地上140mに「巨大庭園ロビー」持つホテル

隈研吾氏の内装で地上140mに「巨大庭園ロビー」持つホテル
“ラグジュアリーライフスタイルホテル”の元祖が日本上陸、「東京エディション虎ノ門」開業

山本 恵久 日経クロステック/日経アーキテクチュア
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00110/00206/

『森トラスト・ホテルズ&リゾーツの子会社であるMT&Mホテルマネジメント(東京・港)と、世界展開する米国ホテルチェーン大手のマリオット・インターナショナルは2020年10月20日、東京・虎ノ門に「東京エディション虎ノ門」を開業した。

「東京エディション虎ノ門」31階ロビーの一角を占めるレストラン「The Blue Room」のオフィシャルイメージ。サファイアのブルーから着想を得ている。クリエイティブディレクションを手掛けるシュレーガー氏は、プロモーションまで含めて厳密なコントロールを重視する。館内の写真に関してSNS利用は妨げられていないが、商業メディア上ではプレス向けに用意されたイメージの利用が求められている(以下同)(写真:マリオット・インターナショナル)
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 森トラストが手掛けた大規模複合開発「東京ワールドゲート」内に同年3月、「神谷町トラストタワー」が完成している。その上層階の主に31階から36階に同ホテルが入る。

東京メトロ日比谷線神谷町駅に直結する、高さ約180mの「神谷町トラストタワー」上層階に入る(写真:森トラスト)
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神谷町トラストタワーのフロア構成(資料:森トラスト)
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 「エディション」は、米国ニューヨークを拠点とする独立系プロデューサーのイアン・シュレーガー氏とマリオットが立ち上げたホテルブランド。個々人の利用場面に柔軟に対応するライフスタイル型の性格を持ち、かつ多様な層を対象とする現代的な「ラグジュアリー」を志向する。1号店は米国ニューヨークに15年に開業している。

 既に世界9都市で展開し、日本出店は初。同ブランド11番目のホテルとなる。20年10月27日にシュレーガー氏がオンラインで記者会見に応じた。

多様な使い方を受け入れる巨大ロビー
 客室数は、プライベートテラス付きの15室を含む206室。2つのレストランと2つのバー(一部は2021年開業)の他、スパ、ジム、プール、会議室などから成る。

 内装デザインは隈研吾建築都市設計事務所とシュレーガー氏の率いるISCデザインスタジオが担当した。

 シュレーガー氏は1980年代から、地域の個性に寄り添うデザイン重視のホテルを展開。共用空間を街に開く手法は、新たな社交の場を生む「ロビーソーシャライジング」と称された。その考え方は、東京エディション虎ノ門の31階を陣取る巨大なロビー空間にも引き継がれた。

31階「Lobby Bar」のオフィシャルイメージ。ロビー階は、スラット(羽板)型の天井を組んで「二重構造」の空間としている(写真:マリオット・インターナショナル)
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 シュレーガー氏はこう語る。「私たちはみんな、他人と関わるのが大好きな人間という生き物だ。個性の異なる多様な人間が集まり、精神的なつながりを感じる。ソーシャルアニマル(社会的な動物)が1つになる場所をつくった」

 使い方は規定しない。「ソーシャルな交流はもちろん、仕事やミーティング、読書など、どんなシチュエーションにも対応し、心地よく使ってもらえるようにデザインしている」(シュレーガー 氏)と多様性を強調した。

コミュニティーを包み込む「境内」の役割
 同ホテルの全体コンセプトは「イースト・ミーツ・ウエスト(東と西の交差点)」。日本文化の中にあるシンプルさや優雅さ、その洗練の度合いに関心があったというシュレーガー氏は特に今回、「仏教のカルチャーに影響された」と語っている。

 地上140mの31階に設けたロビー空間は、「仏寺」をインスピレーション源としたものだ。さまざまな目的を持って集まるコミュニティーを受け入れる、境内のような役割を与えた。複数の建造物が配置される境内の空間構成も意識している。さらに都心最大級の高層階型の「庭園」と位置付け、25種類500以上の植物、木、低木をフロアやテラスに配した。

31階、74席の高層階屋外テラスダイニング&バー「Garden Terrace」のオフィシャルイメージ。植物、木、低木を館内に配するために、140tに及ぶ肥沃土を埼玉県から運び込んだ(写真:マリオット・インターナショナル)
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31階、個室を備えるスペシャリティーレストラン「The Jade Room」のオフィシャルイメージ。翡翠(ひすい)のグリーンから着想を得ている。開業は21年の予定(写真:マリオット・インターナショナル)
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 シュレーガー氏が何度も口にしたのは「多様性(ダイバーシティ)」や、個性を重視する「カスタマイズ」という言葉だ。パートナーであるマリオットのスケールの大きな展開力を借りる。しかし、デザインやサービスの共通化よりも、ゲストのパーソナリティーに合わせた独自性の発揮を志向する。

 「常に、その土地の持つスピリットや、その瞬間のエネルギーをつかまえて空間をつくってきた。ロケーションが変われば全てが変わるし、時代も関係する。虎ノ門では、ホテル内で過ごすだけでも東京の醍醐味であるダイナミックなエネルギーを感じられるような環境を目指した」とシュレーガー氏は語る。

国際的ブランドのホテルを日本人建築家に託す
 会見に出席した森トラストの伊達美和子社長は、シュレーガー氏の名声を高めたニューヨークの「モーガンズ・ホテル」(1984年開業)を訪れたときのショックを語った。「こんなライフスタイルホテルがあり得るのかと感じた。イアンさんがマリオットとブランドを立ち上げたと知り、絶対に依頼したいと考えて16年にお会いしたのがスタートだった」

 コラボレーションを始めた頃は「イアンさんと隈さん、お互いに主張する面と遠慮する面があるのを感じた」と伊達社長は振り返る。3年間にわたる協働の中で、それが次第に融合されていく様子に立ち会った。最終的には「隈さんのテイストをイアンさんが温かく包み込み、エディションのスタイルに仕上げ切った。ロビーはいちばん難しい空間だったが、そこに見事に結実している。開発者としてうれしい結果になった」

 伊達社長は、ホテルデザインに日本の建築家を起用するきっかけになったエピソードも披露した。

 「あるとき安藤忠雄さんに、どうして日本の企業は日本の建築家を起用しないのか、中国などアジアをはじめ海外では活躍しているのに、自国でつくる機会が少ないのではないか、と指摘されたことがある。その話が頭に残っていたので今回ぜひ、日本の建築家にインターナショナルブランドのホテルを手掛けてもらいたいと考えた」(伊達社長)

スイートルームのオフィシャルイメージ。各室、高層階からのパノラミックな景観をセールスポイントとする(写真:マリオット・インターナショナル)
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客室の水回り部分のオフィシャルイメージ(写真:マリオット・インターナショナル)
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客室のオフィシャルイメージ。宿泊料金はフレキシブルで1泊1室約6万円以上を想定している(開業時リリース時点)。ベッド上に無造作に置かれたような羽毛寝具をはじめインテリア要素は、その置き方までシュレーガー氏がスタイリングしたもので、チェックインの度に写真を見ながら再現する手続きになっている(写真:マリオット・インターナショナル)
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困難を苦服して必ず「ノーマル」に戻る

 今回、仕上げの段階で新型コロナウイルス感染症拡大の問題が起こったため、クリエイティブディレクターとして関わるシュレーガー氏はオンラインで現場を検分。細部にまでこだわる空間のスタイリングをリモートによって指揮した。

 シュレーガー氏は会見で、コロナ禍に関する質問にも応じた。

 同氏自身は「大げさなパラダイムシフトが起こるとは考えていない」という。「確かにビジネスは大きな影響を受けている。しかし、歴史を振り返ると人間は何度も大きな困難に出合い、それを克服すると元に戻っていった。自分の長い経験から、ニューノーマルが訪れるわけではなく、必ずノーマルに戻っていくのが人間だと信じている」と語った。

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