光ケーブル「在宅」追い風 住友電工、生産能力5割増

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『住友電気工業は大量のデータを素早くやりとりできる光ケーブルを増産する。2021年度にも横浜市の拠点で設備を増強し、国内の生産能力を5割増やす。新型コロナウイルスの感染拡大を受けたテレワークの普及や米国で相次ぐデータセンターの建設で、通信量が増大。関連需要がインフラ分野にも広がってきた。

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住友電工は横浜製作所(横浜市)の設備を拡充する。増産するのは約7千本の細い光ファイバーを束ねたケーブル。送受信できるデータ容量は従来の2倍近くあり、大容量・高速通信に向いている。投資額は明らかにしていないが、数十億円とみられる。横浜は同社の光ケーブルの主力生産拠点で、大容量を扱う製品では海外向けの生産も担っている。

光ケーブルの需要が伸びている一因は、コロナ禍による特需だ。在宅勤務の普及をうけ、テレビ会議によるデータ通信も増えた。地域間を結ぶ幹線から家庭に引き込むための光ケーブルや、携帯電話の基地局を結ぶ光ケーブルの需要が強い。高速通信規格「5G」が普及すれば、光ケーブルを使う地上の設備でもデータ量の増加が見込まれる。

米国で相次ぐデータセンターの建設も需要を押し上げている。現地ではアップルやフェイスブックといった「GAFA」と呼ばれるIT(情報技術)大手が自社サービスに使うデータセンターの建設を続けている。関連してデータセンター同士を結ぶための光ケーブルの需要も伸びている。「GAFAのデータセンター向けの需要が底堅い。国や地域間を結ぶ海底用ケーブルも好調だ」(住友電工の井上治社長)という。

住友電工の20年3月期の連結売上高3兆1070億円のうち、5割強はワイヤハーネス(組み電線)など自動車関連が占める。光ケーブルなどの情報通信関連は2137億円と約7%だ。ただ部門別の売上高営業利益率は情報通信が8・2%と、自動車関連や全社の4%を上回る。

光ケーブルなどの高い利益率は、材料からケーブル製品まで一貫して手掛ける技術力に支えられている。光ファイバーは髪の毛ほどの太さのガラス内に光信号を通し、情報を送受信する。光信号が弱まらないように透明度を高めるには、材料の高度な配合技術が求められる。狭いスペースに敷設するにはファイバーを上手に束ねるノウハウも欠かせない。

こうした技術を持つ住友電工など日本の電線大手が、高速通信に適した高性能品の開発で世界に先行する。中国メーカーが攻勢を強めるなか、住友電工は独自製品を増産してコロナ下での収益を確保する。

世界の光ケーブル市場では米コーニングやイタリアのプリズミアン、住友電工、古河電気工業などが大手だ。中国のYOFCなども上位に並ぶ。銅製などの電線を含めた市場では各国の電力・通信インフラを支える地場メーカーも多いが、大手による寡占が進む傾向にある。

古河電工も20年度に北米での光ケーブルの販売量を前年度と比べ2割以上増やす。同社は01年に米ルーセント・テクノロジーズの光ファイバー部門(現OFS社)を買収し、光ケーブルの売上高のうち7割が北米向けだ。光ファイバー同士をつなげる接続機にも強い。光ファイバーと接続機を同時に売り込むなどし、顧客を開拓する。

北米では地方での光ケーブルの普及率が都市部に比べて低い。今後は地方での通信網整備による需要拡大に備え「現状よりも細く強い光ケーブルを開発する」(古河電工の福永彰宏取締役)ことで、顧客を開拓する。

通信インフラ需要、波及効果広く

通信インフラの整備は幅広い関連部材の需要を生み出す。実際に情報をやりとりするには光ファイバー同士をつなぐ部品や、光の出力を高め、遠くに飛ばすための装置が必要だからだ。富士キメラ総研によると、光ファイバーと光回線部材を合わせた世界市場は25年には約1兆1000億円と、18年と比べ6割増える見込み。

京セラは光通信の基地局で使う部品を製造・販売している。電気信号と光信号を変換するのに使い「売上高は顕著に伸びている」という。古河電工も光信号を高め、遠くまで送るための部品の開発を強化する。

世界では米国以外でもアフリカなど新興国を中心に通信網が未整備だった地域で光通信ケーブルの市場が拡大している。関連部材を手掛ける日本企業にとっても商機が広がりそうだ。(佐藤遼太郎、魚山裕慈)』