首相、安保や人権で対応促す 中国外相24日に来日 経済では協力

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『政府は20日、中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相が24~25日の日程で来日すると発表した。24日の茂木敏充外相との日中外相会談に加え、菅義偉首相も王氏と会う。日本側は中国との経済関係を重視する姿勢を伝えつつ、沖縄県・尖閣諸島を巡る問題や香港情勢といった懸案で対応を求める。

茂木氏は20日の記者会見で「2国間には様々な懸案がある。ハイレベルの会談を通じて懸案を一つ一つ解決していくことが重要だ」と話した。

首相が就任後、中国高官と対面で話し合うのは初めてで、中国高官の来日も2月の楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員以来となる。10月にはポンペオ米国務長官が来日しており、米中間のバランスに配慮する。

王氏は新型コロナウイルスへの対応で帰国後に一定期間、隔離される。中国外務省の報道官は20日に「当然必要だ。(日数は)法令に基づいて決まる」との認識を示した。

それでも来日するのは菅政権の対中政策を探り、米国の政権移行期への対応についても意見交換する狙いがある。

日本側は米大統領が代わっても米中対立の流れに大きな変化はないとみている。米中関係の行方を見極めながら対中戦略を練る。

首相は10月の所信表明演説で「中国との安定した関係は極めて重要だ」と強調した。同時に「主張すべき点はしっかり主張しながら、共通の諸課題について連携していく」と述べた。

王氏との会談で、尖閣諸島周辺で相次ぐ中国公船による領海侵入に懸念を表明し、自制を求める。尖閣周辺で中国公船が確認されるのは20日で75日連続となった。

日米安全保障条約5条は米国の日本防衛の義務を定める。米大統領選で当選を確実にしたバイデン前副大統領は12日の首相との電話協議で、5条の尖閣への適用を明言。中国外務省は「中国固有の領土だ」と反発する。

日本側は中国が統制を強める香港情勢についても自治や人権を損なわないような対処を促す。

香港国家安全維持法の制定やウイグル族らへの人権侵害などを巡り、中国への批判は根強い。バイデン氏も人権問題への関心が高いとされる。

首相は中国との経済的な結びつきを重視する立場をとってきた。安保分野で中国に強い姿勢を示すのは日本国内の世論を意識したもので、経済分野での協力の余地を増やすには必要とみている。

インド太平洋地域での中国の過度な影響力拡大を抑止しつつ、経済関係を保つ方策を探る。一連の会談では協力可能な分野として、新型コロナ対応や地球温暖化対策、自由貿易の推進などを議題とする見込みだ。

首相は10月に2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げた。それに先立ち、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席も9月に二酸化炭素(CO2)の排出を「60年より前に実質ゼロを実現できるよう努力する」と表明した。関連技術の開発などで連携を模索する。

日中両国を含めた15カ国が15日に東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)に署名したことも追い風とする。中国を自由貿易のルールづくりに巻き込みつつ、RCEP内で中国の影響力が突出しないよう歩調を合わせる必要がある。

首相は官房長官時代から中国人ら外国人の観光客受け入れに積極的に取り組んできた。新型コロナ収束後をにらみ、経済再開には中国との関係維持は不可欠だとみる。

両国はビジネスに限定した人の往来再開に向け最終調整をしている。日本国内で感染が再び広がり中国でも新たな症例が目立つため、合意に至っていない。

茂木氏は20日の記者会見で「コロナ発生前、人の往来が一番多かったのは中国だ。感染拡大の防止と両立する形でどう再開できるのかよく協議したい」と語った。

今春予定だった習氏の国賓来日は延期したままだ。自民党内には香港情勢や南シナ海情勢などを踏まえ国賓来日をやめるべきだとの主張がある。日本政府はこうした状況での来日は双方に好ましくないと判断している。

茂木氏は20日に「新型コロナの収束に最優先で取り組む時期だ。具体的な日程を調整する段階にない」と言明した。王氏との会談では環境整備のためにも、中国側の懸案への前向きな姿勢が必要だと伝えるとみられる。』