米大統領権限巡り中国と火花 TikTok配信禁止

米大統領権限巡り中国と火花 TikTok配信禁止
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64092110Z10C20A9EA2000/

『トランプ米政権が、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国における配信を20日に禁じる方針を示した。安全保障を理由に運営体制の見直しを迫ってきたが、協議は停滞し、ネットの安全性を損ねるなど懸念の声も強まる。中国政府が報復ともみられる措置を発表し、強い大統領権限を巡り火花が散っている。

「当社は既にかつてない水準の透明性や説明責任の向上策を約束している」。米商務省が対話アプリ「WeChat(ウィーチャット)」とティックトックの配信禁止を18日に発表すると、運営会社の米ティックトックは声明を出して徒労感をにじませた。

同社によると、第三者による監査や米政府による監視の受け入れ、データの処理手順を記したソースコードの開示などの譲歩案を提示した。米国企業への事業売却を迫るトランプ政権、人工知能(AI)を活用したソフトの輸出を規制した中国の双方に配慮したが、関係者は妥協点を見いだせない状況が続いている。

交渉の停滞は利用者を混乱させ、18日は米アップルや米グーグルのアプリ配信サービスを通じたダウンロードが急増する「駆け込み需要」を生んだ。また、交渉の過程でトランプ大統領の姿勢が二転三転し、「身内優遇」ともとれる動きも表面化している。専門家の間では「民主主義の先進国とは思えない」といった声が上がり、事業環境の悪化への懸念も広がる。

配信禁止の根拠とした国際緊急経済権限法(IEEPA)は、テロなどの有事の際に民間の経済取引を制限できる強大な権限を大統領に与えた法律だ。権力の乱用を抑えるために透明性の確保と一貫性のある説明が欠かせないとの指摘が多いなか、トランプ氏がこうした努力を重ねてきた形跡は乏しい。

トランプ氏は18日の記者会見で、ティックトックの安全保障上の脅威を繰り返し指摘する一方で「素晴らしい会社だ。とても人気がある」と語った。若者らの支持を集めるアプリ利用を禁じれば大統領選を前に有権者の反発も予想される。発言の裏には選挙向けにあらゆるアピールをしておきたいとの気持ちがにじむ。

また「我々が買収を成立させるのだから、価格の大部分を国庫に納めるべきだ」と主張したものの、「法的に許されないことが分かった」と撤回した。大規模な消費者サービスの運営経験が乏しい米オラクルが買収・提携の有力候補に浮上したことも、同社創業者のラリー・エリソン会長とトランプ氏の個人的な関係に関連付ける声が上がっている。

ティックトックは膠着状態の打開に向け、裁判に訴える構えだ。18日の声明で提訴の可能性を示唆し、米メディアによると同日夜に米ワシントンで裁判を起こした。米カリフォルニア州で8月に米政権を訴えており、これに続くものとなる。「自由なインターネット」が損なわれることを懸念する米フェイスブックなどの競業企業に支援を求める考えも示している。

■安全性低下に懸念

米商務省は中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」への制裁で、運営に必要なサーバーを11月12日まで使うことを認めた。同サービスは米国で約1億人の月間利用者を抱えており、米大統領選の前に利用者の反発を抑える狙いがあるもようだ。動画の投稿・閲覧は可能な状態が続く一方、アプリの新規ダウンロードと更新はできなくなる。

この結果、懸念されるのがセキュリティー面での性能低下だ。アプリは外部から攻撃する糸口となる脆弱性が見つかるたびに、対策ソフトを配信して防御してきたが、ティックトックは2カ月近くにわたってこうした対応ができなくなる。

セキュリティー対策会社、スプラウト(東京・中央)の高野聖玄社長は「攻撃者には好機と映り、新たな欠陥を探す動きが出てくるだろう」と指摘する。

国をまたいだデータ活用が滞る可能性もある。商務省はティックトックと対話アプリ「WeChat(ウィーチャット)」による個人データの収集を厳しく批判している。人工知能(AI)の精度向上には大量のデータが不可欠だが、制裁を不安視する海外企業が米国でのAI製品の販売や開発に慎重になる恐れがある。

ただ、個人情報の流出を警戒して事業の全面的な売却を迫ってきたトランプ大統領と、競争力を高めているAIの「禁輸」を武器に揺さぶりをかける中国側の間の溝は深い。米中は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を巡る摩擦も抱える。サーバーの利用期限である11月12日をにらんで関係者が駆け引きを続けるなか、利用者や企業は不安定な状況に耐える必要がある。

(シリコンバレー=奥平和行、ワシントン=鳳山太成)』

中国、外国企業に取引制限 TikTok巡り米報復か
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64090590Z10C20A9EA2000/

『【北京=川手伊織】中国商務省は19日、中国企業に不当に損害を与えたと当局が判断すれば、外国企業に対して中国との取引を制限・禁止できるようにする規則を公布した。米商務省が18日、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などの米国内での新規のダウンロードと更新を禁じた直後だけに、米国への報復との見方もある。

規則は即日施行した。中国当局が「信頼できない企業」と指定した企業などをリスト化し、取引制限や禁止などの罰則を科せられるようにする。「ビジネス以外の目的で中国企業との取引をやめた」「中国の企業や個人に差別的な措置をとり、重大な損害を与えた」といったことが指定の判断条件になる。

中国商務省は2019年5月末に、中国企業との取引を制限する外国企業のリストをつくる方針を表明。今回はそれを規則として公布・施行した形だ。中国商務省は貿易管理の専門家である北京師範大学の廖詩評教授の解説を紹介する形で「特定の国や団体を対象にしたものではない」と同規則を説明した。

リスト掲載の検討対象になった企業には中国企業に対する行動を修正する猶予期間を設ける可能性もある。今回の規則の施行は、対中強硬を強める米国をけん制する狙いが強そうだ。ただ米中対立がさらに激化すれば、中国側が実際にリストに踏み切り、中国企業と取引する日本を含む世界の企業に大きな影響を及ぼす懸念もある。

規則の施行で、中国当局は特定の外国企業が中国に関わる輸出入に従事したり、中国域内で投資したりするのを制限、禁止できるようになる。外国企業の社員らの中国国内での就業許可や居留資格を取り消すこともありそうだ。』