平成に出現した「階級社会」…。

 ※ 別に、平成に「出現した」わけじゃ無いだろう…。昔(むかし)から、あったろう…。

ワーキングプア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%97%E3%82%A2

『ワーキングプア(英:working poor)とは、貧困線以下で労働する人々のこと。「働く貧困層」と解釈される[1]。「ワープア」と省略されることがある。

これまで貧困はよく失業と関連づけられてきたが、しかし雇用に就きつつも貧困という新しい種類が米国・カナダ、さらにイタリア・スペイン・アイルランドなどの先進国で見られると論じられるようになった[2][3]。

日本では国民貧困線が公式設定されていないため、「正社員並み、あるいは正社員としてフルタイムで働いてもギリギリの生活さえ維持が困難、もしくは生活保護の水準にも満たない収入しか得られない就労者の社会層[4]」と解釈される事が多い。ワーキングプアのうち官公庁あるいはそれに準ずる機関に雇用されている者を官製ワーキングプアと呼ぶことがある。』

【年収200万の壁】ワーキングプアとは? 高学歴が貧困する原因/要注意の業界・業種
https://www.kaonavi.jp/dictionary/working-poor/

米大統領権限巡り中国と火花 TikTok配信禁止

米大統領権限巡り中国と火花 TikTok配信禁止
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64092110Z10C20A9EA2000/

『トランプ米政権が、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国における配信を20日に禁じる方針を示した。安全保障を理由に運営体制の見直しを迫ってきたが、協議は停滞し、ネットの安全性を損ねるなど懸念の声も強まる。中国政府が報復ともみられる措置を発表し、強い大統領権限を巡り火花が散っている。

「当社は既にかつてない水準の透明性や説明責任の向上策を約束している」。米商務省が対話アプリ「WeChat(ウィーチャット)」とティックトックの配信禁止を18日に発表すると、運営会社の米ティックトックは声明を出して徒労感をにじませた。

同社によると、第三者による監査や米政府による監視の受け入れ、データの処理手順を記したソースコードの開示などの譲歩案を提示した。米国企業への事業売却を迫るトランプ政権、人工知能(AI)を活用したソフトの輸出を規制した中国の双方に配慮したが、関係者は妥協点を見いだせない状況が続いている。

交渉の停滞は利用者を混乱させ、18日は米アップルや米グーグルのアプリ配信サービスを通じたダウンロードが急増する「駆け込み需要」を生んだ。また、交渉の過程でトランプ大統領の姿勢が二転三転し、「身内優遇」ともとれる動きも表面化している。専門家の間では「民主主義の先進国とは思えない」といった声が上がり、事業環境の悪化への懸念も広がる。

配信禁止の根拠とした国際緊急経済権限法(IEEPA)は、テロなどの有事の際に民間の経済取引を制限できる強大な権限を大統領に与えた法律だ。権力の乱用を抑えるために透明性の確保と一貫性のある説明が欠かせないとの指摘が多いなか、トランプ氏がこうした努力を重ねてきた形跡は乏しい。

トランプ氏は18日の記者会見で、ティックトックの安全保障上の脅威を繰り返し指摘する一方で「素晴らしい会社だ。とても人気がある」と語った。若者らの支持を集めるアプリ利用を禁じれば大統領選を前に有権者の反発も予想される。発言の裏には選挙向けにあらゆるアピールをしておきたいとの気持ちがにじむ。

また「我々が買収を成立させるのだから、価格の大部分を国庫に納めるべきだ」と主張したものの、「法的に許されないことが分かった」と撤回した。大規模な消費者サービスの運営経験が乏しい米オラクルが買収・提携の有力候補に浮上したことも、同社創業者のラリー・エリソン会長とトランプ氏の個人的な関係に関連付ける声が上がっている。

ティックトックは膠着状態の打開に向け、裁判に訴える構えだ。18日の声明で提訴の可能性を示唆し、米メディアによると同日夜に米ワシントンで裁判を起こした。米カリフォルニア州で8月に米政権を訴えており、これに続くものとなる。「自由なインターネット」が損なわれることを懸念する米フェイスブックなどの競業企業に支援を求める考えも示している。

■安全性低下に懸念

米商務省は中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」への制裁で、運営に必要なサーバーを11月12日まで使うことを認めた。同サービスは米国で約1億人の月間利用者を抱えており、米大統領選の前に利用者の反発を抑える狙いがあるもようだ。動画の投稿・閲覧は可能な状態が続く一方、アプリの新規ダウンロードと更新はできなくなる。

この結果、懸念されるのがセキュリティー面での性能低下だ。アプリは外部から攻撃する糸口となる脆弱性が見つかるたびに、対策ソフトを配信して防御してきたが、ティックトックは2カ月近くにわたってこうした対応ができなくなる。

セキュリティー対策会社、スプラウト(東京・中央)の高野聖玄社長は「攻撃者には好機と映り、新たな欠陥を探す動きが出てくるだろう」と指摘する。

国をまたいだデータ活用が滞る可能性もある。商務省はティックトックと対話アプリ「WeChat(ウィーチャット)」による個人データの収集を厳しく批判している。人工知能(AI)の精度向上には大量のデータが不可欠だが、制裁を不安視する海外企業が米国でのAI製品の販売や開発に慎重になる恐れがある。

ただ、個人情報の流出を警戒して事業の全面的な売却を迫ってきたトランプ大統領と、競争力を高めているAIの「禁輸」を武器に揺さぶりをかける中国側の間の溝は深い。米中は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を巡る摩擦も抱える。サーバーの利用期限である11月12日をにらんで関係者が駆け引きを続けるなか、利用者や企業は不安定な状況に耐える必要がある。

(シリコンバレー=奥平和行、ワシントン=鳳山太成)』

中国、外国企業に取引制限 TikTok巡り米報復か
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64090590Z10C20A9EA2000/

『【北京=川手伊織】中国商務省は19日、中国企業に不当に損害を与えたと当局が判断すれば、外国企業に対して中国との取引を制限・禁止できるようにする規則を公布した。米商務省が18日、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などの米国内での新規のダウンロードと更新を禁じた直後だけに、米国への報復との見方もある。

規則は即日施行した。中国当局が「信頼できない企業」と指定した企業などをリスト化し、取引制限や禁止などの罰則を科せられるようにする。「ビジネス以外の目的で中国企業との取引をやめた」「中国の企業や個人に差別的な措置をとり、重大な損害を与えた」といったことが指定の判断条件になる。

中国商務省は2019年5月末に、中国企業との取引を制限する外国企業のリストをつくる方針を表明。今回はそれを規則として公布・施行した形だ。中国商務省は貿易管理の専門家である北京師範大学の廖詩評教授の解説を紹介する形で「特定の国や団体を対象にしたものではない」と同規則を説明した。

リスト掲載の検討対象になった企業には中国企業に対する行動を修正する猶予期間を設ける可能性もある。今回の規則の施行は、対中強硬を強める米国をけん制する狙いが強そうだ。ただ米中対立がさらに激化すれば、中国側が実際にリストに踏み切り、中国企業と取引する日本を含む世界の企業に大きな影響を及ぼす懸念もある。

規則の施行で、中国当局は特定の外国企業が中国に関わる輸出入に従事したり、中国域内で投資したりするのを制限、禁止できるようになる。外国企業の社員らの中国国内での就業許可や居留資格を取り消すこともありそうだ。』

中国、訪台の森氏発言で説明要求

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64095770Z10C20A9000000/

『【北京=共同】中国外務省は19日夜、台湾を訪れた森喜朗元首相が18日の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統との会談で、菅義偉首相の言葉として「機会があれば(蔡氏と)電話で話をしたい」と伝えたことを巡り、日本側に説明を求めたことを明らかにした。

中国外務省によると中国は、菅氏に蔡氏との電話会談への意欲があるとの報道について、日本側に説明を要求。日本側は「報道されているようなことは絶対に起こらない」と説明したという。』

米研究、危うい中国排除 中国は「独立」へ着々

米研究、危うい中国排除 中国は「独立」へ着々
チャートは語る
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO64090150Z10C20A9MM8000?disablepcview=&s=4

『米国が国内の中国人留学生や研究者を一部排除し始めた。研究分野では米中は緊密な連携を続けてきたため相互に依存関係があり、つながりは想像以上に深い。対する中国は、自国中心で研究の体制を築く動きを見せ、米国離れを進めている。米中のデカップリング(分断)は、米国にとって自身の研究力を損なう「もろ刃の剣」となる危うさをはらむ。

「米国より日本の方がよいと思った」。東京大学の博士課程で研究する王宇晨さん(26)は打ち明ける。王さんは2016年に北京大学の物理学院を卒業し、海外への進学を志した。名門の米プリンストン大学大学院にも合格したが、東大の大学院を選んだ。

これまで増加の一途をたどっていた米国に留学する中国人の数は頭打ちだ。米国土安全保障省の調査によると、米国の大学などで学ぶ中国人留学生は、20年1月時点で36万8800人と1年前より約2%減った。17年12月をピークに少しずつ減り始めている。留学生の減少は、米国がビザ発給を遅らせて留学生の排除に動いているのが一因だ。

米国は中国系研究者も遠ざけ始めた。5月、米連邦捜査局(FBI)は中国政府系機関との関係を隠して米政府から研究助成を受けたとして、中国系米国人研究者を逮捕した。米国立衛生研究所(NIH)は同様に70人以上の研究者の助成金の資格取り消しと50人以上を解雇した。

米トランプ政権が発足した時から続くデカップリングと一線を画し、米中の研究現場では蜜月状態が続いていた。国際共著論文では、米中の連携件数が突出。オランダ学術情報大手エルゼビアによると、20年の中国の国際共著論文の38%が米国の研究機関の研究者との連携だ。米国の共著論文の26%も中国との連携で、国別で最も多い。

両国の共同研究は、中国だけにメリットがあるわけではない。米国の研究力や産業競争力の強さも支えている。

米移民税関捜査局(ICE)が7月に出したオンライン受講の留学生へのビザ発給停止の通告に、米ハーバード大や米マサチューセッツ工科大は猛反発、ICEを提訴した。授業料の減収も痛手だが、大きな理由は、最先端の研究分野ほど外国人に頼らざるを得ない大学の事情があった。

全米科学財団(NSF)によると、米大の18年の理工系博士号取得者のうち、留学生は37%に上る。留学生の中で中国人の割合は約4割と最多だ。外国人の博士号取得者は、米国のハイテク産業を担う。文部科学省の科学技術・学術政策研究所のまとめでは、米国のコンピューター関連企業などの博士号取得者の6割は外国人だ。金沢大学の吉永契一郎教授は「米国は中国などの外国人学生から恩恵を受けている」と分析する。

知を貪欲に吸収すべく米国に倣ってきた中国は、すでに米国離れを虎視眈々(たんたん)と狙っているようだ。

圧倒的な共著関係を持つ米中の論文だが、エルゼビアによると中国の相手国に占める米国のシェアは15年の45%をピークに5年連続で減少。20年は38%まで低下した。代わりに欧州やアジア、ロシアなどとの共著が増えている。

中国は、17年(16~18年平均)の科学論文の投稿数で米国を抜き世界1位となり実力を示した。2月には国内研究機関に、「サイエンス」や「ネイチャー」などの欧米科学誌偏重を改め中国国内雑誌への投稿を促す通達を出した。

ハーバード大学で国際研究を統括するマーク・エリオット副学長補佐は「中国などの排除が続くと米国の大学は強さを維持できず、米国産業界の競争力は低下し、痛手を被るだろう」と予言する。(大越優樹、三隅勇気)』

国際緊急経済権限法(INTERNATIONAL EMERGENCY ECONOMIC POWERS ACT、略称: IEEPA)とは

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%B7%8A%E6%80%A5%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%A8%A9%E9%99%90%E6%B3%95

『概要

安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、金融制裁にて、その脅威に対処する。具体的には、攻撃を企む外国の組織もしくは外国人の資産没収(米国の司法権の対象となる資産)、外国為替取引・通貨及び有価証券の輸出入の規制・禁止などである。』

『適用されている人物及び団体[2]
・(1994年-)大量破壊兵器拡散に従事及び支援する人物
・(1995年-)国際的な麻薬運搬に関わる人物
・(1995年-)中東和平プロセスを弱体化させると脅迫するテロリスト
・(2001年-)西バルカンとマケドニアの過激派
・(2001年-)アルカイダへの支援を約束せよと脅迫する人物、及びテロ関連会社
・(2003年-)旧イラクのバース党の元職員
・(2004年-)リベリアのチャールズ・テーラー元大統領の関係者、及び不法にリベリア資産を枯渇させた人物
・(2006年-)コートジボワールにおける紛争を増長させる人物
・(2006年-)コンゴ民主共和国における紛争を増長させる人物
・(2007年-)イラクの安定化努力を暴力を以って脅かす人物
・(2011年-)国外の著しい犯罪組織とその関係者。


・日本では大統領令13581に基づき、2012年2月23日に山口組と組長司忍こと篠田建市、若頭高山清司に適用[3]。2012年9月27日に住吉会と西口茂男総裁、福田晴瞭会長に適用[4][5]。2013年1月23日に稲川会、清田次郎こと辛炳圭会長、内堀和也理事長に適用[6]。2013年12月19日に、山口組総本部長入江禎、筆頭若頭補佐橋本弘文こと カン・ホンムン、若頭補佐正木年男ことパク・ニョンナム、石田章六ことパク・テヨンチュンに適用[7]。2013年7月2日に、工藤会と野村悟総裁、田上文雄会長に適用[8]。2015年4月21日に、弘道会と竹内照明会長に適用。2015年12月9日に、旧後藤組組長の後藤忠正に適用。2016年12月30日に、神戸山口組と山健組、神戸山口組の井上邦雄組長、池田孝志舎弟頭、寺岡修若頭に適用。2018年10月2日に、森尾卯太男山口組本部長ら幹部4人と山口組関連企業2社に適用。
・(2011年-)旧リビアのカダフィ政権の元関係者』

『適用国[9]
・イラン(1979年-、イランアメリカ大使館人質事件とその後の支援行為により)
・シリア(2004年-、テロリズムの支援の為、またその後の人権侵害の為)
・ベラルーシ(2006年-、民主主義的な制度弱体化の為)
・北朝鮮(2008年-、兵器利用可能な核分裂性物質の拡散の危険性の為)
・ジンバブエ(2003年-、民主主義制度を損なった為)
・ロシア(2016年-、ウクライナ クリミア地域へのロシア軍の派遣による等)大統領令13660 大統領令13661 大統領令13662[10]』

『過去の適用国
・ニカラグア(1985年-1990年)
・南アフリカ(1985年-1991年、アパルトヘイトの為)
・リビア(1986年-2004年、テロリズム支援の為)
・ハイチ(1991年-1994年)
・イラク(1990年-2004年、クウェート侵攻)
・クウェート(1990年-1991年、イラク占領期間)
・セルビア・モンテネグロ(1992年-2003年、セルビア人民族主義者グループを後援)
・アンゴラ全面独立民族同盟(1993年-2003年、国連平和維持活動への干渉)
・パナマ(1988年-1990年、マヌエル・ノリエガ軍事クーデター)
・ミャンマー(1997年-2016年、民主主義的活動の抑圧)
・スーダン(1997年-2017年、人権侵害やテロリズム支援の為)
・ロシア(2000年-2012年、兵器利用可能なウランの輸出防止の為)
・リベリア(2001年-2004年)
・シエラレオネ(2001年-2004年、人権侵害の為)』

『米中貿易戦争での使用可能性
2019年米中貿易戦争に関し、ドナルド・トランプアメリカ大統領は中国の対米報復関税に対し、国際緊急経済権限法に基づき、強制的に米企業の中国撤退を求める権限があると言及したが、実際にそれを行使するかどうかは未決定。[11][12]』

米の対中圧力、輸出・投資・調達で 全体像を解説

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64019560Y0A910C2000000/

『華為技術(ファーウェイ)やスマートフォンアプリ「TikTok(ティックトック)」をめぐり、米国が中国への圧力を強めている。中国への輸出、米国への投資、米政府の調達の3方面から法的な規制をかけるとともに、非常事態の際に認められる大統領の強大な権限を活用しており、全体像はつかみにくい。改めて解説する。(渋谷江里子、世瀬周一郎)

(1)中国への輸出 半導体以外も技術規制へ
米国の輸出規制は本来、安全保障上の理由からテロ支援国などへの武器や軍事転用される可能性のある製品・技術の持ち出しを制限するためのものだ。ただ米政府は「安全保障上の懸念」があるとして中国企業に対して幅広く適用。また日本など第三国の企業に対しても「再輸出規制」という形で制限している。

この枠組みの代表的な事例が、2019年5月から実施されているファーウェイに対する措置だ。米政府はファーウェイがイランへの経済制裁に違反したとして、安全保障や外交政策上の懸念がある企業を列挙した「エンティティー・リスト(EL)」に掲載した。

米国はその後も複数の中国の企業や団体をELに追加している。これまでのEL掲載は中東諸国などの企業が多かった。掲載されると米輸出管理規則(EAR)に基づき、米国企業からの幅広い製品の輸出が原則できなくなる。

日本企業にとって影響が大きいのは、米国由来の製品や技術が一定の割合含まれる場合は、掲載企業と取引ができなくなる「再輸出規制」があることだ。

米国に拠点のない日本など第三国企業には本来、米国の主権が及ばないはずだが、規制対象となった取引を停止しない場合、その企業もEAR違反として、米国企業との取引が禁止される可能性がある。罰金や課徴金を課す規定もある。このため「非米国の企業でも順守せざるをえない」(篠崎歩弁護士)。

米国はファーウェイとの取引企業に対して、米国由来の製品や技術が最終製品の価格ベースで25%超含まれた外国産の製品の輸出を実質禁じていたが、今年5月、8月と規制を強化。米国の技術を使って作られた半導体は汎用品でもファーウェイに輸出することが困難になった。規制強化の枠組みは「東西冷戦の際に作られた、最近はほとんど使われない異例の措置」(板橋加奈弁護士)。

EARは根拠法が01年に失効。非常事態に大統領に強い権限を認める国際緊急経済権限法(IEEPA)により効力を維持する例外的状態が続いていた。18年成立の国防権限法2019には、EARの新たな根拠法として輸出管理改革法(ECRA)が盛り込まれた。現時点では大半が未施行だが、輸出規制の相手や対象の製品・技術はさらに広がる見込みだ。

これまでの規制対象の製品や技術は主に「軍事転用可能かどうか」という基準でリスト化されている。ただ最近は技術の進化が加速し、「従来型の方法では規制が間に合わず重要技術が米国外に流出する懸念が生じている」(篠崎弁護士)。

そのため規制の対象を人工知能(AI)やアルゴリズム、データ分析といった「新興技術」と米国が優位性を確保する上で重要な「基盤技術」まで拡大。従来規制されていなかった主に民生用の技術も対象にする見込みだ。中国を念頭に置いた規制だが、対象国は限定していない。

ただこの法律の適用を巡っては産業界からの反発も大きく、具体的な技術の特定も進んでいない。民間から意見を募集している段階だ。

米国由来の技術を使用しているほとんどの企業が対応しなければならなくなるため日本企業への影響は甚大だ。「特に自動運転の開発を進める自動車メーカーなどは影響が大きいだろう」と大手米国法律事務所の弁護士は語る。

(2)米国への投資 政府機関、権限強化進む
中国からの投資を制限するのは、米国の技術や個人情報の流出を防ぐのが狙いだ。手法として代表的なものが米国の政府機関である対米外国投資委員会(CFIUS)による審査だ。ここ数年は中国に関連する投資が審査対象となり、買収を断念せざるをえなくなるケースも増えている。

CFIUSは米政府の複数の省庁でつくる組織で、1975年の発足。大統領令によってつくられたが、複数の法律により段階的に権限が強化され、安全保障上の観点から外国企業による米国企業への出資などを審査・規制するようになった。調査を経て安保上の懸念があると判断した場合、大統領が投資に対する中止命令を下す。

権限は幅広く、買収完了後も審査の対象となる。今回問題となったティックトックの米国事業は、運営元である北京字節跳動科技(バイトダンス)が2017年に米ミュージカリーを買収したのが発端だ。CFIUSは買収完了後の19年に審査を開始し、トランプ大統領が今年8月、審査に基づきティックトックの米事業の売却命令を下した。

何を「安全保障上の懸念」と判断するかは、審査後も明らかにされず「恣意的に運用されることもしばしば」(国際問題に詳しい弁護士)。審査基準も時代によって大きく変わる。「長らく軍事国防関係に限定した消極的な運用がなされていた」(猿見田寛米国弁護士)が、近年は個人情報を持つ産業や人工知能(AI)など新技術を開発する産業にも射程を広げている。

一見、米国と関連がなさそうな投資でも適用対象になることもあり、日本企業も注意が必要だ。18年、LIXILグループがイタリアの建材子会社を中国企業に売却しようとしたが、CFIUSの承認が得られず、最終的には断念することになった。子会社が、米重要機関の外壁工事を手がけていた経緯が影響したとみられている。

判断に従わない場合は「課徴金を含め米政府からのあらゆる制裁が予想される」(西理広弁護士)ため、命令が下されれば、ほぼ従わざるをえない。

投資規制強化に伴い、CFIUSの権限はさらに強まろうとしている。これまで審査対象は米企業への支配権を握るM&A(合併・買収)投資が主だった。国防権限法2019に盛り込まれた外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA、2月から本格運用)では、支配権は握らないものの、重要技術・個人データにアクセスできたり、インフラに関わったりする投資も審査対象にすることになった。軍事施設に近い不動産の取得も審査の対象だ。

CFIUSの審査の届け出は原則任意だったが、一定の条件を満たすものは届け出が義務化した。投資を行う際は注意をする必要があるだろう。

(3)米政府調達 間接取引でも影響
米政府は段階的に政府調達の規制を厳しくしている。2019年8月には華為技術(ファーウェイ)など中国企業5社の製品・サービスの政府調達を禁止。今年8月13日には5社の製品を使う企業が、米政府と取引することも禁じた。米政府と直接取引している企業だけでなく、これらの企業と取引している企業にも影響が及ぶ可能性もある。

規制の根拠となるのは18年に成立した国防権限法2019。米政府の調達に制限を設ける同法889条には取引禁止先として、通信機器のファーウェイ、中興通訊(ZTE)、監視カメラの杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)と特定用途無線の海能達通信(ハイテラ)の5社を明記している。

規制の対象となるのは「システムの主要、または必須の要素、もしくはシステムの一部としての重要技術」として5社製品を使っている場合。官報に7月公表された暫定措置によると「米政府との取引には関係なくても、企業内で使っていた」場合も取引禁止にあてはまるとしている。専門家によると納入企業の社員がファーウェイのスマートフォンを使っている場合も規制対象となる可能性があるという。

ファーウェイの店舗に掲げられたスマートフォンの広告(4日、北京)=共同

米政府と取引がある企業は39万社に上るとされる。米政府との取引企業は毎年、政府に使っていないことを報告しなければならない。自社で保有している文書、公開情報などからシステム上の主要な部分を構成する製品、サービスの提供企業を特定する作業が必要だ。調査が不適切だった場合、調達契約はキャンセルとなり、違約金が発生するとみられる。

米国の規制は発動してから細部を決めていくケースも多い。新たな調達ルールには産業界からは懸念の声が出ており、米政府はこうした声を踏まえて今後詰めていく考えだ。西理広弁護士は「規制の例外をどこまで明確化できるかが焦点だ」と指摘する。

納入企業の米国内の関連会社などをファーウェイ製品の利用禁止の対象にするかも現在検討中だ。猿見田寛米国弁護士は「法律の抜け穴を防ぐためにも今後、対象となることが十分に考えられる」と話す。

この調達ルールは米政府への納入企業に対して、その下請け企業や調達先から中国5社の通信関連機器の供給を受けていないか「合理的な調査」を通じて確認することまで求めている。そのため調達先から5社の製品利用の有無について、表明保証を得ることが実務では広がるとみられる。

米政府と直接取引している日本企業は800社程度にとどまるとされる。ただ直接取引する企業と取引関係がある企業まで含めると、日本への影響は決して小さくはない。

(4)国際緊急経済権限法 「特殊な脅威」大統領に権限
3つの規制と並行して対中制裁で補完的に幅広く用いられているのが国際緊急経済権限法(IEEPA)だ。安保や経済などに対する特殊な脅威が生じた際に、非常事態宣言を出した後、大きな権限を大統領に認めており、様々な大統領令の法的根拠になっている。

特殊な脅威に関しては「定義もなく、恣意的にも解釈されうる」(米国法に詳しい弁護士)。クーデターやテロ行為などに適用されてきたが「国単位に対してかけることが多く、特定の企業に対しての事例はあまりなかった」(同)。今回の適用は異例だ。

対中制裁を巡ってはトランプ大統領が2019年5月に情報・通信技術と関連サービスに対する脅威に関連する国家非常事態を宣言。そして民間の情報サプライチェーンから「敵対者」を排除する大統領令を出した。「敵対者」の定義は明記されず、華為技術(ファーウェイ)などを指すと考えられている。

ティックトックの利用禁止命令もこの大統領令に沿った追加措置とされる。「今後も同様の枠組みにより中国のハイテク企業に対し措置がとられる可能性がある」(猿見田弁護士)という。』

「持久戦」に「大食い禁止」 内に向く中国の事情

「持久戦」に「大食い禁止」 内に向く中国の事情
編集委員 村山宏
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63905560W0A910C2000000/

『近ごろ北京ではやるもの、持久戦、国内大循環、食べ残しと大食いの禁止……。北京に本拠を置く中国メディアを最近にぎわしている言葉の数々だ。いずれも言い出したのは習近平(シー・ジンピン)国家主席で、習氏が使い始めるや、学者や高官が追従して「流行語」となった。一見すると関連のない言い回しが並んでいるようだが、米中対立が終わりを見せないなかで、中国が内向きにならざるをえない事情が言葉の端々から見えてくる。

習近平国家主席が使った言葉がすぐに「流行語」になる=ロイター

中国共産党は7月30日、習氏の主宰で政治局会議を開いて今後の方針を決定した。そこには「我々が直面している多くの問題は中長期のものであり、持久戦の角度から認識しなければならない」という文言があった。持久戦は建国の指導者、毛沢東が1938年に発表した論文「持久戦を論ず」が典拠だ。日中戦争の局面が中国に不利となる状況下で、毛沢東は長期戦を展望し、長く続く防御戦に耐えながら反抗の機会をうかがう戦略を説いた。

■国内完結型の経済目指す

毛沢東好きの習氏は持久戦という用語をこれまでも愛用し、毛沢東の「持久戦を論ず」の書店での売れ行きも好調とされてきた。持久戦という言葉は米中対立の激化とともにさらに使用頻度が上がり、政治局会議を受けて8月には習氏の持久戦の意味を解説する多くの学者の論文がメディアに載った。もっとも、7月の会議で使った持久戦は米国との攻防だけを意味するのではなく、国内完結型経済に向けた長期的な奮闘も指している。

それを裏付ける文言も7月の政治局会議では提示された。「国内大循環を主体とし、国内国際の双循環が相互に促進し合う新たな発展方式を急ぎ形成する」という部分だ。主として国内で回る経済活動を目指し、そこに国外との経済活動を組み合わせる成長モデルを意味するようだ。ここで注目されるキーワードが「国内大循環」であり、略して「内循環」と呼ばれる。習氏は5月後半に開かれた政治協商会議の席で、この内循環を外部に向けて初めて使った。

内循環が登場した当初、「コロナ禍で世界貿易が縮小するなかで内需を成長の柱にするのだろう」という程度に理解された。だが、習氏はその後も内循環という言葉を頻繁に使い、戦略性を帯びた政治用語と受け止められつつある。折しも米国が華為技術(ファーウェイ)への半導体供給を停止するよう各国・地域の企業に求め始めた時期と重なった。中国経済が世界と切り離されても持続できる仕組みを準備せよという号令にも聞こえる。

■曲がり角の「一帯一路」

内循環を自力更生と比較しながら解説するメディアの記事も見受けられる。自力更生は1945年にやはり毛沢東が使い始めた政治スローガンだ。外国に頼らずに自らの力で発展する道を表す。1960年代に中国は米国と敵対し、さらにはソ連とも対立したが、この時期に盛んに用いられた。中国が78年に対外開放政策に転換してからは聞かれなくなった。新たに登場した内循環は自力更生を想起させるが、外部との関係を断つとまでは言っていない。

内循環の重視は中国の世界戦略を修正する意味合いも帯びる。少子高齢化が進行する中国の内需は成熟に向かい、高成長を望めなくなった。指導部は国外進出が持続的な成長には欠かせないと判断し、習氏は就任後まもなく中国からアジア・アフリカへと連なる経済圏構想の「一帯一路」を打ち出した。成長鈍化を補うためにアジア・アフリカ諸国への輸出や投資を増やそうという狙いだった。皮肉にもこの戦略が米国との対立の導火線となった。

レストランのテーブルに置かれた食べ残さないように求める表示(江蘇省揚州市)=AP

米中対立が深まるなかで一帯一路プロジェクトも想定通りにいかなくなった。最近の中国メディアは「世界が百年に一度の局面の大きな変化に臨んでいる」という表現を多用する。これもまた習氏が使った表現だ。世界とつながることで中国経済は大きな利益を享受してきたが、米国をはじめとする主要国が内向き姿勢を強めており、中国も世界情勢の変化に合わせて海外依存を減らす方向に転換を迫られているのかもしれない。

世界経済とのデカップリング(切り離し)への警戒は、習氏が8月11日に明らかにした、食べ物を粗末にするなという重要指示からもうかがえる。メディアでは食べ残しだけでなく大食いも批判された。食糧安全保障への意識を高める狙いだ。中国はオーストラリアと深刻な対立状況に陥り、牛肉などの輸入制限に踏み切っている。穀物の自給はほぼできているが、対立が他国に広がれば海外依存度の高い大豆や水産物などの調達に支障をきたす恐れがある。

中国は1950年代末から60年代初めにかけて似たような経験をしている。革命の輸出につながる強硬な外交政策を譲らずに孤立を深めた。アジア・アフリカの友好国は多かったが、米国やソ連といった主要国との関係は悪化を極めた。中国は自力更生を掲げて大躍進と呼ばれる急進的な社会主義経済政策を実施したものの、逆に農業生産の低下を招いた。自然災害も重なって深刻な食糧不足に見舞われ、少なくとも1600万人が餓死したとされている。

当時と異なり、現在の中国は世界経済と深くリンクし、簡単にデカップリングはできない。中国も孤立回避に向けて欧州などへ外交攻勢を強めるだろう。ただ、中国は国内事情から外交で大幅な妥協に踏み込みにくく、結果として主要国との関係悪化が続くこともあり得ると考えているようだ。それが持久戦や内循環が語られる背景だろう。中国を取り巻く国際環境の変化と同時に、中国が変化にどう対応するかも気になるところだ。

北京のはやり言葉には注意を払いたい。』

菅内閣が「日産救済シフト」、逆境放置すれば破綻も

菅内閣が「日産救済シフト」、逆境放置すれば破綻も
止まらぬ赤字垂れ流し、まさか血税使ってゾンビ企業として延命か
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62182

『菅新政権が誕生した9月16日、菅氏の地元、横浜市に本社を置く日産自動車が米国と欧州で合わせて1兆1000億円の社債発行を決めた。「資金繰りに行き詰まった町工場がサラ金に手を出したようなもの」という見方が出るほど、日産の経営状況は厳しい。公的資金を投入してゾンビ企業にするか、市場のルールに任せて解体するか。「日産問題」への対応で菅新政権の正体が見えてくる。

日産の社債に外国人投資家が群がった理由
 日本の投資家はすでに日産を見限っている。7月に国内で実施した4年ぶりの起債では、5000億円の枠を設定したが、700億円しか調達できなかった。今回はリスクマネーの引き受け手が多い海外で10年債の利回りを4.81%とした。年間約400億円の金利負担が発生する、まさにサラ金から借りるような条件だが、日産にはなりふり構ってはいられない事情がある。

 2021年3月期の連結最終損益は6700億円の赤字になる見込みだ。新型コロナで自動車メーカー全体が苦境に陥ったため、事業環境の悪化が原因に見えるが、そうではない。日産は前期の2020年3月期も6712億円の赤字である。6月末時点で自動車事業の手元資金が1兆2670億円あるとはいえ、このペースで金庫から金が流れていけば破綻は時間の問題だ。

 そんな会社が、いくら海外とはいえ、よく1兆1000億円もの資金を集められるものだと思われるかもしれないが、これにはカラクリがある。海外の投資家は日産の後ろに日本政府の姿を見ているのだ。

 コロナ禍で資金繰りが怪しくなった4~7月、日産は銀行融資などで約9000億円を調達した。この中に日本政策投資銀行から借りた1800億円があるのだが、この融資に1300億円の政府保証が付いていた。返済が滞った際に8割までを政府が公庫から補填するという異例の融資である。

 政投銀は、金融危機や大規模な災害などの影響を受けた企業へ国からの出資金で融資する「危機対応業務」を担う金融機関に指定されており、政府は3月に新型コロナウイルスの感染拡大を同業務の対象にした。政投銀は大企業を中心に7月末までに185件、1兆8827億円の融資を決定したが、大企業向けで政府保証がついたのは日産だけ。日産は「特別」なのだ。

 国が「日産は潰さない」と宣言したに等しい。国が後ろ盾につくのなら、超高利回りの日産の社債は「おいしい」。そこに抜け目のない海外投資家が群がった。』

中国が太平洋のど真ん中に乗り出して建設する人工島

中国が太平洋のど真ん中に乗り出して建設する人工島
「一帯一路」でキリバス篭絡、太平洋に軍事拠点を確保か
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62116

『太平洋のど真ん中に広がる島嶼国キリバス共和国(Republic of Kiribati)は、世界的気候変動の影響で海面水位が上昇しているため、やがては国土を形成する島嶼環礁の大部分が水没する運命にある。

 そこでキリバスでは、島嶼環礁にかさ上げ埋め立て工事を実施して、水位上昇によっては水没しない「人工島状態」にしてしまう動きが具体化しつつある。人工島の建設工事を手掛けるのは、南沙諸島に短期間で8つもの人工島を生み出した、「人工島建設にかけては世界最強」の中国である。

日米が死闘を繰り広げたタラワ
 キリバス共和国は太平洋中部の広大な海域に点在する33の島嶼環礁からなる島嶼国家だ。国土面積は狭小であるが、排他的経済水域は極めて広大であり、その水域の面積は世界第3位である。

赤小円内に点在する島嶼環礁がキリバス共和国(出所:TUBS)
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 首都はタラワ(タラワ環礁)にある。タラワ自身も24の小島から形成されている環礁であり、環礁の最高地点は標高3メートルである。タラワ環礁のバイリキ島がキリバス共和国の政治の中心となっているが、国会はアンボ島にある。タラワ環礁の中で最大面積のボンリキ島には、ボンリキ国際空港が設置されている。経済活動の中心地は、港湾があるベシオ島である。

タラワでは、かつて太平洋戦争中に日本軍と米軍の間で激しい戦闘が行われた。

 1943年11月20日から23日にかけて、日本軍が待ち受けるタラワ(ベシオ島)に、猛将ホーランド・M・スミス少将率いる1万8000名のアメリカ海兵隊(第二海兵師団が中核)が、日米戦初の大規模強襲上陸作戦を敢行した。

 日本軍の守備隊は、ベシオ島に地下陣地を張り巡らせ要塞化してタラワ防衛態勢を固めていた。その陣容は、海軍佐世保第7特別陸戦隊と海軍第3特別本拠地隊を中心とした兵2636名、戦車14両、陣地構築などに動員された設営隊の軍属およそ2200名であった。

 一方、タラワに上陸するアメリカ海兵隊は、アメリカ海軍第5艦隊の護衛空母5隻、旧式戦艦3隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦22隻、輸送揚陸艦18隻、掃海艦2隻で形成された上陸侵攻任務艦隊に乗船していた。

 タラワでは、巧妙に構築された地下要塞に日本側の海軍陸戦隊の精鋭部隊が立てこもっていた。そんなタラワに対する急襲作戦は、米海兵隊に大損害(戦死1009名、戦傷2101名、このほか護衛空母1隻が撃沈され将兵687名が戦死)をもたらした。しかし米軍にとってタラワは、多大な犠牲を払っても手に入れねばならない戦略要地であった。

 日本軍守備隊は頑強に抵抗したものの、島嶼防衛の鉄則(本コラム2014年8月24日「いちど取られたら取り返せない、心しておくべき離島奪還の難しさ」、拙著『シミュレーション日本降伏』PHP研究所)どおりに海洋戦力(艦艇や航空機)の援護を受けられなかったことで壊滅した。日本軍将兵は、負傷して捕虜となった17名以外の2619名が戦死し、軍属のほとんども戦死した。米側の捕虜となったのは129名の朝鮮人労働者だけであった。

タラワで日本軍と戦闘中の海兵隊員(写真:米海兵隊)
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 タラワの激戦から77年経過し、現在はタラワを含むギルバート諸島がキリバス共和国の一部として独立国家を形成している。政治環境は一変したものの、タラワの地理的位置が変動したわけではない。したがって現在でもタラワが太平洋軍事戦略において極めて重要な戦略要地であることには変わりはない。

キリバス政府を支援する中国
 このような戦略拠点に目を付けたのが中国だ。

 1979年にイギリスから独立したキリバス共和国は、比較的近接しているオーストラリア、ニュージーランド、フィジーなどと密接な外交関係を維持していた。それらオセアニア諸国に加えて日本とも緊密な関係を築き、1999年には日本の宇宙開発事業団(NASDA、現在のJAXA)がキリバスのクリスマス環礁に無人宇宙往還機(HOPE-X)着陸施設を含む宇宙センターを建設する協定が締結された(日本の宇宙計画の見直しにより、2003年にこの計画は日本側からキャンセルされている)。

 キリバスと中国との関係は複雑だ。1980年にキリバスは中華人民共和国と国交を樹立したが、2003年に台湾との国交も樹立したため、中国とキリバスの外交関係は絶たれた。しかし、2019年9月20日、多額の中国マネーが流れ込んだと言われるキリバス政府(ターネス・マーマウ政権)は、台湾と断交して中国と国交を回復した。

 現在、マーマウ政権はインフラ整備を中心とした長期開発計画「キリバス20年ビジョン」を進めている。この計画によると、キリバス共和国の島々が水没するのを防止するため、かさ上げ埋め立て作業すなわち人工島建設作業を推進し、同時に産業構造が貧弱なキリバスに国際ハブ港を建設する、という。

もちろん、それらはキリバスだけでは実現できない。そこに乗り込んでいくのが中国である。親中派のマーマウ大統領は2020年1月に北京で習近平国家主席と会談し、「一帯一路」構想への協力を表明した。人工島建設も港湾建設も中国が得意とする分野だ。

パールハーバーに匕首を突きつけることに
 国際ハブ港の建設が予定されているのは、タラワと、キリバス共和国では最も東寄りに位置するクリスマス環礁の2カ所である。

 上記のように、タラワは伝統的に戦略要地であった。また、クリスマス環礁も、ハワイのオアフ島パールハーバーからほぼ真南に2150キロメートルほどに位置しており、米海軍戦略にとっては極めて気になる場所だ。

 タラワとクリスマス環礁に国際ハブ港を誕生させるということは、大型貨物船が使用できる大規模港湾を構築することを意味している。ということは、「大型コンテナ貨物港」という名目を掲げながらも、空母や揚陸艦といった大型軍艦も利用可能な規模の港湾開発を進めることになるものと思われる。

 また、タラワとクリスマス環礁にはそれぞれ2000メートル級滑走路を有する飛行場がある。中国が人工島化作業と連動して、それらの飛行場を、より大型の軍用飛行場に改造することも十二分に考えられる。

 このようにして中国軍が太平洋の中央部のタラワとクリスマス環礁に前進軍事拠点を手に入れると、巨大な軍事施設であるオアフ島の米軍基地はともかく、クェゼリン環礁、ウェーク島、ジョンストン環礁などの米軍前進拠点は補給を断たれる危険が生じる。また、かつて日本軍が計画していたように、オーストラリアやニュージーランドと北米の海上航路帯が寸断される危険性も生じる。

 現段階では、中国がキリバスの島嶼環礁をどのように人工島化してどのような軍事利用を推進するのかは確認されていない。しかし、南沙諸島の人工島建設、海洋軍事基地群設置の経過から推察すると、極めて短時日のうちにキリバスの様相が大きく変貌を遂げることは間違いない。そして、軍事化の進展に先駆けて、キリバス周辺の豊かな漁場には莫大な数の中国漁船団が姿を現すことになるであろう。』