中国蘇寧、拡大戦略のツケ ネットとの融合進まず

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM165SZ0W0A211C2000000

『【上海=松田直樹】中国の小売り大手、蘇寧易購集団が急減速している。百貨店や外資系スーパーの買収、コンビニエンスストアの出店攻勢で事業領域を広げるも収益化に苦しむ。祖業の家電量販事業では大量閉店を進める。5年前、ネット通販最大手アリババ集団と資本提携したが、相乗効果を出せていない。「リアル」が軸の拡大戦略は修正を迫られている。

「最近の誤った報道や噂が事業に影響を及ぼしている。外部の声に惑わされないことが重要だ」。蘇寧の張近東・董事長(日本の会長にあたる)は13日に開いた社内会議で、社員にこう訴えた。

蘇寧を巡っては足元、市場で話題が尽きることはない。12月初めに突如、「蘇寧が債務不履行(デフォルト)に陥るのでは」とネットメディアを中心に記事が流れた。蘇寧は8日、SNS(交流サイト)の公式アカウントで「根拠のない悪質なデマだ」と即座に否定した。

10日に計20億元(約310億円)分の社債を償還し、経営に問題がないことをアピールした。それもつかの間。同日にグループの統括会社、蘇寧控股の全株を担保にし、創業家がアリババから計10億元の融資を受けたことが明らかになった。

蘇寧控股は蘇寧易購などグループの中核会社の株式を保有し、張董事長ら創業家が実質的に蘇寧控股の全株を握る。一連の動きを受け、深圳証券取引所に上場する蘇寧株は急落。市場関係者は「蘇寧の経営が相当、悪化しているのではと警戒感が広がっている」と説明する。

1990年。江蘇省南京市でわずか200平方メートルのエアコン販売店で産声を上げた蘇寧だが、現在は中国屈指の総合小売りグループに成長した。

蘇寧の名前が一躍、世界に知れたのが2016年だ。イタリアの名門サッカークラブ、インテル・ミラノを買収。「伝統あるチームはより強くなる」(張董事長)。知名度向上を狙い、大胆な策に打って出た。

「19年は蘇寧にとって重要な年だ。あらゆる小売りに事業を広げていく」。約2年前、張董事長は胸を張った。19年2月に不動産大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)から百貨店事業を買収。同年6月には仏大手スーパー、カルフールの中国事業も手中に収めた。

拡大戦略を突き進む蘇寧を取り巻く環境はここ最近、激変した。新型コロナウイルスの影響などもあり、消費市場はリアルからネットへの移行が急速に進んだためだ。

ネット通販事業は成長している(蘇寧のスマホアプリの画面)

実は中核会社、蘇寧易購の売上高の6割弱はネット通販事業が占めるものの、リアル店舗の低迷が利益を食い潰す。20年1~9月期の純利益は5億4000万元(前年同期比で95%減)と辛うじて黒字を確保した。売上高の内訳をみるとネット通販事業は18%増えたが、全体では10%減だった。家電量販店やスーパーが足を引っ張っている構図は明らかだ。

本来、ネット通販はさらなる伸びが見込めたかもしれない。蘇寧易購は15年にアリババから約20%の出資を仰ぎ、顧客サービスや物流など幅広い分野で連携し、規模のメリットを追求するはずだった。ところが、ネット通販ではアリババのノウハウを蘇寧が吸収して一定の成果は収めたが、ほかに目立った成果は出ていないのが実情だ。

関係者は「ネット通販以外では蘇寧は独自の路線で事業拡大を進めていった」と指摘する。アリババも出資比率が約20%にとどまることから、蘇寧に対して強く出られなかった面もあった。

もっとも、蘇寧も手をこまぬいているわけではない。家電量販事業では19年初めから20年9月までのわずか2年弱で、約2800店舗の大量閉鎖に踏み切った。「蘇寧といえば家電」を想像する年配の消費者は多いが、大なたを振るっている。

他方、拡大路線の野望も捨てきれずにいる。フランチャイズチェーン(FC)展開で家電や日用品などを取り扱う小型店を20年だけで約2400店も開いた。18年から本格展開を始めたコンビニは毎年のように数千店規模の出店を進めており、投資は膨らむ一方だ。

中国ではスーパーや百貨店などのリアルを押さえ、ネット通販と融合させる戦略がここ数年、アリババなどを筆頭に急速に進む。蘇寧はアリババとの提携で成長したネット通販が原動力となり一時は業績が好転。その後、自前でリアル店舗を拡大し、ネットとの融合戦略を進めるはずだった。

蘇寧が展開する上海市内のコンビニ「蘇寧小店」を訪れると、店内は商品が乱雑に並べられ、客足もまばらだ。「ほかのコンビニに比べ欲しい商品が少ない」。買い物に訪れた女性は不満顔だ。

中国では店づくりを後回しにして出店を優先し、まずはシェアを広げることに専念する小売企業は多い。「出店攻勢でシェア獲得に成功すればいいが、経営が悪化した際には取り返しがつかないケースになることも少なくない」。競合する小売り関係者は指摘する。

蘇寧は東証2部上場の免税店大手、ラオックスも傘下に収めている。新型コロナによる訪日客の激減などで、20年12月期は3期連続の最終赤字になる見通しだ。拡大とリストラの対照的な戦略のはざまで、蘇寧は再び輝きを取り戻せるのか。中国の小売りの巨人に残された時間は少ない。』