安倍前首相「菅氏、ずいぶん前から後継資格者」

安倍前首相「菅氏、ずいぶん前から後継資格者」
安倍前首相インタビュー詳報(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64309070Y0A920C2SHA000/

『安倍晋三前首相は日本経済新聞のインタビューで菅義偉首相に関し、後継候補として「ずいぶん前から有資格者だと思っていた」と明かした。総裁選で敗れた自民党の岸田文雄前政調会長については「『時、利あらず』ということだったのだろう」と述べた。菅政権への期待なども聞いた。

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――体調はその後、いかがでしょうか。

「新しく使い始めた薬が非常に良く効いて、順調に快復している」

――後継に菅首相が就きました。

「私の健康上の理由で急なことになった。後継者はリリーフかつ先発投手という立場になる。安倍政権の官房長官としてすでに政策の中枢にいて、すべてを把握する菅氏にやってもらうのは非常に安心できると思った」

――菅首相が後継候補だと考え始めたのは7、8月の頃でしょうか。

「ずいぶん前、ある程度前から有資格者だと思っていた。あとは菅氏にその意思があるかどうかだった」

「今から思うと(来年9月の総裁任期末まで)あと1年と少しとなって『ポスト安倍』ということが言われ始め、菅氏もそういう選択肢を考えたのかもしれない。(菅氏を支持するという)そういう声が高まれば(総裁選に出馬する)気持ちが出てくるのは当然だ。政治家なら常に思うことだ」

――菅首相を巡っては新元号「令和」を発表したころから知名度が高まりました。

「総裁選で国会議員が1票を入れる場合、議員の心理は世論で反応のある人へと動く。そこが昔と、小選挙区制になった現在で異なる」

――菅首相の出馬の決断は素早いものでした。

「割り切りが良かった。私が辞めると言った段階でアベノミクスを継承すると言った。そういうところが菅氏の強みだ。(安倍氏の出身派閥である)細田派も菅氏でいいじゃないかとなった」

――安倍氏の意中の人は岸田氏ではないかと言われてきました。

「岸田氏は政治家として本当に誠実な人だ。外相としても大きな業績を残した。政治家にありがちな『自分が自分が』というのも全くない。確かに発信力が弱いと指摘する人もいる」

「私が急に辞めるという短期的な政局となり、残念ながら『時、利あらず』ということだったのだろう。ただ総裁選後半のパフォーマンスは良かった」

――菅首相は政権発足当初から具体的な政策を次々に打ち出しています。

「秋田県から出てきて、横浜市という浮動票の多い都市部の小選挙区で勝ち続けてきた人だ。人々が何を考えているのか、気持ちをすくい取るのが非常にうまい」

「携帯電話料金が家計に占める割合が多くなっているとみるや料金の引き下げを求める。出生率を上げなければならないときに、不妊治療の費用が大きな負担になっていると聞くと負担軽減に取り組む。アンテナを高くして、そういう声に応える具体的な政策を打ち出している。テンポは非常に良い」

――菅首相の首脳外交の手腕は未知数だとの見方もあります。

「菅氏は各国首脳と順調に電話協議を進めている。トランプ米大統領との電話も非常に気の合った協議になったと菅氏本人から聞いた」

「官房長官時代に駐日米大使らと頻繁に朝食会などで意見交換し、様々な交渉もしていた。すでに外交の要諦はおさえている。米側からも信頼されている。2019年には訪米してペンス副大統領らにも会った」

「安倍政権において7年8カ月超、一貫して官房長官を務めたという経歴は、ずっと政権の中枢にいたということで相手側には安心感となる。外交でそれは財産だ」

――北朝鮮による日本人拉致問題などは菅政権に残された課題となりました。

「菅氏は官房長官時代に拉致問題担当相も兼任し、日本にとっての問題の重要性や難しさは十分理解している。拉致被害者のご家族の気持ちにも寄り添ってくれていると思う。全く安心して任せられる。菅氏なら間違いない」

――あえて助言するとすれば何でしょうか。

「菅氏は本来、非常に強い改革志向をもっている。改革は政権ができた当初の勢いがあるときが一番進めやすい。今の勢いを生かして、向こう傷を恐れずに思い切ってやってほしい」

――内閣支持率が高いうちに早期の衆院解散を求める声があります。

「解散は首相が下す最も難しい判断だ。たった1人で下す判断であり、これだけは誰にも相談できない。政権の命運がかかる勝負となる。研ぎ澄まされた『政治家・菅義偉』の判断、培ってきた勝負勘で決めてもらえれば良いと思う」』