[FT]中国、リスク承知で挑む「ワクチン外交」

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 ※ なるほど、早々と「感染拡大を、押さえ込んだ…。」ゆえの、フェーズ3(第3相)の被験者確保の難航か…。

 ※ そういう問題も、あるんだな…。痛し痒しだ…。

 ※ 欧米製薬会社は、自国の枠分を確保するので、手一杯のようだ…。

 ※ ロシア製も含めて、第2相あたりの「開発途上のワクチン」でもいいから、回してくれ…、という争奪戦が起こるような気配だな…。

 ※ そうすると、今度は、ワクチンの副反応(副作用)による「障害(これも、「薬害」の一種だ…)」が頻発する可能性がある…。
 
 ※「深刻な事態」に、ならなきゃいいんだが…。

『中国が、自国で開発中の新型コロナウイルスのワクチンをアジア、アフリカ、南米などの国々に優先的に提供する「ワクチン外交」を展開している。他国へのワクチン提供に消極的な米国の隙を突き、各国との関係強化を図る狙いだ。

中国政府は、中国国内における新型コロナウイルスのワクチンの生産能力は、来年には年間10億回分に達する可能性があると推計している=AP

ワクチン外交を主導するのは王毅(ワン・イー)外相だ。マレーシア、タイ、カンボジア、ラオスの東南アジア諸国などに中国製ワクチンを「優先的に」提供すると約束した。

臨床試験の最終段階である「フェーズ3(第3相)」にあるワクチンを4種類有する中国は、世界的なワクチン供給国を目指している。正式な承認に至る直前のフェーズ3では、ワクチンの安全性と効果を確かめるための、大規模で厳密な治験が実施される。

ジョンソン・エンド・ジョンソンやモデルナなど米国の製薬会社が開発中のワクチンも治験の最終段階だが、米政府は海外への提供支援は消極的だ。

「2国間の合意に基づくワクチン提供で、米国は東南アジアにおいては、中国との競争を放棄してしまった」と、英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)のアーロン・コネリー東南アジア担当研究員は言う。

■失敗した「マスク外交」の汚名返上狙う

先週、4日間にわたって東南アジア諸国を歴訪した王外相は、東南アジアにワクチンを配布する準備ができている姿勢を示した。米トランプ政権が「アメリカ・ファースト」政策をとるなか、同地域で優位な立場に立とうする中国政府の戦略の一環だ。

王外相は、インドネシアの政府関係者と会談し、中国製薬企業の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)とインドネシア国営企業のビオファルマが8月に合意した協定を再確認した。協定では、シノバックが、フェーズ3の治験段階にあるワクチン候補「コロナバック(CoronaVac)」を、少なくとも4千万回分、2021年3月までに提供することになっている。11月には供給を開始する予定だ。

インドネシアの新型コロナウイルスの累積感染者数は35万人超で、東南アジアでは最多となっている。

「インドネシアが中国製ワクチンに過度に依存することになれば、同国に対する中国の影響力はかなり大きなものになるだろう。しかし、ワクチンの免疫反応が弱く、インドネシアがさらに待たされるという可能性もある」とコーネル氏。

「マスク外交」で手痛い失敗を喫した中国は、「ワクチン外交」は必ず成功させるという決意で臨んでいる、と米シンクタンク外交問題評議会(CFR)のファン・ヤンツォン氏は語る。

コロナウイルスの感染が世界的に拡大し始めた頃、中国はマスクや防護具などを海外に提供して中国の魅力向上につなげようとした。しかし、欧州数カ国で、中国製のマスクなどの製品が品質水準を満たしていないとして受け取りを拒否され失敗に終わった。しかし、中国は、「世界的なワクチン開発競争では影響力を拡大し、最終的な勝者になる可能性が高い」とファン氏は言う。

中国は、ワクチン外交で世界への影響を広げようとしているという見方を否定する。20日の記者会見で、外交部の趙星氏は、一連の政策はワクチンを発展途上国により迅速に提供するための「連携」だと主張した。さらに、これは「中国が責任ある大国であることを示すものだ」と述べた。

■国内で感染抑え込んだため治験は海外で

中国がワクチンを優先的に提供すると約束したのは、アジア諸国だけではない。中国は、アフリカ大陸全体を含む、ほとんどの発展途上国に対して支援を約束した。南米やカリブ海諸国に対しては、ワクチン購入のために10億ドルの借款を提供するとした。

ブラジルのサンパウロ州は、シノバックから4600万回分のワクチンの早期供給を受ける協定に署名した。シノバックのワクチンはブラジルでフェーズ3の治験段階にある。

さらに中国は、世界保健機関(WHO)などが立ち上げた新型コロナウイルスワクチンの公平供給をめざす国際枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」に参加した。コバックスは21年末までに20億回分のワクチン提供を目指す枠組みだが、トランプ政権は、不参加の意向を示している。

中国が、ワクチン供給のための物流、各国の規制といった難題を乗り越えて、約束を果たせるかどうかについては専門家の間で意見が分かれる。発展途上国にワクチンの提供を申し出ているのは中国だけではない。インドネシアは、英製薬大手のアストラゼネカからも、1億回分の供給を来年受けることで合意している。

しかし、中国は国内での感染拡大をほぼ完全に抑え込んでおり、ワクチンの差し迫った国内需要はない。こうした状況と政府による強力な後押しにより、中国のワクチンメーカーは有利な立場にある、とアナリストたちはみている。

世界的なワクチン競争で勝つ、あるいは目立つほどの地位を確立できれば、政府と民間との間で綿密な調整を図る、中国型の科学開発にとっては金字塔となるだろう。

スタンフォード大学シニア・フェローのカレン・エグルストン氏によると、中国政府はワクチン競争を、ここ数年の間に起こった一連の不正ワクチン事件で大きく傷ついた業界への信頼を回復する「歴史的瞬間」だと捉えている。さらに、「経済的、技術的専門知識を、公共の利益のために活用する」絶好の機会だとみている。

中国政府は、中国国内における新型コロナウイルスのワクチンの生産能力は、来年には年間10億回分に達する可能性があると推計している。

中国でフェーズ3の治験段階にある3種のワクチンは、シノバックの製品以外に国有医薬会社、中国医薬集団(シノファーム)が開発中の2種類があるが、いずれも、免疫反応を引き出すために、感染能力を失わせた(不活化した)コロナウイルスを原材料として使用している。第4の候補は、天津を本拠とするワクチン会社、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)が人民解放軍の軍事科学院軍事医学研究院の研究チームと協力して開発している生ワクチンで、毒性を弱めて病原性をなくした風邪ウイルスを原材料に使用している。

感染が抑え込まれた結果、中国国内でのフェーズ3の治験がほぼ不可能になってしまっている。そのため、中国のワクチンメーカーは海外でパートナーを探さざるを得ない状況だ。

米シンクタンク、ランド研究所のジェニファー・ファン・ブエイ氏は、中国製ワクチンの品質に懸念が生じれば、中国にとっては逆効果になる、と言う。しかし、成功すれば「世界の医薬分野でリーダーだと語れるようになり、自国の医薬品の新たな市場も開拓できるため、中国はリスクを冒す準備はできている」と分析する。

中国の安信証券の推計によれば、中国製のワクチンが低所得および中所得国の市場の15%を押さえただけでも、合計190億元(約2兆円)近い売り上げを生むという。

■バングラデシュでの治験、予算巡り問題に

中国のワクチン会社は、フェーズ3の治験が完了する前に使用を認める「緊急使用プログラム」の下、ワクチンを増産して、何十万人もの国民に供給し始めている。このプログラムによって、中国メーカーは、国内での義務を果たす一方で、生産能力も拡大できる有利なスタートを切ることができた。

中国のこうした試みには課題もある。シノバックが計画していたバングラデシュでのフェーズ3治験は、同国政府が、ワクチン開発のための予算を使う予定はないと言い出したことで宙に浮いてしまった。

バングラデシュの国家研究倫理委員会のメンバーであるサエドゥール・ラーマン氏によると、フェーズ3治験を実施する見返りとして、シノバックは、ワクチン11万回分を無償で提供し、技術の一部を移転すると約束した。しかし、これは、400万ドルの費用をかけて4千人を対象にした治験の対価としては十分でないとラーマン氏は主張する。

「なぜバングラデシュがまだ未確認のワクチンの研究のために資金を注ぎ込まなければならないのか」とラーマン氏は疑問を口にする。

By Christian Shepherd, Stephanie Findlay and Stefania Palma

(2020年10月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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