[FT]「破綻国家」寸前のナイジェリア(社説)

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『西アフリカのナイジェリア北西部で先週末、男子寄宿学校から拉致されていた300人以上の生徒が数日ぶりに家族と再会した。今回の事件で、2014年にボルノ州チボクで起きた女子生徒276人の拉致事件の記憶がよみがえる。当時と同じく、今回もイスラム過激派ボコ・ハラムが犯行声明を出している。

ナイジェリア政府は身代金を支払っていないと主張している。だが、疑いたくなるのも当然だ。経済が後退しているナイジェリアで…

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・カージャックや拉致、強盗が数少ない成長産業に数えられている。助け出された男子生徒が自宅に向かっていた頃、同国の沖合ではウクライナ人の船員6人がナイジェリアの海賊に拉致された。

・破綻国家とは、政府が機能不全に陥った国を指す。この定義に従えば、アフリカ最大の人口を抱えるナイジェリアは破綻の瀬戸際にある。

12月18日、拉致された生徒たちが解放された知らせを受けてスピーチをするナイジェリアのブハリ大統領=ロイター

・ナイジェリアのブハリ大統領は15年、ボコ・ハラムが「実態的に壊滅した」と明言した。だが、それは幻想だった。ボコ・ハラムという脅威は常に厳然と存在している。今回の男子生徒の拉致事件がボコ・ハラムの犯行であれば、ナイジェリア北東部の拠点から勢力を拡大していることがわかる。現状では「通常の」盗賊による犯行の可能性も残るが、仮にそうだとしても犯罪や暴力事件がはびこる実情は変わらない。遊牧民と定住農民の激しい武力衝突はナイジェリアほぼ全土に広がっている。石油資源が豊富な南部デルタ地帯は貧しく、石油パイプラインを襲撃して横流しする事件が相次ぐことで知られている。

ナイジェリアでは政治エリートによる石油収入の横領やパイプラインからの石油略奪が後を絶たない=ロイター

・国庫からかすめ取られた石油収入が無為無策で慢心した政治エリートに横流しされてきたナイジェリアでは、公人の職権乱用や不正利得が国の実情を映すシンボルと言わざるを得ない。脆弱なのは治安だけではない。世界銀行が定めた国際貧困ライン(1日当たり1.9ドル)未満で暮らす貧困者の数はインドを上回り、世界最多の水準だ。新型コロナウイルスの感染が拡大する以前は、世界で学校に通えない児童の5人に1人はナイジェリア人で、その多くが女子だった。

・すでに2億人を超えた人口は毎年3.2%ものペースで増えている。経済は15年から停滞し、実質的な生活水準は低下している。コロナ禍で原油安が加速した結果、20年は経済が4%縮小すると予測されている。いずれにせよ世界が脱炭素化を進めるなか、ナイジェリアの政治エリートが奪い合う石油収入も先細りが避けられない。ナイジェリアに今必要なのは、外国からの借款の力を借りつつ、国家財政を建て直すことだ。

特殊警察の暴力に抗議するナイジェリアの人々。運動は#EndSARSのハッシュタグで世界に広がった=ロイター

・ブハリ政権は残る3年の任期のうちに財政規律に一定のめどをつける必要がある。治安改善の取り組みを強化すると同時に、司法、治安当局、23年の大統領選挙を管理する選挙委員会などの主要機関への信頼回復を図らなければならない。

・世代交代の重要性も強調したい。今年、幅広い層が連帯して警察暴力に抗議の声を上げる「#EndSARS(対強盗特殊部隊を解体せよ)」運動が起きた。それを見れば、将来への希望の光が見いだせる。ナイジェリアには少なくとも、比較的安定した民主主義が根付いている。独創的で起業家精神にあふれ、政治腐敗に染まっていない若者がナイジェリアの民主主義制度を生かし、国家のあり方を刷新すべきだ。

・理想的には財政が破綻した地方政府の統廃合を進めて無駄を排した新しい国家体制を構築し、そのうえで治安、保健、教育、電力・道路整備という基本的課題に取り組まねばならない。そうした公共財が整えば、ナイジェリアの若者たちは十分に国家を再建できる。人口は現在のペースでいくと、50年までに4億人に倍増する。無策を続ければその時を待たずして、世界が無視できない問題になるだろう。

(2020年12月22日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2020. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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