ポスト5Gの胎動、NTT・NEC・富士通のキーマンに聞く

ポスト5Gの胎動、NTT・NEC・富士通のキーマンに聞く
ポスト5Gの胎動 日の丸連合の逆襲(5)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ113EH0R11C20A2000000

『「リスク取り世界へ、ゲームチェンジ仕掛ける」NTT渋谷副社長

『「リスク取り世界へ、ゲームチェンジ仕掛ける」NTT渋谷副社長

NECとの資本業務提携や、半導体からネットワークに至るまで光技術を活用する「IOWN(アイオン)構想」を掲げ、再び世界へ挑戦するNTT。世界大手と日本勢で大きな差が開くなか、どう伍していくのか。グループ全体の技術戦略を担当するNTTの渋谷直樹副社長に聞いた。
――3Gの時代、日本勢は世界で存在感を見せていました。なぜ地盤沈下してしまったのでしょうか。
「2000年当初はNTTドコモの『iモード』が世界をリードしていた。3G時代のキングだった。当時のドコモの時価総額は43兆円。『NTTは強すぎる』と世界からいわれたほどだ。iモードを世界に広げられればよかったが、米アップルが『iPhone』というシンプルなタッチ操作ができるハイセンスなデバイスを発明した」
「日本勢は端末にボタンをたくさん付けるなどデザインシンキング(デザイン思考)がうまくなかった。結局、アップルのゲームチェンジに日本勢はついていけず、4Gの世界観を作れなかった。3Gでイノベーションを起こしたために、イノベーションのジレンマもあったのだろう」
――4Gの時代は基地局などインフラ面でも日本は存在感を失いました。
「ベンダー側に力がシフトしたからだろう。(スウェーデンの)エリクソンや(フィンランドの)ノキアが自ら作った製品を標準化し、ロックインしていった影響が大きい。特許などの面で力があるキャリア(通信事業者)が、世界でNTTくらいしかなくなってしまった背景もある。コネクティビティー(接続性)の部分ではキャリアの出る幕がなくなり、ベンダーが一気に作る態勢になった。キャリアは単純な『サービスの提供』という範囲にとどまってしまった」

――5Gの時代に入り、オープン化の流れが出てきました。
「技術的な背景としては、汎用サーバーを使い仮想的にソフトウエアを乗せるだけで無線ネットワークができる世界が見えてきたことがある。ベンダーの作る製品は検証が楽で導入しやすい。しかしキャリアが他社に先駆けて独自のソフトウエアを入れたいというニーズには応えにくい。ベンダーの製品ロードマップに取り込んでもらうことをお願いして、他社を含めて誰に対してもリリースする機能に入らないといけない」
「オープンな世界になれば、キャリアが自由にソフトウエアを追加し差異化できる。NTTにとってもさまざまなサービスをソフトウエアで実現するプラットフォームが望ましい。オープン化は日本の技術をもう一度、世界に広げられるラストチャンスだ。我々がリスクを取りながら技術の仕掛けを作り、ゲームチェンジしていきたい」
――もう一度、キャリアが主導していくということでしょうか。
「我々が、基盤技術の面で役目を果たさないといけないという思いが強い。菅義偉首相は所信表明演説で、50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。このままトラフィックが伸びると通信ネットワークだけで日本の発電量を超えるとの統計もある。現在の通信機器のまま対応していくと、とんでもない電力量になる」
「我々は、研究所が開発した広帯域かつ省電力な光技術を活用した光電融合を活用してその課題を解決したい。世界の有力企業が、光電融合はブレークスルーになると期待している。米インテルや米エヌビディアなどが続々とIOWNグローバルフォーラムへ参画している」
 「コンピューターのCPUが光電融合化することで消費電力は圧倒的に減る。ただCPUレベルまで微細化が進むのは10年単位の年月がかかる。それまで何もできないわけではない。サーバー内の配線に光電融合技術を取り入れたり、プロセッサーなどパッケージ間を光電融合技術で配線したりしていく」
 「この光電融合技術を活用して(ソフトウエア次第で)基地局にもデータセンターの基盤にもコアルーターにもなる、超強力なホワイトボックスを作りたい。汎用サーバーを使った仮想化基地局(vRAN)は楽天などが取り組んでいる。だが現在のvRANは、キャリアグレードの省電力化や高速化について課題がある。光電融合技術を活用したホワイトボックスでは、こうした課題を解決できる。開発には2~3年かかるだろう」
――NTTは日本の優秀な人材を集めているものの、日本勢はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)に負けているといわれています。

「ネットワーク全体が仮想コンピューターになるようなOSを作るプレーヤーが、次の時代のGAFAになるだろう。我々はそこでも勝負したい。これからのデジタル社会では、さまざまな情報処理のニーズが生まれる。例えば大量のセンサーから少量のデータを送るケースがあれば、大容量の映像を解析して低遅延で応答するようなケースもある。こうしたニーズに迅速かつ適切に応えるためには、コンピューティング機能がオンプレミスやエッジ、クラウドと分散していく必要がある。こうして分散された処理基盤が全体で仮想マシンのように動くイメージだ。全体を管理するにはOSが必要となり、我々はそこまで作りたい」
――最終的には開発した技術を製品化し、世界に売っていく体制が必要になります。
「そこが一番の弱点だ。日本勢の通信機器のシェアは落ち込み、今は海外のどの国においてもプレゼンスがない。NTTデータやNTTリミテッド、NECのリソースでは足りない部分を担ってもらうプレーヤーを見つけないといけない」
(聞き手は日経クロステック 堀越功、高槻芳 企業報道部 工藤正晃)


――3Gの時代、日本勢は世界で存在感を見せていました。なぜ地盤沈下してしまったのでしょうか。
「2000年当初はNTTドコモの『iモード』が世界をリードしていた。3G時代のキングだった。当時のドコモの時価総額は43兆円。『NTTは強すぎる』と世界からいわれたほどだ。iモードを世界に広げられればよかったが、米アップルが『iPhone』というシンプルなタッチ操作ができるハイセンスなデバイスを発明した」
「日本勢は端末にボタンをたくさん付けるなどデザインシンキング(デザイン思考)がうまくなかった。結局、アップルのゲームチェンジに日本勢はついていけず、4Gの世界観を作れなかった。3Gでイノベーションを起こしたために、イノベーションのジレンマもあったのだろう」
――4Gの時代は基地局などインフラ面でも日本は存在感を失いました。
「ベンダー側に力がシフトしたからだろう。(スウェーデンの)エリクソンや(フィンランドの)ノキアが自ら作った製品を標準化し、ロックインしていった影響が大きい。特許などの面で力があるキャリア(通信事業者)が、世界でNTTくらいしかなくなってしまった背景もある。コネクティビティー(接続性)の部分ではキャリアの出る幕がなくなり、ベンダーが一気に作る態勢になった。キャリアは単純な『サービスの提供』という範囲にとどまってしまった」

――5Gの時代に入り、オープン化の流れが出てきました。
「技術的な背景としては、汎用サーバーを使い仮想的にソフトウエアを乗せるだけで無線ネットワークができる世界が見えてきたことがある。ベンダーの作る製品は検証が楽で導入しやすい。しかしキャリアが他社に先駆けて独自のソフトウエアを入れたいというニーズには応えにくい。ベンダーの製品ロードマップに取り込んでもらうことをお願いして、他社を含めて誰に対してもリリースする機能に入らないといけない」
「オープンな世界になれば、キャリアが自由にソフトウエアを追加し差異化できる。NTTにとってもさまざまなサービスをソフトウエアで実現するプラットフォームが望ましい。オープン化は日本の技術をもう一度、世界に広げられるラストチャンスだ。我々がリスクを取りながら技術の仕掛けを作り、ゲームチェンジしていきたい」
――もう一度、キャリアが主導していくということでしょうか。
「我々が、基盤技術の面で役目を果たさないといけないという思いが強い。菅義偉首相は所信表明演説で、50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。このままトラフィックが伸びると通信ネットワークだけで日本の発電量を超えるとの統計もある。現在の通信機器のまま対応していくと、とんでもない電力量になる」
「我々は、研究所が開発した広帯域かつ省電力な光技術を活用した光電融合を活用してその課題を解決したい。世界の有力企業が、光電融合はブレークスルーになると期待している。米インテルや米エヌビディアなどが続々とIOWNグローバルフォーラムへ参画している」
 「コンピューターのCPUが光電融合化することで消費電力は圧倒的に減る。ただCPUレベルまで微細化が進むのは10年単位の年月がかかる。それまで何もできないわけではない。サーバー内の配線に光電融合技術を取り入れたり、プロセッサーなどパッケージ間を光電融合技術で配線したりしていく」
 「この光電融合技術を活用して(ソフトウエア次第で)基地局にもデータセンターの基盤にもコアルーターにもなる、超強力なホワイトボックスを作りたい。汎用サーバーを使った仮想化基地局(vRAN)は楽天などが取り組んでいる。だが現在のvRANは、キャリアグレードの省電力化や高速化について課題がある。光電融合技術を活用したホワイトボックスでは、こうした課題を解決できる。開発には2~3年かかるだろう」
――NTTは日本の優秀な人材を集めているものの、日本勢はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)に負けているといわれています。

「ネットワーク全体が仮想コンピューターになるようなOSを作るプレーヤーが、次の時代のGAFAになるだろう。我々はそこでも勝負したい。これからのデジタル社会では、さまざまな情報処理のニーズが生まれる。例えば大量のセンサーから少量のデータを送るケースがあれば、大容量の映像を解析して低遅延で応答するようなケースもある。こうしたニーズに迅速かつ適切に応えるためには、コンピューティング機能がオンプレミスやエッジ、クラウドと分散していく必要がある。こうして分散された処理基盤が全体で仮想マシンのように動くイメージだ。全体を管理するにはOSが必要となり、我々はそこまで作りたい」
――最終的には開発した技術を製品化し、世界に売っていく体制が必要になります。
「そこが一番の弱点だ。日本勢の通信機器のシェアは落ち込み、今は海外のどの国においてもプレゼンスがない。NTTデータやNTTリミテッド、NECのリソースでは足りない部分を担ってもらうプレーヤーを見つけないといけない」
(聞き手は日経クロステック 堀越功、高槻芳 企業報道部 工藤正晃)
「通信の地盤沈下は国家の危機」NEC森田副社長

 過去、再三にわたって通信インフラの海外市場開拓に挑戦してきたNEC。広がった大手との差をどう認識し、今後の追撃につなげるのか。21年4月から社長としてNECを率いる森田隆之副社長に聞いた。
――高速通信規格「5G」の先を見据えて通信事業者であるNTTと提携しました。
「一番近しい顧客として相互に意見交換をしてきたなかで、(提携が)必要だろうと決断した」
「そもそも通信事業は世界的に国が手掛けてきたが、歴史の流れのなかで日本ではNTTが民営化され、米国でも通信よりコンピューター分野が重視されるようになっていった。だが5Gの時代、通信はこれまでのように人と人のコミュニケーションを支えるだけでなく、世の中のすべてのモノがつながるなかで産業社会の基盤を担うことになる。それはすなわちナショナルセキュリティーや国際競争力にも関わる。通信事業に対する社会の理解や意識が変化してきた」
「その観点で言うと、日本の通信は3Gや4G(と世代が進むなか)で『地盤沈下』している。ある意味でナショナルセキュリティーや国際競争力の危機だと感じている」
「世界の通信事業者は、金融出身の社長が増えるなど 『経済型』に変わっている。NTTは長期的な視点で研究に取り組んでいるが、それを具現化するとなると、生産技術や製造プロセス、コストなどさまざまな課題がある。(それらを補完できる)NECとNTTとが相互に連携することは非常に重要だ。環境が変化するなかで、改めて危機意識を共有することができた」
「今は(通信方式の)世代が変わる大きなチャンスというタイミングでもある。NECはグローバルのビジネスに過去何度も挑戦しながら、既存ベンダーの非常に厚い壁に阻まれてきた。(通信機器の)オープン化の動きも本格化しており、今回の提携で実績や運用の信頼性といった面を補完できると期待している」

――3G、4Gと世代が進むなかで中国華為技術(ファーウェイ)が台頭しました。3大ベンダーによる事実上の寡占状態が生まれた状況をどう見ていますか。
「かつてのアナログ交換機時代のNECはグローバルで相当のシェアを持っていた。デジタル交換機では米国市場にもチャレンジし、アジアでも足場を築いた。転機となったのは3Gだ。日本に優れた技術はあったものの、標準化で欧州勢に比べてポジションを落とした。国内と海外向けに、二重の開発が必要な点も負担が大きかった。そこで独シーメンス(現ノキア)とも組んだが、全方位でやるのは難しかった」
「3Gから4Gにかけてファーウェイが大きく伸長したのは、特殊な事情もあるだろう。その頃は(地域によって)通信方式が異なり、開発費が高騰することから通信機器ベンダーがすべてに対応するのは難しかった。だが、なぜかファーウェイだけはすべての通信方式に対応できた。業界では謎だが、相当アグレッシブな戦略のなかで席巻していった」
「我々もファーウェイに対しては長い間、マイクロ波無線システムの『パソリンク』をOEM(相手先ブランドによる生産)供給していた。彼らが『マイクロ無線に進出する予定はない』としていたためだが、そのうちに自社で開発・製造するようになり、今では市場トップ3の一角を占めている」
――ファーウェイの飛躍は予期しませんでしたか。手を打つことは難しかったのでしょうか。
「時計の世界で日本がスイスに学んで超えていったように、ファーウェイも学びながら力をつけた。5Gの特許についてもかなり先進的なものを自社で開発している。さまざまな背景があるが、本質的には中国という巨大市場を抱えている点が大きいだろう」
「1990年代から2000年代にかけて日本経済が厳しくなり、NECも半導体や液晶など課題事業を多く抱えるようになった。構造改革を進めるなかで、大きく投資するのが難しい状況だった。長期的に『ネットワークの仮想化』が進むとにらみ、優れた製品をひっさげて海外にも出ていったのだが、既存ベンダーはさまざまな製品のバンドル(組み合わせ)販売で顧客を囲い込んでおり、製品単体で参入するのは困難だった」
 「今回NTTと組んで進めるオープン化が広がればバンドル販売は難しくなり、我々と既存ベンダーが同じ土俵で競争できるようになる。そういう意味でオープン化は非常に大きなチャンス。ぜひ大きな流れにしていかなければならないと考えている」
――今回のように体制を組んで海外に出るという考えは、当時なかったのでしょうか。
「技術的にも環境的にも、そうした素地がなかった。現時点の完全仮想化のネットワークは、処理能力が従来に比べ4割ほど低下するといわれている。10年前ではさらに難しかった」
「もう1つは、通信の重要性に対する意識の低さもあった。例えば過去の海底ケーブル事業に対する日本の対応を見てもそうだ。NECは現在海底ケーブル事業を手掛ける子会社を持っているが、過去には産業再生機構の下で再建中だった」
「事業を守る意味でも重要だとして、NTTなどと連合を組んで取得に動いたが、結局売却された先はファンドだった。『これで良いのか』と議論になり、約1年後に取得に成功した。そうした状況でチームを作るというのはなかなか成立しなかった。技術の進歩と環境の変化が重なり、理解が進んで可能になった面が大きい」

――過去には海外基地局ベンダーと提携しましたが、十分な成果にはつながりませんでした。例えば欧州勢に対し、より積極的に出資する戦略もあり得るのではないですか。
「M&A(合併・買収)はビジネスにおいて当たり前のツールの1つだ。自分で作るか外から取得するかで特別なものではない。ただ、M&Aは目的を明確にして、それに適したスキームでなくてはいけない。大半のジョイントベンチャーは一時的なもので、常に『次』を見据える必要がある。自身の事業の一環としてやろうとすると、コントロールできるポジションを取らなければいけない。これがなかなか難しい」
――過去の欧州ベンダーとの合弁で感じたことですか。
「そうだ。過去にはNECも欧州の2G方式『GSM』に進出するために海外企業との合弁を検討したことがある。だが、過半を占めなければ我々の目的を達成できないと判断し、最終的には断念した。次のシナリオ込みで考えていくということだ」
――NTTとの提携発表後、プロジェクトの進捗状況はどうなっていますか。
「(オープン化や光技術、セキュリティー、オール光ネットワークなど)6つの分野で(協業に)取り組んでいるが、それぞれで進めていく青写真がおおよそできたところだ。それをどういう形で実行していくかを議論するフェーズに入る。今回のNTTとの連携で、我々の弱いところを補完してなんとか攻勢に出たい。これが最後のチャンスではないだろうか」
(聞き手は日経クロステック 高槻芳、堀越功 企業報道部 水口二季)』

・通信敗戦の20年 NTT・NEC、ポスト5Gへ最後の賭け
( https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ076QH007122020000000

・エリクソンも垂ぜんのIOWN構想、NTTの光る切り札
( https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ08126008122020000000

・NEC・富士通「幻の事業統合」 NTTが焦がれる新家族
( https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ0823B008122020000000 )

 ・NTT・NEC、「日英同盟」で崩すファーウェイ覇権 
( https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ101OE010122020000000 )