[FT]中国 途上国融資の返済猶予へ アンゴラが焦点

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『中国は、新型コロナウイルス禍への対応の一環として債務の再編を求めていた低所得国20カ国について、その半数と合意に達したことを明らかにした。

アンゴラのロウレンソ大統領(左)と握手する中国の習近平国家主席(2018年の中国アフリカ協力フォーラム)=ロイター

中国外務省は「この件に関する取り組みは順調に進んでいる」とし、世界銀行や主要先進国がなおも一連の重債務国の対外債務の大半を占めていると指摘した。

中国政府は、低所得国がコロナ禍による保健・経済危機への対応に専念できるよう、4月に20カ国・地域(G20)の主導で打ち出された債務返済猶予計画の下で協議を進めている。G20の「債務支払い猶予イニシアチブ(DSSI)」は、対象国に2国間貸付の返済を2020年末まで凍結することを認めるものだ。

■アンゴラは中国の対アフリカ融資の最大相手国

中国が債務救済措置に関する多国間の協調行動に加わったのは初めてだ。アナリストや民間投資家は、特にアンゴラとの合意が極めて重要になるとみている。同国は過去20年間の中国による対アフリカ融資の最大の相手国だ。

「(DSSIにおける)アンゴラの重要性はいくら強調しても足りないほどで、途上国のコロナ禍に対する国際援助全般にもつながる話だ」と米調査会社REDDインテリジェンスのシニアアナリスト、マーク・ボーランド氏は指摘する。DSSIの下で「基本的に負担の多くが中国にかかる」という。

アンゴラは中国の対アフリカ融資の約3分の1を占め、DSSIで受けられる恩恵は群を抜いて大きい。世銀によると、20年に期限を迎える約26億ドル(約2740億円)の返済が凍結されることになる。同国の国内総生産(GDP)の3.1%に相当する額だ。モザンビークも同様に、GDPの2%に相当する2億9500万ドルの返済猶予を受けられる。

アンゴラ中央銀行によると、同国の対外政府債務の残高は約490億ドルで、そのうち45%が中国からの借り入れだ。両国の協議がどこまで進んでいるのかは不明だが、合意に達すれば1つのひな型になりうると投資家やアナリストはみている。

「中国は多くの低所得国の大きな債権国になっており、これはとても重要な問題だ」と話すのは大手格付け会社フィッチ・レーティングスの中東・アフリカ地域ソブリン格付け責任者、ジャン・フリードリッヒ氏だ。

■融資条件の多くは非公表

アナリストらは、しばしば条件を非公表とする中国の融資の比重が大きいため、DSSIの交渉の進展状況をつかむのは容易ではないと指摘する。融資の大部分は国有の中国輸出入銀行が行っているが、同じく国有の中国国家開発銀行によるものもあり、これについて中国政府は商業貸し付けに区分しようとしてきた。

「あらゆる投資家が頭を悩ませている問題、それは公的融資の規模がわからないということだ。どれが『正式に公的』で、どれがそうでないのか。どの条件が入り、どの条件が入らないのか。そこがわからない」と話すのは、アンゴラ国債に小規模な投資をしている米モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントで新興国債券担当責任者を務めるエリック・バウアーマイスター氏だ。

英運用大手M&Gインベストメンツの新興国担当ストラテジスト、グレッグ・スミス氏は「中国はケース・バイ・ケースで個別の実情に即して債務の再編に当たろうとする傾向がある」と話す。アンゴラに対する条件は他のDSSI対象国への提示条件を示すものとなるはずで、主要な借入国に対する中国の債務救済の姿勢を物語る長期的な先例となる可能性もあると指摘する。

フィッチのアンゴラ担当主任アナリストのジャーメイン・レナード氏は、協議の結果は、37億ドルの対アンゴラ融資の次期トランシェ(分割融資)を供与するかどうかという国際通貨基金(IMF)の判断にも影響するとみている。IMFは7月に判断を先送りしている。

「大きな問題」は「IMFが(アンゴラの)現在の債務見通しを承認するか、つまり持続可能なものと見なすかどうかだ」とレナード氏は言う。IMFは、返済が困難と見なされる債務を抱えた国への融資は行わない。IMFは8月、アンゴラとの「協議を継続中」としている。

アンゴラ財務省はコメントの要請に応じなかった。

現在、指標となるアンゴラの10年物、30年物ドル建て国債は安定的に推移している。コロナ禍を受けて金融市場全体が下押しされ、市場が回復しきれないなかで、アンゴラ国債は4月に過去最低の安値水準に沈み込んだが、同国政府がDSSIに加わると発表した6月以降、変動ははるかに小さくなっている。

■低所得国向け融資の大部分を猶予との見方も

仏運用大手アムンディ・アセット・マネジメントの新興国債券ポートフォリオマネジャー、エスター・ロー氏は、中国はDSSI対象国の債務返済の大部分を猶予する方針だろうとみる。

「問題の焦点は、中国が融資の回収にどれだけ必死なのか、つまり取り戻さなくてもやっていけるかどうかだが、なくても楽々とやっていけるというのが答えだと思う」と同氏は話す。中国の約3兆ドルの外貨準備と比べてDSSI対象国への融資残高は小さいと指摘する。

モルガンのバウアーマイスター氏は、アンゴラやザンビアなど資源の豊富な国々との関係を維持するために、中国は柔軟な姿勢で臨むだろうと述べる。「彼らは自国の国益を合理的に追求する方法を見いださなければならない」

一方、REDDのボーランド氏は、巨額の融資の再交渉に際して、中国はIMFによる低所得国への緊急支援の拡充のような「見返り」を求めているとの見方だ。「むろん中国は(融資を)帳消しにできる」と同氏は言う。「問題は、あまりにも大きな先例はつくりたくないということだ」

By Camilla Hodgson

(2020年8月30日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)』