[FT]南ア国営電力会社 破綻回避に向け料金値上げ検討

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2414N0U0A221C2000000

『南アフリカで電力供給を独占する国営電力会社エスコムが、巨額の負債により破綻の危機に陥り、電力料金引き上げの必要性を強調している。同社の機能不全により、アフリカで最も工業化の進んだ南アでは計画停電が日常化している。

ズマ前大統領時代の長年にわたる汚職と放漫経営の結果、エスコムにはコストの高騰、収入の落ち込み、故障が頻発する石炭火力発電所、膨張する負債など、やっかいな問題が山積している。

エスコムは約…』

・エスコムは約4600億ランド(約3兆2600億円)もの負債を抱えており、老朽化した電力インフラへの投資が滞っている。ラマポーザ大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大と不安定な電力供給により大きな打撃を受けた経済の立て直しを迫られているが、エスコムの経営危機の解決が2021年に向けての最優先課題になる。

・エスコムの最高経営責任者(CEO)アンドレ・ド・レイタ氏は、フィナンシャル・タイムズ(FT)の取材に対し、料金の値上げと債務救済策の必要性を訴えた。赤字経営に苦しむ同社は南アの電力供給をほとんど一手に担っており、経済にとって大きなリスクとなる経営破綻を回避するには、「コストに見合った」料金と130億ドル以上の債務支援が必要だと語った。

・南アの主要な企業でキャリアを積んだド・レイタ氏は19年に現在のポストに就いたが、電力料金引き上げが必要な理由として、「生産コスト以下の価格で商品を売っていては商売にならない。そんなことはどんな企業でも不可能だし、エスコムも同じだ」と述べた。

・地方自治体などによる追加課金を除くと、エスコムの標準的な電力料金は、21年に値上げされれば、1キロワット時当たり10セントをわずかに下回る水準となる。これはインドや中国と同じ水準で、欧州各国の電力料金の半分以下だ。南アでは、エネルギー規制当局が電力基本料金を決める。

・経営者および労働団体は12月、エスコムの債務負担を軽減する「戦略」の必要性で合意したが、その方法については意見が割れている。エスコムは、週当たり10億ランドに上る政府の救済資金によりなんとか債務返済を続けて破綻を免れている。20年から26年までの期間に総額2260億ランドの支援を受けることになる。

・ラマポーザ政権は、負債の一部を肩代わりすることも検討したが、エスコムが赤字を出し続けるのであれば、そうした措置も無意味だとド・レイタ氏は主張する。

・「エスコムとしては、誰かの資金を要求する権利はないことを認識している。年金基金の資金をくれということもできないし、資本投入を求めることもできない」とド・レイタ氏は言う。「エスコムが生き延びるための正当な方法として提案してきたのは、コストに見合った料金にするということだ」

・エスコムは、「不正な支出の穴埋めのために政府の資金提供」を求めているのではなく、この10年間の電力不足を解消するために、停電の原因となっている老朽化し故障の多い石炭火力発電所の設備更新や新たな電力供給設備への投資をするための料金値上げを求めているのだ、と同氏は強調する。

・南アの企業は既に、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響やロックダウン(都市封鎖)などの措置で苦境にあえいでおり、電力料金の値上げには抵抗が予想される。

・ラマポーザ政権とエスコムは、債務救済については慎重に事を進める必要がある。債権者が損失を被るような形の債務再編が実行されていると見なせば、格付け機関はエスコムを債務不履行(デフォルト)状態に分類する可能性がある。

・そのような債務再編は「全く考えてもいない」し、エスコムの負債はすべて返済する、とド・レイタ氏は断言する。「債務を資本に振り替えても、債務は消えはしない。その資本は結局、返すべき金だからだ」と同氏は述べた。

・アフリカ最大の資産運用会社で、公務員の年金資金を運用している南アの公共投資公社(PIC)は20年、エスコムの社債およそ1000億ランドを、同社の株式に転換するという提案をした。

・PICはFTの取材に対し、「この点については、エネルギー安全保障があらゆる投資に与える影響という観点から、可能な選択肢を幅広く検討している」と答えた。

・「もしPICが何らかの解決策を支持することになるような場合があれば」、年金ファンドの顧客の投資要求やリスク選好に沿ったものになるだろうと付け加えた。

・アナリストらは、債務を株式化しても、エスコムが配当を支払う資金がなければ、無価値な株券になってしまい、結局は債務不履行状態と見なされる可能性があると言う。

・投資家の持つエスコムの社債を国債に交換するという提案のほうがより理にかなっている、と地元調査会社インテリデックスのアナリスト、ピーター・アタード・モンタルト氏は言う。エスコムの社債は既に、事実上の国債と見なされているからだ。

・ド・レイタ氏は、エスコムの老朽化した石炭火力発電所の廃止を加速することを条件に国際的な開発銀行から低コストの融資を受けるという方法も模索していると明かす。この方法について「いろいろと協議している。脱炭素化をするための資金は、驚くほど潤沢にある」と語った。