んでいた。看板政策である強硬な薬物取り締まり策に対し、オバマ氏が人権問題を念頭に懸念を示したためだ。トランプ氏とは良好な関係を保つ。

・インドネシアのルフット海事・投資担当調整相は11月中旬、同国が新たに設ける政府系ファンドに米国の政府機関である国際開発金融公社(DFC)が20億ドルを出資する契約にワシントンで署名した。ルフット氏はジョコ大統領の腹心だ。

・このファンドは新型コロナウイルスで打撃を受けたインドネシア経済の回復の起爆剤として、ジョコ氏が各国に資金拠出を求めている。インドネシア側は総額150億ドル規模を目指し、米国は早々に拠出を表明した。

・署名の2日前、ルフット氏はホワイトハウスでトランプ氏と面会した。すでに米大統領選でバイデン氏が当選を確実にしていたが、一部の州では票の再集計が続いていた。ルフット氏は「公式な選挙結果がどうであれ、友情は維持される」と述べ、敗北を認めないトランプ氏への配慮を見せた。

・東南アでは損得勘定で取引ができる現在のトランプ政権下だと、安保や経済の協力が進みやすいとの見方が根強くある。

・米国は今秋にインドネシアに適用してきた関税優遇制度を延長した。南シナ海を巡り中国との対立が激化しており、沿岸国のインドネシアの協力を得る狙いもあったとみられる。ミラー国防長官代行は12月7日、ジャカルタを訪れ、インドネシア側と合同軍事演習を増やすことで一致した。

・トランプ氏は「アジア軽視」といわれてきたものの、一定の実利はもたらした。米国から東南アジア諸国連合(ASEAN)への直接投資は19年が約245億ドルで、オバマ前米政権末期の16年の約1.6倍に達した。インドネシアやベトナム、カンボジアの対米輸出は17年のトランプ政権発足後、増える傾向だ。

・ベトナムでは10月に、南部のビントゥアン省で液化天然ガス(LNG)基地の建設に米電力会社のAESが参画することが決まった。署名式にはオンライン形式でポンペオ米国務長官も参加した。ロイター通信によると、ポンペオ氏は「毎年数十億ドル相当の米国産LNGの輸入の道が開かれる」と強調した。

・ベトナムは10月に、今後3年間で5億ドルの米国産豚肉を輸入することでも米側と合意した。12月16日に米財務省から制裁措置の対象になる「為替操作国」の認定を受けたものの、関連制裁を回避するため、対ベトナムの貿易赤字に懸念を示すトランプ氏が大統領の間に、赤字削減を急ごうとした意図が透けて見える。

・オバマ前米政権は外交・安全保障政策の軸足をアジアに移す「リバランス」を打ち出した。だが、政策が行動を伴わず、任期中に中国の南シナ海の軍事拠点化を招いたとの批判もある。

・アジア外交に詳しいインドネシアの国立パジャジャラン大のトゥク・レザシャ講師は「バイデン次期米政権が同様な政策を掲げるならば、東南アジア各国は成果を不安視するだろう」と指摘する。