ドイツ、中国依存を転換 アジア政策で日本などと連携

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『【ベルリン=石川潤】ドイツ政府がこれまでの中国一辺倒のアジア政策の転換に動き始めた。新たにまとめたインド・太平洋戦略で、日本や韓国など民主主義をはじめとした共通の価値観を持つ国との関係強化を打ち出した。独の方針転換は、中国への依存に対する欧州の警戒感の高まりを映している。

「民主主義と自由主義の価値観を分け合う国々とより深く協力していく」(マース外相)。独政府は2日、初のインド・太平洋外交の指針(ガイドライン)を閣議決定した。大国の覇権を受け入れず、開かれた市場を重視するという文言ににじむのが中国離れだ。アジア政策の「急転回」(南ドイツ新聞)につながる可能性がある。

インド・太平洋で「法の支配」を重視するという方針は、日本やオーストラリア、東南アジア諸国連合(ASEAN)などが掲げる。欧州ではフランスが採用しており、独も追随した。

背景には中国への不信感がある。独は中国を軸にアジア戦略を描き、メルケル首相が毎年のように中国を訪問してきた。中国は独の最大の貿易相手国でインド・太平洋での対外貿易の約50%を占める。

だが、経済成長と共に開かれた市場になるとの期待は裏切られ、中国に進出した独企業は技術の強制移転などにあえぐ。不公正を是正するための欧州連合(EU)と中国の投資協定の協議も難航し、中国依存への懸念が高まった。

そんな中、香港国家安全維持法の施行や新疆ウイグル自治区の「再教育施設」などの人権問題も浮上した。中国との価値観の違いが浮き彫りになる中、独国内では中国に弱腰とされるメルケル政権への批判が高まりつつある。

新たな指針では、中国の広域経済圏構想「一帯一路」について対象国の過剰債務の問題を指摘するなど、中国に手厳しい表現が目立つ。ルールに基づく秩序は「強者の法ではなく、法の強さが決め手でなければならない」とクギを刺した。

欧州全体でも中国との関係は曲がり角を迎えている。EUは2019年に中国を「競合相手」とする新たな対中戦略を協議した。貿易や技術面の警戒を前面にし「陶酔から冷静な対中政策へ」(ドイツ世界地域研究所のパトリック・ケルナー氏)の転換が進む。

独は今回の指針をもとに、仏と協力し欧州全体でのインド・太平洋戦略策定を協議する。欧州全体で動くことで発言力を高め、成長市場で存在感を発揮する狙いがある。

英国や仏は次世代通信網(5G)から華為技術(ファーウェイ)の締め出しに動き始めた。中国の王毅(ワン・イー)外相は9月初めまで仏独など5カ国を訪問して関係の改善を探ったが、人権問題への批判が噴出し、かえって隙間風が目立つ結果となった。

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成長が続く中国が独や欧州にとって重要なパートナーという事実は変わらない。しかし、両者の間に価値観の違いが埋めがたく横たわるなか、従来の蜜月は終わりに向かおうとしている。』