新捜査機関、中立性に懸念も 文政権の検察改革

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM111EF0R11C20A2000000

『【ソウル=恩地洋介】韓国で政府高官の汚職などを捜査する新組織の発足が決まり、政権与党は捜査を指揮するトップの人選に入った。検察が独占してきた捜査権は今後、新組織と警察に大幅に移譲され、犯罪捜査の体系が大きく変わる。司法関係者からは捜査の中立性を担保できるのか懸念する声も上がっている。

10日の韓国国会で「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」の改正設置法が成立し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2021年1月の発足を目指すよう指示した。処長は国会の委員会が推薦する2人の中から、大統領が選んで任命する。

革新系与党「共に民主党」の院内代表は11日、推薦委員会を早期に開くよう国会議長に要請すると表明した。改正法により候補者は事実上、与党の方針で選ばれる。検察と対立する秋美愛(チュ・ミエ)法相に近い弁護士らが有力候補に浮上している。

大統領経験者を次々と逮捕するほど強い力を持つ韓国検察は、公捜処の発足と同時に権限をそがれる。大統領や国会議員、政府高官とその家族の汚職や権力乱用事件を優先的に捜査する権限は公捜処にあるため、検察は独自に要人の捜査ができなくなる。

検察と警察の関係は「捜査指揮」から「協力」へと変わる。検察の支配下にあった警察は刑事事件を独自に捜査できる権限を与えられ、自らの判断で捜査を終結することが可能になる。

検察が独自捜査できる範囲は一般公務員の汚職や大型の経済事件、選挙犯罪などに限られる。韓国法務省は公捜処設置と警察への捜査権移譲により、19年に5万件あった検察の直接捜査事件が84%減の8千件余りにとどまるとみている。

尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長は、文政権が月城原発1号機の廃炉を決めた過程の不正に関する捜査を指揮している。大統領府の関与に矛先を向けていたが、今後の捜査も公捜処に移管される可能性が高い。

政権側は公捜処を設置する狙いを「検察の独走をけん制するため」と説明する。公捜処は40人規模の捜査官で発足するが、設置法はこのうち検事の比率を5割未満と定めている。

専門家には「公捜処は大統領直属の捜査機構になる」(保守系の弁護士)と危惧する声がある。大統領に近いトップが選ばれ、親政権の弁護士らを幹部や捜査官に任命することもあり得るからだ。11日付の保守系紙・朝鮮日報は、与党内で尹検察総長を最初の捜査対象とするよう求める声が出ていると報じた。』

文政権、岩盤支持に陰り 「宿願」成就も世論反発―韓国
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020121200406&g=int

『【ソウル時事】韓国の文在寅大統領の支持率に陰りが見え始めた。不動産価格の高騰や新型コロナウイルスの感染再拡大、政権と検察の対立先鋭化が影響し、支持率が「岩盤」とされる4割を下回る。次期大統領選を左右するソウル市長選を来年4月に控え、厳しい政権運営を迫られている。
韓国、新捜査機関近く発足 文政権、検察改革を強行

 「腐敗のない社会に進むための長年の宿願であり、国民との約束だ」。文氏は10日、政府高官らの不正を捜査する「高位公職者犯罪捜査庁」の設置法改正案可決の意義をこう強調した。
 捜査庁設置は政権公約である「検察改革」の柱だが、宿願の代償は小さくなかった。絶大な権限で時の政権を揺さぶる検察の力をそぐ検察改革では尹錫悦検事総長が抵抗し、政権との対立が泥沼化。尹氏を検事総長として初の懲戒委員会に追い込んだが、政権の強行突破に世論は反発した。
 世論調査機関リアルメーターは10日、文氏の支持率が37.1%と過去最低を更新したと発表。大統領選での得票率が41.08%だった文氏の支持率は今月に入り初めて4割を切り、韓国メディアは「岩盤に亀裂が入った」と警鐘を鳴らした。
 政治コンサルタントのパク・ソンミン氏は、不動産価格の上昇やコロナ感染再拡大で支持率が落ち込む中、改革を進める政権と与党「共に民主党」の強権的な手法に「文氏を選んだ中道進歩(革新)層が失望している」と分析する。
 先月と今月で世論調査を比較すると、文氏の支持率は進歩層で71.7%から57.8%に下落。不支持率は25.7%から37.2%に上昇した。支持政党に与党を選ぶ層の支持率は91.2%から84.6%と小幅減にとどまるが、中道層の支持離れは表面化しつつある。
 今後、政権・与党が見据えるのは2022年3月の次期大統領選での勝利。来年4月のソウル、釜山市長選は前哨戦として、与野党が激しい選挙戦を繰り広げる見通しだ。南北関係の進展が見込めない中、文政権は選挙に向けた実績づくりとして捜査庁を年明け早々にも発足させ、支持層の結集を図りたい考えとみられる。
 同庁発足後、捜査対象の1番手に名前が挙がるのは次期大統領候補として高い人気を誇る尹氏。だが、疑惑追及を強権的な姿勢で進めれば文氏の支持離れが加速する恐れもある。パク氏は、支持率を回復できないままソウル市長選で与党が敗北すれば「大統領と与党は非常に厳しい状況に追い込まれる」と語り、文氏の求心力低下が進む可能性を指摘した。』