GM、テスラ追撃へ分業 エンジン開発はホンダに託す

GM、テスラ追撃へ分業 エンジン開発はホンダに託す
ホンダ・GM 戦略提携の深層(下)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64091280Z10C20A9EA5000/?n_cid=TRPN0017

『「ホンダと長期の関係を築き、必ず電気自動車(EV)で勝利する」。米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は14日、投資家向けのオンラインイベントで、こう力説した。

GMはこれに先だつ3日、ホンダと戦略提携の覚書を交わしたと発表した。北米市場でガソリン車のエンジンや車台などの基幹部品を共通化する。GMは今後は多くのエンジンをホンダから調達することでガソリン車の開発に見切りを付け、EVへのシフトを加速する。

今回の提携にあたり、ホンダ側から「技術重視で信頼できる」(幹部)と評されたバーラ氏。GM研究所(現ケタリング大学)で電気工学を学び、インターンシップで工場に入ったたたき上げだ。無駄な開発投資を絞る手法が評価され、2014年に世界の自動車大手で初の女性トップに就いた。

バーラ氏は09年のGMの経営破綻の原因にもなった拡大路線の修正に動く。17年に赤字続きの欧州事業から撤退し、16年に達成した「1000万台クラブ」の座を自ら手放した。18年には、北米で15%の人員削減と米国内の4工場の閉鎖を発表。トランプ米大統領の猛反発や、全米自動車労組(UAW)による40日間に及ぶストライキを押し切って、3工場を閉鎖した。

ガソリン車事業の縮小への批判をはねのけてでも育成しようとしているのがEV事業だ。バーラ氏は「将来、全ての製品を電動化する」と宣言した。今年5月にはオハイオ州の郊外で、韓国LG化学と合弁で世界最大規模のバッテリー工場の建設に着手した。

GMはガソリン車の代わりにEV事業の育成を急いでいる(ミシガン州のEV組み立て工場)=ロイター

ただ、そこにはEV世界最大手の米テスラが立ちはだかる。GMの「シボレー・ボルトEV」は19年の米国での販売実績が約1万6000台と、テスラ車の1割にも届かない。当面はガソリン車にも経営資源を割かなければ立ちゆかない。打開策に悩んだGMが目を付けたのがホンダだ。

両社は18年にEVと自動運転分野での提携で立て続けに合意した。この協議のためホンダ側が米ロサンゼルスを訪れたときのこと。倉石誠司副社長がGMのダン・アマン社長(当時)との食事の席で、現在は本田技術研究所社長の三部敏宏氏を指さし、「こいつが一番金を使うんだよ」と冗談めかして語った。するとアマン社長も「うちもコストには悩んでいる」と切り出し、その場が一気に打ち解けた。

GMはホンダのエンジン技術に頼ることを決めた(ミシガン州のGMのエンジン工場)=ロイター

コストに対する問題意識を共有した両社はさらに接近し、実務者レベルでの定期的な会合を開くようになった。今回のガソリン車のエンジン共通化も、この会合のなかでGM側が挙げた案だったという。

関係深化の兆しは戦略提携の発表前にもあった。GMは4月、ホンダとEV分野での提携を発表。GM側が供給する高効率のバッテリーを搭載したホンダ車をGM工場で生産するという、ホンダにとって有利な内容だった。GMがEV分野でホンダに協力する代わりに、エンジンについてはホンダから調達する合意がほぼ形成されつつあった。

GMはホンダの後ろ盾を得て、テスラを追撃する体制を整えた。ホンダから調達したエンジンでガソリン車を効率良く生産し、捻出したキャッシュをうまくEVに注ぎ込めるか。ホンダとの分業の成否は、GMのEV事業の未来を左右する。

花田亮輔、ニューヨーク=中山修志、押切智義が担当しました。』