市場で浮上する「民主党完勝」への期待(NY特急便)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64288650W0A920C2000000/?n_cid=TRPN0017

『25日のダウ工業株30種平均は前日比358ドル高で終えた。週半ばまでの株安が響き、週間では昨年8月以来となる4週連続の下落となった。月初の主力ハイテク株の急落で始まった不安定な相場が続いている。

米国の追加経済対策の遅れが投資家心理の重荷になっているのは間違いない。本来は7月中に成立するはずだったが、財政支出の規模で与野党の格差が大きく、2カ月も遅れている。

24日夕には野党・民主党を率いるペロシ下院議長が2.4兆ドル(252兆円)規模の案を提示したと伝わった。従来の3.5兆ドルから縮小し、与党・共和党に歩み寄る姿勢を見せた。ただ、財政赤字を懸念する共和党は9月上旬に5千億ドルと小規模な経済対策を提案し、否決されたばかりだ。

米投資銀行エバコアISIの政治アナリスト、サラ・ビアンキ氏は「両党の案はかけ離れており、合意の可能性は低い。ペロシ氏は合意に向け努力している姿勢を支持者に見せたいだけだろう」とみる。ゴールドマン・サックスは年内の成立はないとみて、2020年10~12月期の米実質経済成長率の予想を6%から3%に引き下げた。

そうした閉塞感が漂う中、株式市場でにわかに浮上しているのが11月の選挙で民主党が完勝するシナリオへの期待だ。大統領選だけでなく同時に実施する上下両院選でも民主党が過半数を占めれば「2兆ドルを超える追加経済対策に加え、バイデン氏が掲げる財政支出計画も上乗せされる」(ゴールドマン)

バイデン氏は法人税率の引き上げなど4兆ドル規模の増税案を掲げており、市場では「バイデン大統領=株安」というのが大方の認識だった。だが、追加経済対策の遅れが景気を冷やす構図が強まるにつれ、民主党案を評価する声が市場でじわりと広がっている。

米調査会社ムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ氏は「民主党が完勝し、バイデン氏の政策がすべて実行されれば、何も変わらなかった場合に比べ24年10~12月期の実質GDPを8千億ドル強押し上げる」と試算する。4兆ドルの増税の影響を7兆ドル超の支出増で吸収する。支出が増える21年後半~22年前半にかけて成長が加速するという。

ただし上院で民主党が過半数を奪還しても、現実には政策の実行は難しい。少数政党が議事進行を妨害する「フィリバスター」と呼ばれる上院独特の制度が法案の採決を妨げるためだ。ザンディ氏の分析にはこの影響が加味されていない。回避するには5分の3の議席数(60議席)が必要だが、現実的ではない。

ゴールドマンはフィリバスターなどでバイデン氏の財政支出が計画の半分程度に縮小し、増税も提案の半分にとどまるとの前提で試算した。それでも22年のGDPを潜在GDPに比べ2.7ポイント押し上げるという。英経済調査会社オックスフォード・エコノミクスもゴールドマンとほぼ同様の前提で、基本シナリオに比べ21年の経済成長率が2.1ポイント高まると指摘する。

政治情報サイトのリアル・クリア・ポリティクスの集計では上院の議席予想は共和党47、民主党46、互角7となっている。投資家は民主党完勝シナリオの影響を改めて分析しておく必要がありそうだ。

(NQNニューヨーク=松本清一郎)』