バイデン氏、通商代表に中国通 知財・補助金で対中圧力

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『【ワシントン=鳳山太成】米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領は10日、米通商代表部(USTR)代表に議会法律顧問のキャサリン・タイ氏を起用すると発表した。中国通の実務家を貿易交渉の責任者にあて、知的財産や補助金など構造問題で中国に是正を迫る。

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タイ氏は首都ワシントンの法律事務所や議会、政府で職歴を重ねてきたエリートだ。台湾メディアによると台湾出身の両親のもと米国で生まれた。富裕層子弟が多く在学しオバマ前大統領の子供も通った名門校シドウェル・フレンズ・スクールを卒業し、エール大とハーバード法科大学院で学んだ。現在は下院歳入委員会で貿易担当の法律顧問を務める。

次期USTR代表が直面する最大の懸案は中国だ。バイデン氏は同盟国と足並みをそろえ、中国に構造問題の是正を求める構えだ。トランプ政権が貿易戦争で駆使した制裁関税は使わないと明言する。発動済みの関税や「第1段階の合意」はすぐに破棄しないと言及しているものの、具体的な対処方法はUSTRが検討することになる。

中国の構造問題解消の難しさはタイ氏が身をもって経験済みだ。2007年から14年までUSTRで中国担当の法律顧問を務めた。知財侵害のほか、農産品や家電の輸出補助金、鉱物の輸出規制を巡り、協定違反だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。

「経済的にも戦略的にも中国と極めて激しい競争に直面している」。タイ氏は8月の講演でこう語った。「優れた通商政策は攻守両方が必要」が持論で、トランプ政権は「守りに偏った」とみる。中国を抑えこむ「守り」だけでなく、米国や同盟国の産業強化を通して中国依存の脱却を進める「攻め」に重点を置く。

対中強硬論は議会でも超党派で広がっており、タイ氏も厳しい姿勢で臨むとみられる。議会で6年間人脈を築いた同氏は「対中政策で議会に政治的な強い支持がある」と話す。中国の少数民族ウイグル族の強制労働でつくられた製品の輸入を禁じる法案づくりなど人権問題にも関わった。

同盟国との関係改善は次期政権の試金石となる。欧州連合(EU)とは航空機への補助金やIT(情報技術)企業へのデジタル課税を巡って貿易摩擦が起きている。トランプ政権は日欧などから輸入する鉄鋼・アルミニウムに追加関税を課した。一部の企業や労働組合は関税維持を求めており一筋縄ではいかない。

中国に対抗して日米主導でルールづくりを進めるはずだった環太平洋経済連携協定(TPP)も、民主党内で復帰反対論が根強い。バイデン氏も慎重な姿勢だ。制裁関税や多国間の貿易協定を使わずに、中国に圧力をかけられるのか疑問視する声もある。

外国との通商交渉に臨む責任者としてタイ氏の手腕は未知数だ。中国・広州の大学で2年間英語を教えた経験があり、中国語も流ちょうという。ただUSTR次席代表などの経験がないまま、閣僚級ポストへの抜てきは異例となる。外交経験が豊富なブリンケン次期国務長官らがそろう次期政権内で、存在感を発揮できるかは見通せない。』