チェコ上院議長ら訪台 政府は冷ややか 中国外交で揺れる欧州小国

https://www.sankei.com/world/news/200827/wor2008270029-n1.html

『【パリ=三井美奈】チェコのミロシュ・ビストルチル上院議長が率いる同国政経界の約90人が30日、台湾を訪問する。チェコ政府は訪台団を支持せず、距離を置いたまま。東欧で米中の綱引きが激しさを増す中、小国チェコが中国政策をめぐって分裂している。

 訪台団には上院議員のほか、1月に台北と姉妹都市協定を結んだプラハ市長、大学関係者も参加。経済や文化交流のほか、新型コロナウイルス禍を受けた保健衛生協力も課題になる。

 中国は強く反発しているが、訪台団の一人、パベル・フィッシャー上院議員は「香港で国家安全維持法を施行した中国に『民主主義への攻撃は許さない』という姿勢を示す意味もある」と息巻く。フィッシャー氏は上院外交安保委員会の委員長。現在、出発前の感染予防で自宅待機中という。

 8月半ば、チェコを訪問したポンペオ米国務長官は国会演説で、上院の訪台団を激励。1968年、チェコ人がソ連の圧政に抗した「プラハの春」のように、中国共産党の影響力と闘うべきだと訴えた。

 だが、ゼマン大統領は訪台団を批判。バビシュ首相は沈黙し、首相与党の下院議長は「台湾との関係作りはよいが、訪問は不要」と否定的な立場を示す。大統領、首相、上院議長はそれぞれ立場が異なる。

 対中政策をめぐる対立は、ゼマン大統領が主導した中国接近の「失敗」が発端だった。東欧での「一帯一路」ブームに乗って、中国から投資を誘致したが、チェコに進出した中国企業が汚職疑惑の中で撤退。投資の約束は白紙になった。

 今年1月には、訪台を計画していた前上院議長が突然死亡。中国大使が猛烈な抗議圧力をかけていたことが発覚した。中国への反発が広がり、ビストルチル上院議長ら野党側は、大統領の「中国びいき」を批判した。チェコは89年、民主化革命で共産党政権を打破したため、国民には中国による香港や台湾への威圧が、旧ソ連の支配と重なる。

 ビストルチル上院議長は、民主化革命を主導した勢力から派生した中道右派政党に所属。ゼマン大統領は旧共産党系の左派政党で、ライバル関係にある。一方、バビシュ首相は右派新党を率い、双方の間をうかがう。チェコは来年、下院選を控えており、中国政策が争点に浮上している。

 チェコのシンクタンク「国際問題協会」のイバナ・カラスコバ研究員の話 「東欧では、中国の『一帯一路』構想による経済効果への期待が高かったが、現在は温度差が鮮明になってきた。ハンガリーやセルビアはインフラ投資を歓迎し、対中接近を続ける一方、米主導の北大西洋条約機構(NATO)に依存するポーランドやスロバキアは中国と距離を置き始めた。チェコには鴻海(ホンハイ)精密工業など台湾企業が進出し、約2万人以上の雇用を創出している。中国は訪台団派遣に対して、経済報復を警告したが、対チェコ投資は台湾より少なく、大きな打撃はないとみられている」』