日本はアメリカの植民地?安倍政権はどこまで「米国の忠犬」だったか

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『世界屈指のシンクタンクとして知られ、日本を操る「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる米国戦略国際問題研究所(CSIS)。当然ながら総理在職歴代最長となった安倍首相も、彼ら意向を汲んだ政権運営を強いられてきました。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では米国在住で世界的エンジニアの中島聡さんが、安倍政権がどれだけCSISからの要望に応えてきたか、「CSISの立場」から9つの項目について評価しています。

プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

「第三次アーミテージ・ナイ報告」の米国からの要望に安倍政権はどう対応したか
安倍総理が引退を表明し、長期政権がようやく終わりを告げました。森本学園事件に代表される政府の私物化の問題や、アベノミクスの評価に関しては、多くのメディアが既に取り上げているので、私は、「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれるCSISが2012年に「第三次アーミテージ・ナイ報告」に記されている米国からの要望に安倍政権がどう対応したか、という観点から、CSIS視点での評価(私の評価ではありません)をしてみたいと思います。

(1)原子力発電の慎重な再開が日本にとって正しくかつ責任ある第一歩である。原発の再稼動は、温室効果ガスを2020年までに25%削減するという日本の国際公約5を実現する唯一の策であり、円高傾向の最中での燃料費高騰によって、エネルギーに依存している企業の国外流出を防ぐ懸命な方策でもある。福島の教訓をもとに、東京は安全な原子炉の設計や健全な規制を促進する上でリーダー的役割を果たすべきである。

これに関しては、原子力発電の再開は始めたものの、2020年までに温室効果ガスを25%削除するという公約に関しては、完璧に忘れ去られてしまった感があります。しかし、この点に関しては、オバマ政権からトランプ政権に変わって、米国の方針が180度変わったので、結果オーライです。 評価:B

(2)日本は、海賊対処、ペルシャ湾の船舶交通の保護、シーレーンの保護、さらにイランの核開発プログラムのような地域の平和への脅威に対する多国間での努力に、積極的かつ継続的に関与すべきである。

この点に関しては、常に米国に従って来たように見えます。 評価:A

(3)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に加え、経済・エネルギー・安全保障包括的協定(CEESA)など、より野心的かつ包括的な(枠組み)交渉への参加も考慮すべきである。

これもトランプ政権による方向転換で、米国がTPPから脱退してしまったので、日本は梯子を外された格好になりました。しかし、結局は日米間のFTAを結び、畜産業が大幅に自由化されることになりました。 評価:A

(4)日本は、韓国との関係を複雑にしている「歴史問題」を直視すべきである。日本は長期的戦略見通しに基づき、韓国との繋がりについて考察し、不当な政治声明を出さないようにするべきである。また、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた協議を継続し、日米韓3か国の軍事的関与を継続すべきである。

この問題に関しては、双方に問題があるとは言え、関係はかなり悪化してしまいました。 評価:C

(5)日本は、インド、オーストラリア、フィリピンや台湾等の民主主義のパートナーとともに、地域フォーラムへの関与を継続すべきである。

要望自体が曖昧なので、評価は見送ります。

(6)新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と、米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で、均等に配分された、相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時(peacetime)、緊張(tension)、危機(crisis)、戦時(war)といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である。

これがまさに、安倍政権が集団自衛権を許容する法律を野党や世論の反対を押し切って強行採決した理由です。 評価:A

(7)イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を最初に言葉で示した際には、日本は単独で掃海艇を同海峡に派遣すべきである。また、日本は「航行の自由」を確立するため、米国との共同による南シナ海における監視活動にあたるべきである。

まだイランがホルムズ海峡を封鎖するまでには至っていませんが、いざという時に自衛隊を派遣するのに必要な国内法は整っています。 評価:A

(8)日本は、日米2国間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全にかかる、防衛省の法律に基づく能力の向上を図るべきである。

機密保持法案を、これも国民と野党の反対を押し切って強行採決。 評価:A

(9)国連平和維持活動(PKO)へのさらなる参加のため、日本は自国PKO要員が、文民の他、他国のPKO要員、さらに要すれば部隊を防護することができるよう、法的権限の範囲を拡大すべきである。

この件に関しては、南スーダンにPKO要因として派遣された自衛隊員が「戦闘状態」に巻き込まれながらも、その記録を隠蔽した事件が発覚して大問題になりました。米国から見れば、(自衛隊員が他国で戦闘行為をして良いという)法的整備が遅れていたことが原因です。 評価:C

これを見ても分かる通り、安倍政権の政策の骨子は、この「第三次アーミテージ・ナイ報告」をベースに作ったと言っても過言ではないぐらい、この報告書の要望に答える形で作られています(それが、彼らが「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる理由です)。

ちなみに、米国からの要望は、以前は「年次改革要望書」という形で米国からの要望として日本政府に伝えられていましたが(郵便局の民営化は、小泉政権時代にこの要望に従って行われました)、民主党の鳩山政権時代に廃止されてしまったために、現在では、「日本通の要人」から構成されるCSISからの「報告書」という形で、自民党に伝えられているのです。

米国政府から日本政府への要望が、シンクタンクでしかないCSISから自民党に伝えられるという形が、色々な意味でとても不健全だと私は思います。

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