中南米、ワクチン確保で両にらみ 欧米に中ロ製も

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2500I0V21C20A2000000

『中南米の国々が新型コロナウイルスのワクチン確保を急いでいる。技術力や開発で先行する欧米企業の製品に加え、中国製やロシア製も積極的に採用する。品質を懸念する声もある中、国民向けに広くワクチンを供給して感染の抑制につなげたい考えだ。

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに24日、ロシア製のワクチン「スプートニクV」30万回分がモスクワから空路で届いた。23日に緊急使用を承認したばかりで、ゴンサレス保健相はツイッターへの投稿で「今日はとても特別な日だ」と喜んだ。

アルゼンチンは8月、メキシコと共同で、英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大学が開発を進めるワクチンを現地生産する計画を公表している。だが、それだけでは十分な量が確保できないとみて、11月にロシア製ワクチンの輸入計画を明らかにした。1千万回分の契約を結んでいる。

ブラジルはサンパウロ州で、中国の製薬会社、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)の臨床試験(治験)を進める。ボルソナロ大統領は中国製ワクチンの導入に否定的な見方を重ねて示してきたが、政府内からは前向きな姿勢も出始めている。パズエロ保健相は22日、「早ければ来年1月後半、遅くても2月末」までに中国製ワクチンの接種を始めたい考えを示した。4千万回以上を購入する考えだ。

中南米の政府がワクチン確保を急いでいるのは、感染の拡大がなかなか抑制できていないためだ。中南米の累計感染者数は1496万人と、世界全体の19%を占める。世界人口に占める比率の8%を大幅に上回る。国別の順位ではブラジルの3位を筆頭にアルゼンチンは11位、コロンビアが12位、メキシコが13位に位置する。

中南米では各国とも欧米製のワクチンの入手に時間がかかる状況だ。そこに中国やロシアは自国ワクチンを積極的に売り込んでいる。中国は7月、中南米地域にワクチン調達資金として10億ドル(1030億円)を融資する方針を示した。

ブラジルは新型コロナの感染者が世界で3番目に多い(23日、サンパウロ)=AP

米デューク大の集計データによると、中南米主要国が確保したワクチンのうち、中国とロシア製の占める比率は高い。チリは71%、アルゼンチンとブラジルは約半分を占めている。

ただ中国やロシアのワクチンを巡っては、世界的には承認が遅れており、品質に対して慎重な見方も多い。ペルーは11日、中国医薬集団(シノファーム)のワクチンを巡り、被験者に神経性の症状があったとして、治験を中止したと発表した。

ブラジルでは、シノバック製品の治験結果の公表は遅れている。23日時点では治験の結果公表には至らず、薬事当局への申請は先送りになった。

アルゼンチンによるロシア製ワクチンの承認は、親ロシア国のベラルーシに次いで2カ国目だ。しかも、ロシアでの治験の結果を元に、アルゼンチンの薬事当局は追加の治験なしに承認しており、懸念する見方もある。(ニューヨーク=宮本英威、外山尚之)』