ドイツ外相、パイプライン計画の見直し示唆 ロシアに圧力

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『【ベルリン=石川潤】ドイツのマース外相は6日の独紙とのインタビューで、ロシアが反体制派リーダーの毒殺未遂疑惑で適切な行動を取らない場合、建設中の独ロのパイプライン計画の見直しもあり得るとの考えを示唆した。計画見直しはドイツにとっても大きな痛手だが、疑惑を否定するロシア側への圧力を強める狙いがある。

ロイター通信によるとザイベルト独政府報道官は7日「メルケル首相は、マース外相と同じ見解だ」と述べた。独政府としてパイプライン計画見直しという選択肢を排除しない方針だ。

独政府は、8月に意識不明の重体となってベルリンの病院に移送されたロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏について、殺傷力の極めて高いノビチョク系の神経剤が使用されたと断定しロシア側に説明を求めている。マース外相は独紙ビルト日曜版とのインタビューで、ロシアが数日以内に実態の解明に動かない場合、関係国と対応を協議する考えを示した。

マース外相はさらに、ロシアから天然ガスを直接ドイツに運ぶパイプライン計画、ノルドストリーム2について「ロシア側が我々に態度の変更を強いるようなことは望まない」と指摘。ロシア側の出方によってはパイプライン計画について方針を変えざるを得ないとの考えをにじませた。

ただ、マース外相は同時に「ノルドストリーム2には欧州12カ国から100以上の企業が参加している」とも述べ、経済面への影響の大きさを強調した。独政府には、今回の問題がパイプライン計画にばかり結びつけられることは適切でないとの見方もある。

ノルドストリーム2はバルト海を通って独ロを結ぶ全長約1200キロのパイプライン計画で、既に大部分の工事が完了している。石炭や原子力に代わる安定したエネルギーを得たいドイツと、ウクライナなどを通さずに欧州にガスを売りたいロシアの思惑が一致して建設が進んできた。

だが、独ロの接近を警戒するウクライナ、ポーランド、バルト3国などは計画に強く反対してきた。米国も「大金をロシアに払っている連中を、我々がロシアから守らなければいけないのは道理に合わない」(トランプ大統領)などと批判。自国のガスを欧州に売り込みたい思惑もあり、制裁をちらつかせて計画の中止を求めていた。

ドイツはこれまでナワリヌイ氏の事件とパイプライン計画を切り離して考える立場を示してきた。ただ、ロシア側が事件への関与を認めないなか、圧力をかけるためにはガス計画を見直すべきだとの意見がドイツ国内でも高まっている。

独連邦議会のレトゲン外交委員長は事件後に「欧州として強い答えが必要だ」とガス計画の中止を提案した。与党キリスト教民主同盟(CDU)の党首候補で保守派のメルツ氏も、工事の一時中止を求めている。

ドイツでは2019年にベルリンでロシア当局の関与が疑われる殺人事件が発生したほか、ロシアによるハッカー攻撃への批判も強い。ロシアが極右などを通じてドイツ社会の分断をあおっているとの見方もあり、強い態度を示すべきだとの世論が高まりつつある。』