EU「市民権販売」に制裁も キプロスとマルタに法的措置

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65289530R21C20A0FF1000/

※ 結局、「南北に分断」した…。「北キプロス」は、トルコの支援を背景に「独立」した…。もっとも、「国家として承認している」のは、トルコ1国だけだが…。

※ ここの東地中海では、「巨大ガス田」が発見されたものだから、それを巡っても争っているわけだよ…。

※ まあ、この記事は「ゴールデン・ビザ(パスポート)」なる「EU市民権付きの移民の承認」の話しなんだが…。「かの国」の影も、ちらつく話しだ…。

『【ウィーン=細川倫太郎、バクー=木寺もも子】欧州連合(EU)は、20日、キプロスとマルタに対し、一定規模の投資などの見返りに市民権を付与する制度が、EU市民権の「販売」だとして法的手続きに入ると発表した。対象国には重要な投資獲得手段であり、反発も予想される。

キプロスの政治家による不正供与に対し、抗議する市民(14日、ニコシア)=AP
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中国語や英語などでギリシャの「ゴールデンビザ」を勧める広告(2019年7月、アテネ中心部)
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EUが問題にしている制度は「ゴールデンパスポート」と呼ばれる。自国の不動産や国債への一定額以上の投資などを条件に市民権を与える。事実上、市民権の「販売」とも言え、EU内ではキプロス、マルタ、ブルガリアが発行している。これらの国で市民権を得れば、EU域内の他の国でも仕事や生活ができる。

EUの欧州委員会は20日、キプロスとマルタが投資家を対象にゴールデンパスポートを発行しているのはEUのルールに違反しているとして、法的手続きに入ると発表した。両国に正式な通知書を送り、2カ月以内の回答を求めている。回答が不十分と判断すれば、制裁につながる可能性がある。欧州委はブルガリアにも懸念を示している。

EUが危機感を強めたのは、10月中旬の中東の衛星放送局アルジャズィーラの調査報道がきっかけだ。資金洗浄で有罪判決を受けた中国人実業家に、キプロスの政治家が事実を知りながら市民権を不正に付与しようとしたことが明らかになった。市民からは抗議も起き、同国政府は11月から手続き停止を余儀なくされた。

「欧州市民の価値は売り物ではない」。フォンデアライエン欧州委員長は、投資を対価にEUの市民権を「商品化」すること自体を非難する。市民権を得た人は実際にその国には住まずに、ドイツなどで暮らすケースも少なくなく、犯罪者の流入や汚職のリスクが大きくなっている。

申請者の多くは中国人やロシア人の富裕層で、EU域内での両国の影響力拡大への警戒も高まっている。欧州委は以前から早期に制度を廃止するよう求めてきたが、キプロス市民の反発や注目度の高まりもあり法的手続きに踏み切った。

ただ、キプロスやマルタのような国にとってゴールデンパスポートによる経済効果は大きく、地域の雇用や消費を支えている。競争力のある産業に乏しく、廃止にすんなり応じるかは不透明だ。

これまでに約4000件発行したキプロスは、国内総生産(GDP)の3割に相当する計70億ユーロ(約8700億円)以上の投資がもたらされたとされる。人口約50万人の地中海の島国マルタではここ数年、マンションやオフィスの建設ラッシュに沸く。国外からの投資の影響は大きく、EUの平均を上回る経済成長を続けている。

キプロスでゴールデンパスポート発行を仲介する資産運用会社幹部のスティーブ・ペガ氏は「今回のような制度の悪用は例外的なケースだ。政府は再発防止策を講じた新しい制度で発行を再開するだろう」と期待する。

ゴールデンパスポートと同様に不動産投資などを条件に、その国に限って長期居住権を得られる「ゴールデンビザ」も人気だ。欧州メディアによると、スペインやギリシャは2019年の発行件数が過去最多を記録した。特にギリシャは25万ユーロ以上の不動産購入など条件の緩さが、投資マネーを呼び寄せる要因になっている。

ただ、不動産やサービスの価格が高騰し、地元住民の暮らしを圧迫している弊害も浮上している。ゴールデンビザを発行しているポルトガルでは、20年の4~6月期の不動産価格は前年同期から約8%上昇した。難民の受け入れを絞る一方で、富裕層だけ優遇することへの批判も上がる。

もともと欧州の小国は08~09年の金融危機後の景気回復の切り札として、ゴールデンパスポートやビザに着目した。新型コロナウイルスの感染拡大の未曽有の経済危機にさらされるなか、こうした投資誘致手段への依存度は高まっている。まずは審査の厳格化などで、制度を見直すのが現実的との声もある。』