テナント1140店純減 モールに迫る空洞化の足音

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64178180U0A920C2H11A00/

※ ちょっと、疲れてきた…。今日は、こんなところで…。

『大型商業施設の「空洞化」懸念が出ている。日本経済新聞は商業施設データを分析するリゾーム(岡山市)の協力を得て、全国約2800カ所の商業施設の1~6月のテナントの出退店データをまとめた。アパレルや外食を中心に、期間中に1140店のテナントが純減。施設の飽和感に加えて、ネット通販に押されるなど競争環境は厳しさを増す。さらに新型コロナウイルスによる集客力の落ち込みが追い打ちをかけた。巨大施設の存在意義が問われている。

■目立つ空きテナント
名古屋港からほど近い立地のイオンモール名古屋みなと(名古屋市)。9月中旬に訪れると、空きテナントがかなり目立つ。電気の消えたガラス張りの空きスペースからは薄暗さも感じた。平日の午前ということもあってか、カフェでくつろぐ顧客もまばらだ。

「8月31日(月)閉店致しました」「8月30日を持ちまして、閉店することになりました」。1階のテナント跡地の壁には、婦人衣料店や雑貨店の退店のお知らせが貼られ、8月だけでも多くのテナントが退去したことがわかる。6月に訪れたときよりも、モール内はさみしい印象を受ける。

【関連記事】
コロナが促す脱・店舗 セシルマクビー撤退
三井不動産7年ぶり安値 「ららぽーと」未来図の憂鬱
流通0強の時代に セブン・イオン、拡大の大義薄れる
近隣に大型商業施設が複数存在する、現在の競争環境は厳しい。名古屋市に住む40歳代の主婦は「昔はよく買い物に行ったが、テナントが減ってしまったため、近くの別のイオンモールに行ってしまう」と話す。

首都圏でも商業施設の空洞化は進む。「改装中の為ご迷惑をお掛けしております」。9月中旬、都心部の商業施設を訪れると、木の板で区切られた入居テナントのない空き区画も目立ち、エスカレーター脇にあるフロア案内図には上から白いシールが貼られている場所も。約3分の1が「改装中」のフロアもあった。

テナントの減少によって来店客数が減り、またテナントが撤退して施設の競争力が落ちるという悪循環。施設間の競争激化に、コロナ禍が追い打ちをかけた。

■初めての純減
この逆境はデータからもみてとれる。リゾームのシステム「SC GATE(ゲート)」を利用して分析したデータによると、1~6月の出店数は7222店で前年同期比10.8%減、退店数は8362店で同4.9%増だった。遡れる16年からの増減数でみても純減は初めてだ。

画像の拡大
20年1~6月の純減の内訳は、「ファッション」と「ファッション雑貨」が計842店と圧倒的に多い。「飲食」が116店、「生活雑貨」が114店と続いた。リゾームの砂川誠治氏は「(出退店のサイクルが早い)ファッション関連は出店数の落ち込みが響いた一方、飲食は退店数が多かった」と分析する。

アパレルではオンワードホールディングスが今年度中に700店規模を閉鎖する計画。ワールドも約360店を閉める。帝国データバンクは新型コロナの影響による倒産が8月末までに約500社、上場企業の業績予想の下方修正は約1000社に上ると分析する。

業績不振に苦しむアパレルや外食の店舗閉鎖が本格化するのは秋以降とみられ、経営破綻などによる淘汰も加速する。

今回調査で対象となった商業施設の全テナント数は約15万店。純減数は全体からみれば1%にすぎない。とはいえ転換点となる可能性は高い。近年は施設数の飽和感が指摘される一方、消費者の購買行動はリアルからネットへと移行している。

流れを加速させたのが新型コロナの直撃だ。密を避けるための外出自粛は大きな痛手。モノの消費はもちろん、スポーツジムや生涯学習などの「コト消費」でも感染リスクが足かせとなる。日本ショッピングセンター協会(東京・文京)がまとめた1~6月の全国の売上高は、前年同期比30.3%減と過去最大の下落幅を記録した。

大規模小売店舗立地法(大店立地法)に基づく大型店新設の届出も、20年4~7月は計126件。同期間の件数は、同法が施行された00年度以降でみると01年度(119件)と並ぶ低水準だ。

ショッピングセンター(SC)そのものも減少に転じた。日本ショッピングセンター協会の調べによると、01年に2603カ所あったSCは18年に3220カ所まで増えたが、19年は3209カ所に減った。

売り上げ減に苦しむ施設が増える可能性がある一方で、新設余地は乏しい。施設側は家賃減免などによるテナントつなぎとめにも苦心しそうだ。水面下では秋以降に向けた賃料交渉での綱引きも始まっているという。

業界に詳しいリテールビジネス研究所(東京・港)の飯嶋薫社長は「歯抜けを防ぐためにテナントに譲歩する動きは広がるだろうが、資本力がなければ生き残れない環境になる」と指摘する。

米国では既に大半のテナントが撤退した「廃虚モール」が急増し、話題を集めていた。大きな要因が「アマゾン・エフェクト」などと呼ばれる、ネットの攻勢だ。ただ、新型コロナにより事態はさらに悪化している。日本の企業にとっても決して対岸の火事ではない。

■イオンは支援継続
コロナ禍はイオンモールにも影響を及ぼしている。2021年2月期の連結最終損益は40億円の赤字となる見通し。赤字転落は02年の上場以来初めて。客足は回復しつつあるがテナントのつなぎとめも一進一退が続く。

11日、国内最大の商業施設「イオンレイクタウン」(埼玉県越谷市)を訪ねると、専門店街が開く午前10時を前に買い物客が並んでいた。3棟合計の総賃貸面積が約18万平方メートルにもなる商業施設だが、シャッターがおりた休業店はほぼない。

イオンモール全体の8月時点のテナント空床率は1%強とみられ、「当初想定よりは軽微」(イオン関係者)。この背景には手厚いテナント支援策がある。テナント企業は「大切なパートナー」(岩村康次社長)。「身を切る」覚悟で支えなければ共倒れになる。

コロナ禍による休業に伴い、3~4月はテナント賃料を減免。イオンモールが9月末に社債「サステナビリティーボンド」を発行し300億円を調達するのも、賃料減免による減収を補う目的があるからだ。密を避けるための戦略も打ち出す。混雑のピーク時を避けて食事をした顧客には電子マネー「ワオン」ポイントをイオンモール側の負担で付与。一部のイオンモールでは飲食店のテークアウトのイベントを支援策の一環で始めた。

■「ららぽ」はネットと連携
郊外型の商業施設「ららぽーと」を手掛ける三井不動産は、広場やマルシェなど子連れも楽しめる場所を拡充する戦略を打ち出し、子育て世代に優しい施設作りに力を入れてきた。コロナ禍を機にさらに推し進めるのがネットとの連携だ。

「ららぽーと」などの店とスマホなどから注文できる通販サイト「&mall(アンドモール)」と連携。ネットの利便性を生かしつつ、体験できる場としてリアルの楽しさを訴求する。今後も新規出店には意欲的だ。

新たな担い手も出始めた。ディスカウント店「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が、JR仙台駅前の旧さくら野百貨店仙台店を複合施設に建て替える計画が進む。

旧さくら野は17年の閉店後、地権者間の調整が難航し建物が3年以上放置されてきた。PPIHは旧さくら野の土地と建物の大部分を取得。ホテルや商業施設など複合施設に再開発する方針だ。

長引くコロナ禍という逆風の中、競争は激しさを増す。密を避ける形でのにぎわいをどう創出するか。廃虚モールへの道を歩まないためにも、テナントと共存共栄するための工夫は欠かせない。

(河野祥平、古川慶一、名古屋支社 細田琢朗、仙台支局 田村匠)

「日経MJ」をお手元のデバイスで!
 ヒット商品の「売れる」理由を徹底リサーチ。売り場戦略から買い手の最新動向まで、独自に取材。「日経MJビューアー」を使えば、全てのデバイスで閲覧できるようになります。最初の1カ月間無料でご利用いただけます。

詳細はこちらから
https://pr.nikkei.com/lp/mj_viewer/?n_cid=MJPRM1AR11』