覇権国の責務果たさぬ米中新時代 スブラマニアン氏

覇権国の責務果たさぬ米中新時代 スブラマニアン氏
パクスなき世界 元インド政府首席経済顧問
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO67492890Y0A211C2SHA000

『米中対立は他国を巻き込む体制間競争の色彩を帯びてきた。2つの覇権国が国際協調を乱している現状を「Gマイナス2」と表現する元インド政府首席経済顧問のアルビンド・スブラマニアン氏に見通しなどを聞いた。

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――「Gマイナス2」とはどんな世界ですか。

「国際社会に『公共財』を提供する覇権国が存在しない世界を指す。覇権国は開かれた市場や緊急融資、長期的な資本を供給するものだ。米中ともにその役目を果…』

・「米国は国際機関に次々と背を向けたトランプ政権下で、覇権国の責務をほぼすべて放棄した。

・中国はオーストラリアに貿易制限措置を加えるなど他国に攻撃的で緊張関係を生み出している」

・Arvind Subramanian 関税貿易一般協定(GATT)や国際通貨基金(IMF)で国際貿易や経済開発を研究。現在は印アショカ大教授や米シンクタンク研究員。61歳

・――中国はアジアやアフリカで経済力を通じて存在感を高めています。

・「中国は公共財を提供しているように見せかけているだけだ。例えば広域経済圏構想『一帯一路』を通じた開発金融といえる。途上国に世界銀行よりも厳しい条件でお金を貸し付けている」

・「中国は覇権国として公共財を提供できる機会を逃した。新型コロナウイルスで打撃を受けた途上国に3兆ドルを超える外貨準備を使って緊急資金を出したり、債務負担を削減したりできたはずだが、やらなかった」

・――米国で政権が交代します。Gマイナス2の世界は変わりますか。

・「バイデン政権になれば気候変動やコロナなど国際社会が抱える課題に積極的に動くだろう。中国のみが世界に悪影響を及ぼす新たな『Gマイナス1』に変わるのかどうか、見極めなければならない」

・「政権が代わっても米国で中国の脅威への懸念は消えない。中国は『大きすぎて無視できない』『結びつきが強すぎて離れられない』『問題が多すぎて完全には協力できない』存在となった。米中による対決と協力、競争が同時に進む時代になる」

・――中国が覇権を握る時代は来るでしょうか。

・「米国は一国で覇権を握る時代は終わったが後退しても依然大きく、中国のみが覇権を握る世界も考えられない」

・「2つの覇権国が併存するが、かつて言われた米中連携の『G2』には戻れない。習近平(シー・ジンピン)体制の誕生で、中国が平和的に台頭するシナリオは消えた」

・――ローマ帝国の盛衰、英国から米国へと覇権が移り変わる長い歴史のなかで、今のようなGマイナス2といえる時代はあったのでしょうか。

・「初めてだ。米国は長期的な社会の分断が起きている。中国は体制が変わった。

・双方の複雑な要因が絡み合い、我々は前例のない世界にいる」

(聞き手はワシントン=鳳山太成)