武器としての図で考える習慣

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『(2020/8/28)
ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。目立った売れ筋は出ていないが、ビジネス書を含む法経書全体でみると、法律の本や実務書、資格取得の教科書などが幅広く売れて、売り上げを下支えしている。そんな中、書店員が注目するのは、ビジネスでは図で考えることが大きな武器になると説く元戦略コンサルタントの一冊だった。

その本は平井孝志『武器としての図で考える習慣』(東洋経済新報社)。著者の平井氏は現在、筑波大大学院ビジネスサイエンス系教授として経営戦略論を教える。ベイン・アンド・カンパニーやローランド・ベルガーで長く戦略コンサルタントとして数々の事業戦略や新規事業開発を手がけてきた、いわばビジネスを考えるプロだ。その著者が「図で考える」メソッドを整理し、紹介したのが本書だ。副題に「『抽象化思考』のレッスン」とある。

パワポではなく紙とペン1本で
「図で考える」と言われると、多くのビジネスパーソンがすぐ思い浮かべるのは、プレゼンテーションソフトのパワーポイントだろう。だが著者は、「パワーポイントには思考の流れを阻害する要因が潜んでいる」という。「画面の上の様々なコマンドボタンと図の往復作業で思考が寸断され、図形やフォントの選択で迷い、思考が途切れがちになります」と指摘する。「図で考える」とは、「手で考える作業であり、自分自身との対話」。「目の前の紙から意識がそれるのはダメで、図と思考をシームレスに、かつ瞬時に切り替えられる利便性があるべき」なのだ。それゆえ必要な道具は、紙1枚とペン1本と言い切る。

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アウトプットで成長を 精神科医が説く仕事術

全体は大きく2部で構成され、前半では「なぜ図を使うと考えが深まるか」を解き明かし、基礎的な図の書き方を紹介する。後半は実践編として図を書く上で役立つ4つの型を提示、思考の切り口に応じた型の使い方などを自らの経験や実際的なビジネス事例に基づいて解説していく。

基礎となるのは概念図
余計な情報がそぎ落とされ問題の本質が現れる。思考が見える化できる。ヌケモレのない全体像がとらえられる。これらが図で考えると考えが深められるポイントだ。基礎となるのは概念図。1枚の紙の上に丸や四角や線を書いていく図で、試行錯誤をしつつ、新たな着想を得たり、問題の構造を見つけたりするために書くものだ。基礎編では、この概念図で図を眺めては思考に戻り、また図に戻って思考を深めるにはどうすればよいか、そのやり方や注意点が語られる。

実践編で示される4つの型は「ピラミッド」「田の字」「矢バネ」「ループ」。それぞれ何を考えるのが得意な型なのかを説明した上で、論理の幅を広げたり深めたりするときの活用法が具体例と共に解き明かされる。図で考えるときの頭の働かせ方がよくわかる書きぶりだ。本書に収められた図は実に135枚。シンプルな図が多いので、参考にしたくなる例図集にもなっている。「思考法の本はいろいろと出ているが、図で考えるという切り口が意外に新鮮に映ったのかもしれない」と、ビジネス書を担当する川原敏治さんは話す。

コロナ後の世界情勢に高い関心
それでは、先週のランキングをみておこう。

(1)コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書 長尾一洋著(KADOKAWA)
(2)「話すのが苦手、でも人に好かれたい」と思ったら読む本 権藤優希著(きずな出版)
(3)お金って不思議。金運はこうして動き出すの ミラクルマネーの法則 尾崎友俐著(幻冬舎)
(4)サクッとわかるビジネス教養 地政学 奥山真司監修(新星出版社)
(5)大前研一世界の潮流2020~21 大前研一著(プレジデント社)
(八重洲ブックセンター本店、2020年8月17~23日)

1位はウィズコロナ時代の営業手法を説いた本。会わずに売れる営業手法を伝授する。2位は、口べたでも、人づきあいが苦手でも円滑なコミュニケーションができるようになる心の持ちようやスキルを解説した本だ。3位には、金運をつかみたい人に、そのための考え方や習慣を説いた女性起業家の本が入った。店頭の実売で上位だったのは4位と5位の本。ビジネス教養書シリーズの一冊で地政学をテーマに世界情勢をイラスト解説した本と、大前研一氏が世界の政治・経済・産業動向のこれからを読み解いた本だ。パンデミックが広がった世界がこれからどうなるのか、そこへの関心は高いようだ。今回紹介した「図で考える」思考法の本は7位だった。

(水柿武志)』