中国、原油など戦略物資備蓄急ぐ 対米・コロナ禍にらむ

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63505900W0A900C2FF8000/

『(2020/9/6 19:00)

【上海=張勇祥】中国が輸入に依存する戦略物資の備蓄を急いでいる。車載電池に使うコバルトや肥料原料のカリウムを積み増すほか、原油輸入量は前年比1割以上も増えた。穀物在庫も高水準で推移する。米中対立や新型コロナウイルスの長期化、気候変動を念頭に、物資不足が政権批判に飛び火するのを防ぐ。

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金融情報会社リフィニティブによると7月、イランから原油タンカー「STREAM」「SNOW」が相次ぎ広東省恵州市の港に到着した。国有資源大手、中国石油化工(シノペック)の専用施設で受け取ったもようだ。中国政府は2010年、恵州市に国営の備蓄基地を整備している。

イランを出発したタンカーは8月に続き、9月も複数が中国に到着する予定だ。イランだけではない。中国税関総署によると20年1~7月の原油輸入量は約3億2千万トンと前年同期を12%、3400万トン強も上回った。

中国は資源輸入にあたって長期契約と並行し、相場の動向に応じたスポット取引も多用する傾向があるとされる。20年春に原油価格が大幅に下落したのを好機ととらえ、備蓄の積み増しに動いているもようだ。

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中国では国家備蓄は機密情報に位置づけられ、公式情報はほとんど出回らない。だが8月に入り「政府系の情報会社である北京安泰科信息が、政府にコバルトの備蓄を2000トン増やすよう提言した」と伝わった。コバルトはリチウムイオン電池などに使われ、電気自動車(EV)の普及に力を入れる中国で消費が増加している。

中国政府は15、16年もそれぞれ2000トンを上回る規模でコバルトを買い入れたとの報道がある。主産地のコンゴ民主共和国(旧ザイール)では新型コロナの影響で出荷が伸び悩んでいるとされ、中国の需要が本格回復に向かう年後半に価格が上昇するとの観測が出ている。

安泰科は提言を出したことを認めたうえで「当局がいつ備蓄増に踏み切るかは分からない」とする。安泰科の動きは非公式なアナウンスであるとの受け止めが多い。

習近平(シー・ジンピン)指導部は食糧安全保障を巡っても対策を打ち出している。1日に施行した化学肥料の備蓄管理についての法令では、カリウムの民間備蓄に補助金支給を盛り込んだ。

窒素やリンに比べ国内資源が不足するカリウムの備蓄を増やすのが狙いだ。世界的な気候変動を視野に、自然災害時に配布する「救災肥」の積み増しも図る。

中国の穀物在庫は大豆を除けば高水準で推移する。米農務省(USDA)によると、19~20年度の小麦の在庫は1億5千万トン強と3年前に比べ3割増加した。コメも1億1千万トンを超え、同2割近く増えた。トウモロコシは3年間で2千万トンほど減ったが、全体としては漸増傾向だ。

それでも習指導部が倹約令などを通じて穀物在庫を警戒する理由は2つある。一つは国内消費が多く、国際的な不作時に十分な量が調達できない可能性があることだ。19年に9000万トン近くを買い入れた大豆の輸入量シェアは6割に達している。経済成長に伴う食生活の高度化も当面は続き、飼料用穀物などの需要は増加する見通しだ。

もう一つは、米国との関係悪化が買い入れに支障を来す懸念を完全には否定できなくなっている点だ。「中短期で需給が逼迫するとは見込みにくいが、習指導部は国際関係に伴うリスクを考慮している」(日本の大手商社)との指摘がある。食糧だけでなく、ドルで決済されるエネルギー資源の調達に制約を受ける可能性も排除できない。

4月には大豆とトウモロコシ、食用油などの備蓄を増やすとの報道も流れた。長江流域で発生した大規模な水害が今後も起きる確率が高まっていることや、新型コロナの海外での収束が見通せないなど不確実性は高まっている。大豆の輸入などを米国との交渉材料にしつつ、国家備蓄を積み増す動きは続きそうだ。』