ミニバブルの生成と崩壊は繰り返す(NY特急便)

ミニバブルの生成と崩壊は繰り返す(NY特急便)
NQNニューヨーク 張間正義(2020/9/5 5:39 (2020/9/5 7:36更新))
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63492220V00C20A9I00000/

『今週は週後半に株式相場は下落したが、短期調整とみなせば、米国株の上昇が長続きするための良いガス抜きとなる。世界でカネ余りが常態化する環境ではミニバブルの生成と崩壊を繰り返すためだ。

ナスダック総合株価指数は6週ぶりに下落した=AP
画像の拡大

4日の株式市場でナスダック総合株価指数は続落したが、3日に比べ下げ幅は限られた。週間では3%安と6週ぶりに下落した。9月に相場調整が入る兆しはあった。8月の上昇率としては歴史的な大きさだった前月に相場下落を見込んだ逆張りの売りの持ち高が過去最低になったためだ。

ゴールドマン・サックスによると、S&P500種株価指数の時価総額に対する指数構成銘柄の売り残高の比率は8月に1.8%と算出を始めた2004年以降では最低となった。4月以降の想定以上の株高で、踏み上げ相場となり、空売り勢が持ち高解消を迫られた結果だ。

米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和による株高には持続性がないとみていた売り方の「降伏」とも言える現象が起きた。こうした象徴的な出来事は短期的に上がり過ぎた相場の転換シグナルとなりやすい。

オプション市場では先高観に基づくハイテク株のコール(買う権利)への買いが活発化。S&P500指数のPER(株価収益率)は2日に23倍台後半と00年のITバブルのピークに付けた26倍に最接近した。過熱感が強まり、小さな材料に対する脆弱性が高まっていた局面で調整が起きた。

脆弱性を突いた要因の一つが期末需給だ。四半期末に当たる9月は年金基金などの運用資産のリバランス(配分調整)に伴い、7~9月期に大きく値上がりした株式への売りが膨らむ。JPモルガン・チェースのニコラス・パニジジョグロー氏は月末にかけ最大2000億ドル(21兆円)の売りが出ると試算する。こうした機械的な売りが出れば、今週のように特段に材料がないなか、相場は突発的な下落に見舞われる。

相場が実体経済や企業業績から大きく乖離(かいり)すると、自律的に調整が入るのは過去に何度もみられた。もっとも、こうしたミニバブルの生成と崩壊の動きは繰り返し、次の相場の山は前回よりも高くなるのがカネ余り環境下でのパターンだ。6月に発生した相場調整では、主要株価指数はおおむね8月には下落前の水準を回復する「全治2カ月」だった。

カネ余りをお膳立てするFRBは低いインフレ率を前提に雇用回復を最優先する長期の金融緩和に積極的な「構造的ハト派」に転換した。欧州中央銀行(ECB)なども年内の追加緩和の実施が見込まれている。

S&P500指数の益回りから長期金利を差し引いて求めるイールドスプレッドは3.6%と債券との比較では株式の割安感が目立つ。金融環境が現在と異なるがITバブル時ではスプレッドがマイナスに沈み、株に異常な割高感があった。「債券バブルが崩壊しなければ、株バブルも崩壊しない」といった逆説的な解説も市場では聞かれる。

異次元緩和の実体経済への善しあしは後世の学者が判断するが、現実にはカネ余りが常態化する状況では本格的なリスクオフは長続きせず、再び株式に資金が流れる。4日は安全資産とされる金先物相場も続落していた。(NQNニューヨーク=張間正義)』