100年前と重なる韓国の「内戦状態」

【九州正論懇話会】李相哲氏詳報 100年前と重なる韓国の「内戦状態」
https://www.sankei.com/world/news/200826/wor2008260014-n1.html

『福岡市博多区のホテルオークラ福岡で25日に開かれた九州「正論」懇話会の第145回講演会では、龍谷大の李相哲教授が「どうなる? 朝鮮半島~日本はどう対処するべきか」と題して講演した。北朝鮮の核問題をめぐっては「韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が世界をミスリードした」と指摘。また、文氏による左派政権下で「韓国は内戦状態だ」と分析した。主な内容は次の通り。

■ソウル市長の葬儀めぐり対立

 韓国は今、内戦状態だ。同じ国民が両陣営に分かれて、今のところ暴力行使はないものの、最高レベルでお互いのことを憎んだり、非難したりしている。

 その象徴的な出来事が、セクハラ問題で自殺したソウル市長の葬儀をめぐる対立だ。左派の文大統領を支持する一派は、市長は罪を犯したかもしれないが、市民運動を引っ張ってきた功績があるとして、市が主催して葬儀をやると決めた。しかし、それには10億ウォン以上の金がかかると市民団体が猛烈に反対した。

 同じ時期に朝鮮戦争の英雄、白善●(=火へんに華)(ペク・ソニュブ)将軍が亡くなったが、左派の文氏支持者らは白氏を国立墓地に埋葬してはならないと声を上げた。文氏は軍司令官でもありながら白氏の死に関しては一言も発していない。市民は、ソウル市長の葬儀場の隣に焼香場をつくって白氏の市民葬をやろうとしたが、そこでせめぎあいがあった。

 韓国では今、国会で国立墓地法の改正案が議論されている。国立墓地に埋葬されている朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領や白氏ら親日派69人の墓を掘り出して、どこかに移すという法律だ。

 発想自体が前近代的で、約100年前、李王朝打倒のため政変を起こした開化派の金玉均(キム・オッキュン)が暗殺された状況と似ている。福沢諭吉とも親交が深かった金は、中国・上海で刺客に暗殺され、韓国に渡った遺体はばらばらにされ捨てられた。

 今、韓国は、程度は違うが、100年前の韓国人と同じことをしている。世界が激しく動いている中で、それと関係なく、自分たちは党派の戦いに明け暮れているという状況が重なる。

■文氏が世界をミスリード

 文氏が大統領になってから韓国の雰囲気はガラッと変わってしまった。私はかつて雑誌に、文氏が世界を間違った方向に持っていこうとしているのではないかと書いたことがある。文氏による1番のミスリードは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が核兵器を放棄するのは、確固たる意志だと繰り返し発信したことだ。

金氏が言っていたのは「朝鮮半島の非核化」であり、「北朝鮮の非核化」とは完全に違う話だ。現在、韓国に核兵器は存在しないが、米軍が韓国に駐留している限り、いつでも持ち込める。つまりは、米軍が韓国から出ていけば、自分たちは核を捨てる用意があるという意味だ。

 2018年6月のトランプ米大統領と金氏によるシンガポール会談でも声明文には朝鮮半島の非核化という言葉が使われた。北朝鮮は非核化するつもりはないし、絶対に非核化は実現しないことがはっきりした。これを文氏は知らないはずがないの嘘をついた。これは、彼がついたさまざまな嘘のうち最大のものだ。

■文政権下で韓国はどんどん劣化

 他にも問題はある。肝心なときに姿を見せないということだ。例えば日本でも大騒ぎになった●(=恵の心を日に)国(チョ・グク)法相(当時)や、最近では不正会計疑惑が取り沙汰されている元慰安婦支援団体をめぐる問題など、国民が真っ二つに割れた問題では自分の考えらしいものは言わない。

 卑怯(ひきょう)といえばいいのか、肝心なところでは姿を現さず、逆に新型コロナウイルス対策など政権の成果を自慢するときだけは表に出てくる。コロナ対策も中身を見ると、朴槿恵(パク・クネ)前大統領時代に態勢が整っていたことが背景にある。

 韓国の保守系新聞は社説で最近、文氏のこれまでの政権運営で成功事例は一つもないと論じている。文政権下で韓国はどんどん劣化しており、悲しいことだが文氏には期待しないほうがいいのではないか。

 文氏は、強迫観念があるのか、北朝鮮政策にすべてをかけている。しかし肝心の北朝鮮は6月に開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破するなど文氏を憎んでいる。

 文氏は18年9月の南北首脳会談で、寧辺(ニョンビョン)の核施設を放棄すればトランプ氏は制裁を解除すると金氏を説得、金氏も応じた。しかし、19年2月にベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談は決裂した。それで金氏のリーダーシップは傷つき、文氏にだまされたとして文氏を憎んだ。文政権とは付き合わないと公言したのはそのためだ。

■北朝鮮に残された道は2つ

 一方の北朝鮮も今の体制はそんな長く続かないのではないか。17年から始まった国際社会による本格的な制裁が効き始めていて、経済は壊滅状態だ。

 そこに追い打ちをかけるように新型コロナが発生した。北朝鮮は今、国境を全面封鎖しているので、稼ぎ口がほとんどなくなっている。さらに今年は水害も直撃し、食糧生産基地が壊滅状態だ。

 この三重苦の中、北朝鮮は、軍事態勢によって国民を締め付けている。指示に従わなければ軍法で処罰する。最近の状況は、北朝鮮の70年以上の歴史で最も怖い統治が続いているといわれている。

 北朝鮮は11月の米大統領選をにらんで今後の方向性を決めるつもりかもしれないが、残された道は2つしかない。核を捨てて米国と協力するか、核にしがみついて独自の道を歩むかだ。

 しかし、米国はどのような政権ができても北朝鮮の核保有は認めないだろう。トランプ大統領が再選したら北朝鮮問題に決着をつける可能性が高いとみている。来年ごろには北朝鮮のミサイル能力が米国本土を攻撃できる状況になるからだ。制裁だけでなく、強い「何か」をする可能性は十分考えられる。』