Q.直径5mのトンネル2本、幅8mの川の下にどう収めた?

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00647/090200013/

『土木分野の知っておきたい知識をクイズ形式で紹介する「ドボクイズ」。
日経 xTECHや日経コンストラクションに掲載した記事などを基に出題します。あなたは土木にどれくらい精通しているでしょうか。

 東京都品川区を流れる幅8mの立会(たちあい)川。川の真下に外径5.85mのシールド機2台を使って、雨水放流管のトンネルを建設する工事が進んでいます。

立会川の下流側から上流側を見る。雨水放流管のシールド機は、川の真下を手前から奥に向かって掘り進む(写真:大村 拓也)
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2つの坑口が横に並んだ発進たて坑(写真:大村 拓也)
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 雨水放流管は立会川の下流から上流に向かって掘進します。その際、解決すべき課題が2つありました。

 1つは発進たて坑における高さ方向の制約です。発進たて坑のそばに既設の護岸杭があり、シールド機はその下を通過しなければなりません。一方、発進たて坑には下流側から既設の放流管が接続しており、新設する放流管の管底をたて坑の位置で既設管よりも高くしなければなりません。これらの条件下で要求される流下能力を確保するためには、内径5mのトンネルを2本、横に並べてたて坑から掘進する必要がありました。

 ところが、もう1つの課題が立ち塞がりました。横幅方向の制約です。雨水放流管の大部分は立会川の直下に築かなければなりませんが、シールド機の発進後、ほどなくして川幅は8mに狭まります。

 発注者や施工者は、どのような方法で課題を解決したでしょうか。

  1. 川幅が狭まる手前に中間たて坑を設け、中間たて坑から上流側は外径8mのシールド機1台で掘進した
  2. 川の両岸の地権者に補償金を支払い、川幅からはみ出してトンネルを掘進した
  3. 横2連で発進したシールド機が途中で回転し、縦2連になって掘進した

正解はこちら

  1. 横2連で発進したシールド機が途中で回転し、縦2連になって掘進した  立会川の雨水放流管は東京都が発注し、清水建設が施工しています。  周辺の市街地に整備されているのは合流式下水道。大雨が降ると、下水道で流しきれなくなった汚水混じりの雨水が立会川に放流され、川の水質悪化や悪臭を招いていました。立会川に放流していた雨水を地下の雨水放流管に取り込んで海に近い運河に直接、放流することで、立会川の水質改善や流域の浸水被害の軽減につなげます。

H&V工法によるスパイラル掘進のイメージ。直線で掘進する左シールド機に対して、右シールド機はらせん状に掘進する(資料:清水建設)
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 工事で採用したのは、横2連に連結した中折れ式シールド機で2本のトンネルを同時に掘る「H&V工法」でした。2台の外径は共に5.85mで、離隔はわずか9cm。超近接状態を保ったまま横2連の状態で発進したシールド機は、既設の護岸杭の下を通過した後、右シールド機は左シールド機が掘進するトンネルの外周に沿って反時計回りのらせんを描くように掘進し、上側に移動。137mを進む間に横2連から縦2連へと変化します。

2本のトンネルは下流側から上流側に向かって掘進。わずか137mを掘る間に、横2連から縦2連へと変化した(資料:清水建設)
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 2台の単独シールド機を使って、2本のトンネルを別々に掘進する案もありました。しかし、地盤改良しなければならない範囲が広くなることや、シールド機を発進する工程が2段階に分かれることなどで、工費や工期が不利になる恐れがありました。

 1990年に開発したH&V工法の施工は、実証実験を含め今回が7例目。シールド機を横2連や縦2連のまま掘進したり、途中で分岐させたりしたケースはあるものの、実際の工事で横2連から縦2連に変化させる「スパイラル掘進」を成し遂げたのは、今回が初めてです。

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2台のシールド機同士をピン接合に
 「この工事のスパイラル区間は短くて急。従来のH&V工法のように接合部を剛結して右シールド機を中折れ装置だけでスパイラル掘進しようとすると、300mm以上の余掘りが必要になる」。清水建設の太田博啓所長はこのように話します。

 そこでスパイラル掘進に向けて、清水建設は2台のシールド機の接合部にピン構造を採用しました。

シールド機の平面図
(資料:清水建設)
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従来のH&Vシールド機
(資料:清水建設)
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スパイラル掘進用シールド機
(資料:清水建設)
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 左右機の後胴を剛結した状態では、右機前胴の掘進方向に対して、右機後胴が斜めを向いたまま引きずられるようになるので、大きな余掘りが生じます。ピン接合にすれば、左機の向きに関係なく右機の前胴に後胴が追随でき、余掘りは10mm程度に抑えられます。ただし、左右のシールド機で推進力が異なると、接合部に大きな負荷がかかるため慎重な掘進管理が必要でした。

右機内部から見たシールド機同士の接合部。セグメントで左半分が隠れている(写真:大村 拓也)
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接合部の挙動を常に監視
 太田所長は「接合部をピン構造にすると、シールド機の外殻に穴を開けることになる。そこを補強したうえで、掘進中は接合部に設けたレーザー距離計や変位センサー、ピンを固定するボルトにはひずみセンサーを取り付けて、挙動を監視した」と語ります。

H&V工法でスパイラル掘進したシールドトンネルの坑内。工法名のHはHorizontal(水平)、VはVertical(垂直)を意味する(写真:大村 拓也)
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シールド機内部。シールド機のローリングに応じて作業足場が回転する。排泥管も異なる高さに3本ある(写真:大村 拓也)
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雨水放流管は全長約778m。立会川に放流されている雨水を放流管に取り込む(資料:清水建設)
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位置図(資料:日経コンストラクション)
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