モーリシャス賠償、経済支援で代替 政府、重油流出で

モーリシャス賠償、経済支援で代替 政府、重油流出で
国際法・ルールと日本
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65046780V11C20A0PP8000/

 ※ モーリシャス貨物船座礁燃料流出事故に対する、日本政府としての対応の、方向性が出たようなんで、紹介しておく…。

『政府はインド洋の島国モーリシャス沖で日本企業の所有する貨物船が座礁し重油が流出した事故を巡り、同国政府を経済支援する検討に入った。無償資金協力や円借款が念頭にある。法的責任のない日本政府が賠償金を支払うわけにはいかず、政策判断として道義的な責任を果たす。

茂木敏充外相は13日の閣議後の記者会見で、月内にモーリシャスへ調査団を派遣する考えを示した。関係国や機関と緊密に連携し、復旧と復興を進めると言明した。茂木氏はかねて「これまでにない規模でモーリシャスに協力していきたい」と強調してきた。

モーリシャス経済は観光業が支える。船主らが支払う賠償額だけでは被害を補いきれない。政府は賠償という形ではなく、途上国への援助として環境被害の原状回復や観光業の回復に力を貸す案を調整する。

海難事故が起きた場合、国際法上は政府に責任はなく、船舶の所有者に賠償責任が生じる。

海上でのタンカーの燃料や貨物の油の流出について定めた国際法に「油汚染損害の民事責任条約」がある。1967年に英国南西部の海上でトリー・キャニオン号が座礁し、大量の油が流れ出た事故を契機に各国間で議論し69年に締結された。

タンカー以外の貨物船の燃料流出などは「バンカー条約」が定める。いずれの条約でも、戦争や内乱などで避けられなかった場合を除き、事故や燃料流出の責任は船舶所有者が負うと定める。

事故を起こした大型ばら積み船「WAKASHIO(わかしお)」の所有者である長鋪汽船(岡山県笠岡市)に責任が帰属する。運航会社の商船三井はチャーターした立場で、賠償責任を負わないとの見方が強い。

モーリシャス政府はすでに長鋪汽船や保険組合に損害賠償を求める方針を発表した。賠償額の上限は「船主責任制限条約」で定める。船の総トン数に応じて算出し、今回はおよそ20億円とみられる。

賠償金だけではモーリシャス経済が受けた打撃を補いきれない。モーリシャス政府がさらなる賠償を求めるとの見方もある。上限に不服な場合は条約の破棄が必要になる。仮に条約を破棄してさらに巨額の賠償を求めれば船主が支払いきれなくなる懸念も残る。

それでも政府が賠償金の肩代わりをしたり、船主などの企業を金銭面で助けたりするのは難しい。

賠償金は「日本政府の法的責任を認めることになる」(外務省幹部)ため、説明がつかない。そこで一般的な援助という形をとりながら日本としての誠意を示す。

事故を起こした貨物船は現地時間の7月25日に座礁し、8月6日に油漏れが発生。漏れた量は1000トン程度になった。サンゴ礁が汚染され、モーリシャス政府は緊急事態宣言を出した。

沿岸のマングローブ林に油が付着し、サンゴ礁も汚染された。サンゴ礁の再生には数十年かかるといわれる。

事故への対処において当初は旧宗主国であるフランスが存在感を示した。油流出後すぐにマクロン大統領が「必要な人員や物資を送る」と表明し、油を吸着する資材や人員を派遣した。日本外務省の担当者は「その後は日本が中心になってきた」と語る。

現地では事故後のモーリシャス政府の情報開示などの姿勢に不満が高まり、数万人規模のデモが起きた。事態に対応する姿勢を打ち出せば、国際社会での日本政府への信頼を損なわずにすむと判断した。』