[FT]かろうじて持ちこたえた米制度の行方(社説)

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『きわどい戦いだった。ジョー・バイデン氏が先月の大統領選を明らかに制し、今月14日には次期大統領を正式に選出する手続きである選挙人による投票で当選に必要な過半数を獲得した。にもかかわらず、上院共和党トップのマコネル院内総務が選挙結果を認めるまでに41日を要した。大半の共和党員はまだ認めていない。最後まで認めない者も何人かいるだろう。12月半ばには共和党下院議員の半数以上がバイデン氏勝利の決め手となった4つの激戦州での結果の無効を求めて、連邦最高裁判所に請願を提出している。

上院共和党トップのマコネル院内総務が大統領選の結果を認めるのに41日かかった。多くの共和党員はまだトランプ氏の敗北を認めていない=ロイター
テキサス州で発起されたこの法廷闘争には、共和党支持派の19州の司法長官が名を連ねている。司法クーデターでトランプ氏の敗北をひっくり返そうとしたこの計略を、最高裁はあっさりと棄却した。だがトランプ氏自身はまだ負けを認めていない。同氏の生来の「敗北」受け入れアレルギー体質を考えれば、最後まで受け入れない可能性がある。結果的に、共和党支持者の4分の3程度が選挙が盗まれたと信じている。米国システムに備わるガードレールは持ちこたえた。だが支持者に真実を伝えるのを拒む政党のせいで、ガードレールはひどく傷んでしまった。

1月6日が次の試練に
次なる試練は1月6日、連邦議会が選挙人の投票結果を確定する日だ。マコネル氏は共和党議員らに対し、バイデン氏の勝利を示す選挙人名簿に異を唱えないよう促している。多くの議員はそれを無視しそうだ。下院は民主党が押さえており、議会で結果がひっくり返るおそれはまずない。だがバイデン氏がどのような形で大統領に就くかは、米国政治の将来の姿を左右する。

一方で、マコネル氏はトランプ氏を権力の座に就かせ続けるための努力には意味がないことを理解しているようだ。とはいえ、選挙が「盗まれた」という説明から少しでも外れるものは反逆者とみなすトランプ氏に対立しているとは見られたくない。上院でリーダーシップを握り続けるためには、他に道はないと同氏は考えているのだろう。

米国システムは1月20日、バイデン氏の大統領就任式の日に改めて試されることになる。トランプ氏は対抗して、フロリダで集会を開いて2024年大統領選立候補に向けた運動を旗揚げし、就任式ボイコットに従わない共和党議員を裏切り者とみなすとほのめかしている。

ここでも共和党員は選択を迫られることになる。トランプ氏に従う共和党員は永遠に反民主主義者のレッテルを貼られるだろう。多くの共和党議員とトランプ氏に任命された裁判官が過去数週間、勇気をふるって法の支配のために立ち上がってきたのは前向きなニュースだ。アリゾナ州のデューシー知事やジョージア州のラッフェンスペルガー州務長官をみればわかるが、そうした態度はその個人に重大なリスクをもたらす。トランプ氏は彼らを投獄せよと繰り返している。右翼メディアもまた、14日に辞任を表明したトランプ氏の腹心・バー司法長官を糾弾している。バー氏は選挙不正が広がっていた証拠は見つからなかったと発言した。

トランプ氏に従うか、リセットするか
バー氏が悟りマコネル氏も気づきつつあるように、過去の忠誠がトランプ氏による報復から身を守ってくれるわけではない。守ってくれるものは何もない。共和党全体が、向こう見ずなトランプ氏に付き従うか、バイデン氏の勝利を機にリセットするかの選択に直面している。奇異さを増すばかりのトランプ氏の不正選挙論を支持し続ければ、自らを選出した選挙の信頼性を揺るがせる結果になる。

24年の大統領選リベンジの現実味はともかく、トランプ氏が2024年大統領選に立候補する意欲を示しているのは、党の手綱を握り続けるためのツールにすぎない。そんな状態の放置が長引けば、後のしっぺ返しも大きくなる。米国システムは2020年をなんとか切り抜けた。それを良しとするかどうか、共和党が決断するのはこれからだ。

(2020年12月17日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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