カンボジア、デジタル通貨でポル・ポトの呪縛解放へ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ107CE0Q0A211C2000000

『カンボジア国立銀行(中央銀行)は10月28日、デジタル通貨「バコン」を導入した。紙幣と同じように中央銀行が発行する「CBDC(Central Bank Digital Currency)」と呼ばれるデジタル通貨で、バハマに続いて世界で2番目となった。

バコンはスマホのアプリを使い、店舗での支払い、送金ができる。中央銀行が発行したバコンを各銀行は自国通貨「リエル」や米ドルと連動させる形で消費者に間接的に発行する仕組みだ。紙幣を使わず、画面上のQRコードでお金のやり取りができる。日本とスイスに拠点があるブロックチェーン(分散型台帳)技術を持つフィンテック企業、ソラミツがカンボジア国立銀行と協力して作った。

カンボジア政府がCBDC発行に前のめりだった背景には〝落ち目〟の「リエル」の存在がある。カンボジアでは通常、あらゆる決済に米ドルが使われる。国民を大虐殺した1975~79年のポル・ポト政権(クメール・ルージュ)は原始共産制を掲げ、通貨を廃止した。80年にリエルは再び導入されたものの、国民の信頼は得られなかった。

国連主導で再建が進んだ90年代には大量の米ドルが流入し、事実上の自国通貨となった。リエルは「1㌦=約4000リエル」で交換できるが、お釣り以外ではあまり使われない。

フン・セン首相(中央)はデジタル通貨をテコにリエル復権を狙う
バコンが普及すれば、ドルに比べて流動性が低いリエルが利用しやすくなり、通貨としての価値は高まる。カンボジア国立銀行のチア・セレイ統括局長は「金融の安全性と効率性を高め、リエルの利用を促進させたい」と強調した。

気になるのはデジタル通貨に乗り遅れる農村部などの人たちが多数いることだ。大都会プノンペンと地方では経済発展に雲泥の差がある。記者は2017~18年ごろ、フン・セン首相関連の取材でよく農村部を訪れた。そこではスマホなど到底持てない貧しい人が多かった。世界銀行によるとカンボジアの19年の携帯電話普及率は130%だが、その内のスマホユーザーは当局が思うほどは多くないだろう。

(企業報道部次長 富山篤)』