米日用品・食品が「差別」排除 黒人イラストなど改廃

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『米国の大手日用品・食品メーカーが人種差別的と取られかねない商品の改廃に動いている。5月にミネソタ州で黒人男性が白人警官に押さえつけられ死亡したことを機に全米に抗議活動が広がっており、企業も神経質になっている。黒人のイラストを使ったり、「美白」など白いことが美徳と訴えたりする商品が対象だ。100年を超す長寿商品も姿を消すことになった。

ペプシコ傘下の食品子会社クエーカー・オーツ・カンパニーは6月、131年前の1889年からあるパンケーキ粉やシロップのブランド「アーント・ジェマイマ(ジェマイマおばさん)」の廃止を発表した。米国で奴隷制があった頃、白人農園主に仕えた黒人女性の姿をイメージした絵と架空の女性名が原点とされる。何度もイラストを変え、最新のイメージは1989年から使われていた。

人種差別のイメージをひきずった商品として廃止されたジェマイマおばさんブランド=ロイター

クエーカー・オーツは「ジェマイマおばさんのイメージは人種差別的な見方が元になっていることを認識した」と言及した。「われわれは商品ブランドに対して厳重に注意し、消費者の期待に応える必要がある」と発表資料の中で説明した。新しいブランド名やイメージを秋には導入する予定だ。

ほぼ同時期に食品大手マーズもコメ「アンクル・ベンズ(ベンおじさん)」のブランドイメージを見直すと発表した。「パーボイルド米」といわれる一定の加工処理をされ、調理が容易になるコメで、1943年の発売以降、常に売り上げランキングの上位に来るヒット商品だった。黒人の男性がイメージキャラクターとして採用されていた。

奴隷制が米国で公に始まったのは1619年。西アフリカから船で連行された奴隷が現バージニア州の港で競売されたときからだとされる。奴隷制は廃止になったが、人々の心の中の差別は何百年たってもなくならない。文化的、日常生活の中に見過ごされた根深い人種差別コードがようやくあぶり出されたとみることもできる。

黒人以外の「差別」撤廃も目立ってきた。食品スーパーのトレーダー・ジョーズは7月、世界の食品のブランドにそれぞれ付けていた現地風の名前のブランドをやめると発表した。メキシコ系の食品は「トレーダー・ホゼ」、日本の食品は「トレーダー・ジョーさん」、中東系食品は「アラビアン・ジョー」といったブランド名だった。「異文化を異国趣味としてとらえており、人種差別の表れだ」などと抗議が相次いだ。

米国の動きは他地域にも広がる。米日用品大手のコルゲート・パルモリーブは6月、中国で販売する歯磨きブランド「ダーリー」の見直しを決めた。パッケージに黒人男性が歯を見せた笑顔がキャラクターとなっていた。

英蘭ユニリーバも6月、インドで販売するスキンケア商品から「白さ」「ホワイトニング」「色が薄い」というような言葉を除くことを決めた。看板ブランドだった「フェア・アンド・ラブリー(Fair & Lovely)」も「グロー・アンド・ラブリー(Glow & Lovely)」に変えた。フェアスキンは「白い肌」を意味し、差別を助長しかねないとの声があった。

黒人差別や警察の暴力への抗議活動は全米に広がった(カリフォルニア州)=ロイター

米ヘルスケア大手のジョンソン・エンド・ジョンソン傘下のニュートロジーナも、アジアや中東で販売する一部美白ローションの販売をとりやめた。

米のビジネス雑誌「フォーチュン」が集計する上位500社(フォーチュン500)の中で黒人男性を最高経営責任者(CEO)に据えるのは3社しかない。ペプシコはジェマイマおばさんの廃止とともに5年間で4億ドルを黒人コミュニティーに寄付することや黒人採用を増やすと約束した。ハイテク企業ではグーグルなどが、黒人雇用を増やすと約束している。

だが、「人種差別にきくワクチンはない」(米民主党の副大統領候補カマラ・ハリス上院議員)ように、商品開発や販促、ブランド理念に黒人をはじめとする少数人種の視点が正しく反映されるには時間がかかりそうだ。

(ニューヨーク=河内真帆)』