菅氏の人脈、目立つ「構造改革派」 経済優先へ幅広く

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『自民党総裁選で勝利した菅義偉総裁は経済優先を掲げる政権運営に向け幅広い人脈を築く。観光政策や規制改革、金融といった個別分野ごとに構造改革を主張する人物が目立つ。自民党に限らず、公明党や日本維新の会にもつくった連携先が政権運営の強みとなる。

菅氏は若手議員の頃、「政治の師」と仰ぐ故・梶山静六氏から「官僚は説明の天才だからお前なんかすぐにだまされる」と指導を受けたという。梶山氏からは政官財の人脈を引き継いだ。

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官房長官を務めた7年8カ月の間も朝昼夜と各分野の人物と会食をこなした。夜は2軒をはしごすることも珍しくない。

安倍政権下で成果を上げた外国人旅行客(インバウンド)政策は小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長の意見に耳を傾けた。同氏は『新・観光立国論』の著作を持つ。

菅氏は2016年3月、当時20年に2000万人だった目標を4000万人に引き上げた。国際観光旅客税(出国税)を新設するなどして、安倍政権発足時に約100億円だった観光庁予算を約700億円に増やした。

アトキンソン氏は最低賃金の引き上げや中小企業の再編も提唱する。菅氏は5日の日本経済新聞のインタビューで「検討に値する」と述べた。

「大胆な改革」を掲げた規制改革は金丸恭文フューチャー会長兼社長らの意見を参考にする。金丸氏は規制改革推進会議のメンバーとして菅氏を支えた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンライン医療の解禁を訴えた。デジタル関連の政策にも詳しい。

サントリーホールディングスの新浪剛史社長(写真左)と楽天の三木谷浩史会長兼社長

サントリーホールディングスの新浪剛史社長とも意見を交わす。新浪氏は安倍政権で経済財政諮問会議の民間議員を務めた。最低賃金の引き上げを促し、菅氏を後押しした。

産業競争力会議を通じ、楽天の三木谷浩史会長兼社長とも距離を縮めた。楽天は菅氏が利用料の4割下げを提起した携帯電話事業も手掛ける。地銀再編や大阪・神戸を国際金融都市とする構想を巡っては、SBIホールディングスの北尾吉孝社長との連携が目立つ。

総務副大臣の頃に総務相だった竹中平蔵氏とも付き合いが深い。竹中氏は小泉純一郎元首相の経済ブレーンとして構造改革をけん引した。

竹中平蔵氏(写真左)とペンス米副大統領

アベノミクスの継続を公言する半面、リフレ派との付き合いは薄い。安倍晋三首相は米エール大名誉教授の浜田宏一氏や本田悦朗氏を内閣官房参与などに積極的に起用した。

霞が関は故・香川俊介元財務次官や和泉洋人首相補佐官との関係が深かった。15年に香川氏が死去した折に、追悼文を寄せた。

和泉氏は若手議員の頃に出会い、安倍政権で米軍普天間基地の名護市辺野古への移設などの調整を委ねた。前官房副長官補の古谷一之氏と共に官邸主導の原動力となった。古谷氏は公正取引委員会の委員長に就く。携帯や地銀などの政策調整の要所となる。

菅氏は安倍晋三首相が力を入れる外交にほとんど手を出さなかった。海外の人脈は官房長官として培った駐日大使らが中心となる。

駐日米大使だったキャロライン・ケネディ氏と月に1度会談し、友情を育んだ。ケネディ氏は菅氏が19年5月に訪米した際、自宅に菅氏を招いて漢字で「令和」と書いたケーキを用意してもてなした。

訪米時にはペンス副大統領ともホワイトハウスで会談した。ペンス氏は会談後、菅氏が車に乗り込むまで見送る厚遇ぶりを見せた。ハガティ前米大使や次期大使に指名されたワインスタイン氏とも親交がある。

中国は外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)中国共産党政治局員らと会談を重ねる。

自民党内に限らない幅広い与野党のパイプが強みだ。日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)や大阪維新の会の創設者、橋下徹氏と連携してきた。安倍首相と菅、松井、橋下各氏はほぼ毎年、年末に会合を開く。行政改革や憲法改正を巡り一致する点が多く、維新の大阪都構想を後押ししてきた。

公明党は井上義久副代表らと税制改正や選挙などを巡り連携してきた。公明・創価学会側の菅氏への信頼は厚く、菅氏の政権運営を支える。』