100年前と重なる韓国の「内戦状態」

【九州正論懇話会】李相哲氏詳報 100年前と重なる韓国の「内戦状態」
https://www.sankei.com/world/news/200826/wor2008260014-n1.html

『福岡市博多区のホテルオークラ福岡で25日に開かれた九州「正論」懇話会の第145回講演会では、龍谷大の李相哲教授が「どうなる? 朝鮮半島~日本はどう対処するべきか」と題して講演した。北朝鮮の核問題をめぐっては「韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が世界をミスリードした」と指摘。また、文氏による左派政権下で「韓国は内戦状態だ」と分析した。主な内容は次の通り。

■ソウル市長の葬儀めぐり対立

 韓国は今、内戦状態だ。同じ国民が両陣営に分かれて、今のところ暴力行使はないものの、最高レベルでお互いのことを憎んだり、非難したりしている。

 その象徴的な出来事が、セクハラ問題で自殺したソウル市長の葬儀をめぐる対立だ。左派の文大統領を支持する一派は、市長は罪を犯したかもしれないが、市民運動を引っ張ってきた功績があるとして、市が主催して葬儀をやると決めた。しかし、それには10億ウォン以上の金がかかると市民団体が猛烈に反対した。

 同じ時期に朝鮮戦争の英雄、白善●(=火へんに華)(ペク・ソニュブ)将軍が亡くなったが、左派の文氏支持者らは白氏を国立墓地に埋葬してはならないと声を上げた。文氏は軍司令官でもありながら白氏の死に関しては一言も発していない。市民は、ソウル市長の葬儀場の隣に焼香場をつくって白氏の市民葬をやろうとしたが、そこでせめぎあいがあった。

 韓国では今、国会で国立墓地法の改正案が議論されている。国立墓地に埋葬されている朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領や白氏ら親日派69人の墓を掘り出して、どこかに移すという法律だ。

 発想自体が前近代的で、約100年前、李王朝打倒のため政変を起こした開化派の金玉均(キム・オッキュン)が暗殺された状況と似ている。福沢諭吉とも親交が深かった金は、中国・上海で刺客に暗殺され、韓国に渡った遺体はばらばらにされ捨てられた。

 今、韓国は、程度は違うが、100年前の韓国人と同じことをしている。世界が激しく動いている中で、それと関係なく、自分たちは党派の戦いに明け暮れているという状況が重なる。

■文氏が世界をミスリード

 文氏が大統領になってから韓国の雰囲気はガラッと変わってしまった。私はかつて雑誌に、文氏が世界を間違った方向に持っていこうとしているのではないかと書いたことがある。文氏による1番のミスリードは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が核兵器を放棄するのは、確固たる意志だと繰り返し発信したことだ。

金氏が言っていたのは「朝鮮半島の非核化」であり、「北朝鮮の非核化」とは完全に違う話だ。現在、韓国に核兵器は存在しないが、米軍が韓国に駐留している限り、いつでも持ち込める。つまりは、米軍が韓国から出ていけば、自分たちは核を捨てる用意があるという意味だ。

 2018年6月のトランプ米大統領と金氏によるシンガポール会談でも声明文には朝鮮半島の非核化という言葉が使われた。北朝鮮は非核化するつもりはないし、絶対に非核化は実現しないことがはっきりした。これを文氏は知らないはずがないの嘘をついた。これは、彼がついたさまざまな嘘のうち最大のものだ。

■文政権下で韓国はどんどん劣化

 他にも問題はある。肝心なときに姿を見せないということだ。例えば日本でも大騒ぎになった●(=恵の心を日に)国(チョ・グク)法相(当時)や、最近では不正会計疑惑が取り沙汰されている元慰安婦支援団体をめぐる問題など、国民が真っ二つに割れた問題では自分の考えらしいものは言わない。

 卑怯(ひきょう)といえばいいのか、肝心なところでは姿を現さず、逆に新型コロナウイルス対策など政権の成果を自慢するときだけは表に出てくる。コロナ対策も中身を見ると、朴槿恵(パク・クネ)前大統領時代に態勢が整っていたことが背景にある。

 韓国の保守系新聞は社説で最近、文氏のこれまでの政権運営で成功事例は一つもないと論じている。文政権下で韓国はどんどん劣化しており、悲しいことだが文氏には期待しないほうがいいのではないか。

 文氏は、強迫観念があるのか、北朝鮮政策にすべてをかけている。しかし肝心の北朝鮮は6月に開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破するなど文氏を憎んでいる。

 文氏は18年9月の南北首脳会談で、寧辺(ニョンビョン)の核施設を放棄すればトランプ氏は制裁を解除すると金氏を説得、金氏も応じた。しかし、19年2月にベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談は決裂した。それで金氏のリーダーシップは傷つき、文氏にだまされたとして文氏を憎んだ。文政権とは付き合わないと公言したのはそのためだ。

■北朝鮮に残された道は2つ

 一方の北朝鮮も今の体制はそんな長く続かないのではないか。17年から始まった国際社会による本格的な制裁が効き始めていて、経済は壊滅状態だ。

 そこに追い打ちをかけるように新型コロナが発生した。北朝鮮は今、国境を全面封鎖しているので、稼ぎ口がほとんどなくなっている。さらに今年は水害も直撃し、食糧生産基地が壊滅状態だ。

 この三重苦の中、北朝鮮は、軍事態勢によって国民を締め付けている。指示に従わなければ軍法で処罰する。最近の状況は、北朝鮮の70年以上の歴史で最も怖い統治が続いているといわれている。

 北朝鮮は11月の米大統領選をにらんで今後の方向性を決めるつもりかもしれないが、残された道は2つしかない。核を捨てて米国と協力するか、核にしがみついて独自の道を歩むかだ。

 しかし、米国はどのような政権ができても北朝鮮の核保有は認めないだろう。トランプ大統領が再選したら北朝鮮問題に決着をつける可能性が高いとみている。来年ごろには北朝鮮のミサイル能力が米国本土を攻撃できる状況になるからだ。制裁だけでなく、強い「何か」をする可能性は十分考えられる。』

すぐには敗北認めるな バイデン氏に助言―クリントン元米長官

『【ワシントンAFP時事】クリントン元米国務長官は25日、11月の大統領選に関し、全ての票集計終了まで民主党候補のバイデン前副大統領は敗北を認めるべきではないという見解を示した。ドキュメンタリー番組のインタビューで語った。
郵便投票で大量無効票? 郵政公社「集計に間に合わない恐れ」―米大統領選

 クリントン氏は、郵便投票がかつてない規模になると見込まれる中、集計作業が遅れる可能性に触れ、当初段階ではバイデン氏は敗北宣言を控える必要があると強調。「われわれが一歩も引かずに相手陣営と同じくらい粘り強い態度を保っていれば、彼(バイデン氏)が勝つと信じている」と述べた。』

「がんに近づいている」 大統領、演説で明かす―フィリピン

『【マニラ時事】フィリピンのドゥテルテ大統領は25日の演説で、持病のバレット食道について「ステージ1のがんに近づいている」と医師から警告されたと明かした。ただ、警告の時期には触れず、ロケ大統領報道官は「だいぶ昔、大統領就任前だと思う」と健康不安を打ち消した。

【地球コラム】「ワクチンナショナリズム」の醜悪

 病状をめぐる発言は、汚職を戒める中で飛び出た。大統領は「金があっても食べたい物を食べられない。高脂質の食事を取れば死ぬと、医者から言われた」と述べ、「ステージ1に近づいているので酒を飲むな」と忠告されたと打ち明けた。
 ロケ報道官は26日、CNNの取材に「医師の助言は大昔のことだ」と説明。「だから大統領は酒を断ち、私の知る限り、就任後ずっと禁酒を続けている」と強調した。』

[FT]中南米の景気回復に水を差すコロナ以外の理由

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63061370W0A820C2000000/

『中南米諸国はブラジルとメキシコが引っ張る形で新型コロナウイルスが引き起こした深刻な不況から抜け出しつつあるが、慢性的な経済の脆弱性のために、発展途上国では最も低い成長しかとげられない見込みだ。

中南米は6月初旬から、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の震源地になっており、世界全体に占める人口が8%にすぎないにもかかわらず、コロナによる死者数の40%以上を占めている。

大規模な危機は、すでに病んでいた経済にとてつもなく大きな打撃を与えた。ブラジルとメキシコはコロナ対策で比較的レッセフェール(自由放任主義)なアプローチを採用したが、その他の中南米諸国は欧州やアジアよりもはるかに長く続く厳格なロックダウン(都市封鎖)によって軒並み壊滅的な打撃を受けた。

■「三重の急停止」を招いたコロナ

米ワシントンに本部を構える米州開発銀行(IDB)のチーフエコノミスト、エリック・パラド氏は、中南米は「三重の急停止」に対処しなければならなかったため、世界の中でも異常な状況に陥ったと指摘する。ロックダウンと移動制限による人々の活動の停止、貿易の減少、外国投資の流出と送金の減少がそれだ。

「2020年の中南米カリブ地域は、2基の壊れたエンジンで飛んでいる飛行機のようなものだ」とパラド氏は言う。「1つ目の壊れたエンジンは、いくつかの国における社会危機や低い生産性と成長率、政治的な二極化など、かねて存在していた経済問題すべてと関係している。そして2つ目がパンデミックと関係したものだ」

米バンク・オブ・アメリカによると、地域全体の域内総生産(GDP)は20年は8.2%減少すると予想されており、中東やアフリカ、新興アジア諸国よりはるかに悪い数字になる。21年の景気回復も勢いがなく、中南米の成長は3.5%にとどまり、失ったGDPの半分も取り戻せないとみている。

「中南米各地のロックダウンは経済の息の根を止めるには効果的だったが、ウイルスを食い止めるほどの効果はなかった」。英調査会社オックスフォード・エコノミクスの中南米担当チーフエコノミスト、マルコス・カサリン氏は話す。「景気回復については、メキシコとブラジルが抜き出ている。事業や施設の閉鎖が最も少なく、今のところ、どの国よりも素早く回復を遂げてきた」

最近、経済予想に最大の修正が加えられたのはブラジルだ。従来は7~8%のマイナス成長が予想されていたのに対し、今では大半の銀行が今年のGDPの縮小は約5%と見ている。21年の予想では、3%を若干上回る成長が見込まれている。

■ブラジル、メキシコ 1年後に待ち受ける困難

カサリン氏は、予想より早く回復を遂げたとはいえ、ブラジル、メキシコ両国とも、21年にははるかに困難な局面となるとくぎを刺す。「メキシコは最初に回復したかもしれないが、景気回復の最初の90%はたやすいものでも、最後の10%は難しい戦いになる」と言う。「従来から存在していた問題が影響を与え始める。パンデミックが始まる前、メキシコは8四半期連続で民間投資がゼロだった。では、今後それが出てくるのか。そんなことはない」

ブラジルは危うい財政状態で危機に突入しており、ボルソナロ大統領は22年の大統領選に向けて、やっかいな選択を迫られている。迅速な景気回復を後押しした緊急財政支出を打ち切るか。あるいは公的債務の水準が高いにもかかわらず歳出を続けて金融市場で危機が発生するリスクを冒すか。どちらかだ。

「ブラジルは二者択一の選択を迫られるだろう」。英調査会社キャピタル・エコノミクスの新興国担当チーフエコノミスト、ウィリアム・ジャクソン氏はこう語る。「ゲデス経済相が続投し、緊縮財政の中で改革が進められ、ボルソナロ大統領が選挙で敗れる。あるいは、もっと緩やかな財政政策がとられ、ゲデス経財相が辞任し、市場がパニックに陥る。その中間はない」

中南米3位の経済規模のアルゼンチンは、コロナに襲われる前から、すでに深刻な不況に陥っていた。3月半ばからロックダウンが導入され、世界屈指の長さになっているが、感染拡大を抑えられず、経済は昏睡(こんすい)状態が続いている。米シティバンクの予想によれば、同国のGDPは今年、11.5%減少する見込みだ。

早い段階で厳格なロックダウンに踏み切った他の中南米主要国は、コロンビア、チリ、ペルーだ。これらの国はウイルスを素早く封じ込めた欧州の成功をまねたいと考えたが、規模が大きい「非公式経済」と人口密度の高い都市部のスラム街が中南米でそうした戦略を妨げることを予期できなかった。

■ペルー 急速な回復の期待も

ペルーは、貧困層を支援する幅広い刺激策を発表しつつ、早い段階で非常に厳しいロックダウンに踏み切ったことで、世界的に称賛を浴びた。だが、ウイルスはそれでも国内の大規模な青空市場で猛威を振るい、米ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによれば、ベルギーに次いで世界で2番目に高い人口当たりの死者を出すことになった。

その結果、ペルー経済は第2四半期(4~6月期)に前年比で30.2%縮小し、世界で最悪の部類に入る不況に陥った。しかし、経済は急速に回復しており、来年は力強い成長を遂げると予想されている。カサリン氏は、ペルーはコロナ危機全体を通して、地域で最も力強い成長を遂げる国の1つになると見ている。

「ペルーはブラジルと同様に各家庭や企業への支援に資金をつぎ込んだが、既存の(債務の)脆弱性がなく、良い成長軌道に乗っていた」

似たような理由から、チリも大半の隣国よりも良い状態でコロナ不況から抜け出す公算が大きい。だが、コロンビアは、コロナの死者数の増加が続き、財政出動が鈍いことによって足を引っ張られるだろう。

中南米の指導者はコロナ危機を積年の問題に取り組む時が来たという警鐘と受け止める必要があると、パラド氏は主張する。「強靱(きょうじん)かつインクルーシブ(包摂的)で持続可能な成長をとげるための源泉が必要だ」

By Michael Stott

(2020年8月24日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2020. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

金与正氏、党の中核部署を掌握か 韓国国防相が見解

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63043860V20C20A8910M00/

『【ソウル=恩地洋介】韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は25日、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が党の核心部署である組織指導部に所属し、実質的に掌握しているとの認識を示した。韓国政府は金正恩(キム・ジョンウン)委員長が与正氏に一部の権限を委譲したとみている。

韓国政府は金与正氏(右)に一部権限が移されたと見る=AP
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組織指導部は党の情報と人事権を握り、父の金正日総書記は部長職を兼務したといわれている。北朝鮮は金与正氏の立場を「党中央委第1副部長」としか伝えていない。金与正氏が宣伝扇動部から組織指導部に移ったとの観測はあったが、韓国政府が公式に言及したことはなかった。

鄭国防相は国会答弁で、北朝鮮指導部の権力構造について「金正恩委員長が権力を掌握している。ただ、下の人間に役割や責任を分散している」と述べた。北朝鮮は6月に、対韓国事業に関しては金与正氏が総括していると明らかにしている。

韓国の国家情報院の分析によると、金正恩氏は自らの負担軽減のため側近に権限を移している。長引く経済制裁に加え、新型コロナウイルスや水害が経済を直撃している。失政批判を回避するためとの見方もある。

一方、金正恩氏が昨年末、党内に「軍政指導部」という名の部署を新設したことも国家情報院の国会報告で判明した。軍の統制を強める狙いとみられている。』

Facebook、タイ王室批判団体へのアクセス遮断

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63050850V20C20A8EAF000/

『【バンコク=村松洋兵】米フェイスブック(FB)は24日、タイの王室に批判的な団体が運営するページへのタイ国内からのアクセスを遮断した。FBは25日、ロイター通信などに対して「タイ政府から強要された」とし、法的措置を講じる方針を明らかにした。

軍政の流れをくむプラユット政権や王室を批判するグループのページ「ロイヤリスト・マーケットプレース」がタイ国内から閲覧できなくなった。日本に逃れているパビン京都大准教授らが4月に開設し、100万人以上が参加している。

プラユット首相は25日の記者会見で「タイの法律に基づいて取られた措置だ」と述べた。情報統制を担当するプティポンデジタル経済社会相が10日にFBに対し、ページを削除しなければコンピューター犯罪法違反で訴追すると警告していた。

王室を擁護し政権を支持する団体は25日、バンコクの日本大使館を訪れ、日本政府に対してパビン氏をタイに強制送還するように申し入れた。

タイでは不敬罪もあり王室批判は厳しく規制されているが、強権的なプラユット政権への抗議活動が広がるなか、一部では王室改革を求める声が出始めた。扇動罪などの疑いで反政府デモのリーダーらの逮捕も相次いでいる。』

インド、ファーウェイなど中国通信機器を排除へ FT報道

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63008470V20C20A8EAF000/

『インドの関係省庁は同国の通信会社に対し、華為技術(ファーウェイ)をはじめとする中国企業の通信機器を採用しないよう指示した。25日の英フィナンシャル・タイムズ(FT、電子版)がインドの当局者、企業幹部の話として報じた。インド政府は書面ではこうした決定を示していない。

FTによると、インドの通信会社の幹部は匿名で「インド政府は中国の通信機器の採用を認めないだろう」と指摘。この幹部は次世代の高速通信規格「5G」の試験でファーウェイや中興通訊(ZTE)などを使うことを、インド規制当局が禁じたと明らかにした。

インド電気通信規制庁によると、同国の携帯電話の利用者(アクティブユーザー)は10億人に迫り、中国に次ぐ世界2位の規模だ。契約者数で同国2位と3位の英系ボーダフォン・アイデアと印バルティ・エアテルはファーウェイと大口の取引がある。インドから排除されればファーウェイなどへの打撃は大きい。

インドが中国の通信機器メーカーを実質的に排除する背景には、両国の間の係争地を巡る対立がある。6月中旬には両国軍が衝突し、インド側に20人の死者が出た。

これを機にインドは経済面で中国への制裁措置を強化。6月末に動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」など中国系の59のアプリの使用を禁止した。インドメディアによると、中国企業によるインドへの投資案件の認可が留保されるケースもある。』

[FT]プーチン政権が続けるナワリヌイ氏監視の実態

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63058640W0A820C2000000/

『先週、毒物が原因とみられる昏睡(こんすい)状態に陥ったロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が搬送されたシベリアの病院では、医長室にマスク姿の3人の男が乗り込んでいた。

憂い顔で麦畑を歩くプーチン大統領の肖像画の下で、3人はとりとめのない話をしていたが、何者なのか名乗ろうとしなかった。だが、ナワリヌイ氏の家族や側近にとって、不似合いな服装とずる賢そうな物腰はすっかり見慣れたものだった。ロシアの治安機関の要員だとすぐに見分けがついた。

■治安機関が常時尾行

「まったくおかしな姿だ。こわもてで体格のいい男たちがたいていバッグを肩に掛けているので、それとわかる」とナワリヌイ氏が率いる「反汚職基金」のイワン・ジダーノフ代表は語る。

シベリアで汚職告発のユーチューブ動画を作成していたナワリヌイ氏が監視要員につきまとわれていたことは、10年来の活動を続ける同氏が今もロシア大統領府(クレムリン)にとって邪魔な存在であることを物語る。

プーチン氏に対する抗議運動を組織したかどで13回逮捕されているナワリヌイ氏は昨年、自身と家族は常にロシア治安機関の要員に尾行されていると本紙に語っていた。

「かなり前からずっと続いているが、もう当たり前のことになって気にしていないと言えばうそになる。ばか者たちがいつも隣に座ってくる。しかし生活を止めるわけにはいかない」と言明。「たいていの人は諦めて隠れようとするだろうが、私たちはできる範囲で生活を楽しんでいる」とも語っていた。

シベリアに同行し、オムスクの病院でナワリヌイ氏の病状を見守った側近らは、車での尾行やビデオカメラを隠そうとする男たちの姿を見るのもかなり前から慣れっこになっていると述べている。

「常に電話が盗聴されていることや隠しカメラがセットされていること、どこへ行っても監視カメラで撮影されていることはわかっている」とジダーノフ氏は語る。「私の身内や私が会った相手全員が尋問されている。完全な統制のようなものだ」

ロシアのペスコフ大統領報道官は、監視活動は「大統領警護隊の権限」で行われ、プーチン政権の承認を「受けるということはなく、受けるべきでもない」と強調した。

■世論工作にちらつくクレムリンの影

ナワリヌイ氏に対する監視は少なくとも、同氏が大統領選でプーチン氏に挑むべく国内行脚を始めた2017年までさかのぼれるようだ。同年、プーチン氏の盟友ユーリー・コバルチャク氏が親会社を共同所有しているとされるテレビ局が、ナワリヌイ氏は「逃亡した政商たち」から秘密資金を受け取っていると告発するドキュメンタリー番組を放映した。

この番組には、家族と休暇を過ごすナワリヌイ氏の姿をとらえた監視カメラ映像や盗聴された通話、テキストメッセージ、メールが使われ、同氏のスタッフがカフェで尾行された。

このテレビ局の元脚本家でオランダ亡命を申請中のドミトリー・ベロウソフ氏は本紙に対し、大統領警護隊から渡った映像であるはずだと語った。ナワリヌイ氏のような活動家をおとしめるための業界用語で言う「コンプロマート」と呼ばれる材料だという。

ベロウソフ氏は、テレビ局の政治担当チーフプロデューサーのアレクセイ・マルコフ氏から自慢された話として、クレムリンの委託による国営テレビのドキュメンタリー番組制作のために提供された監視映像などの素材を、ロシア連邦保安局(FSB)の「元締め」から入手したのだと語っている。

ベロウソフ氏は「彼が何者かに会って素材を持ち込んだ。基本的にあの番組を作っていたのは彼らだった」と言明する。「自分の発案であの種の番組を作るということはない。全て承認が得られるよう注文通りに作られている。何か伝えたい話がクレムリンの側にあって、FSBと政権が番組内容をまとめる」

ペスコフ報道官は「我々は何も知らない。彼らが誰なのかも知らない」と本紙に語った。このテレビ局はベロウソフ氏の話を最初に報じた独立系調査報道サイト「プロエクト」に対し、マルコフ氏がクレムリンから指示を受けたという事実はないとしている。

■隠しもしない監視活動

ロシアメディアの報道は、クレムリンがナワリヌイ氏のノボシビルスクとトムスクへの定期的とみられる訪問すら厳重な監視下に置いていたことを示している。政府寄りの大衆紙モスコフスキー・コムソモーレツは22日、旅行中は常にナワリヌイ氏の後をつけていたという「治安当局関係者」の話を伝えた。同氏は繁華街で支持者と自画撮りをしたほか、「陰謀のためのアパート」を借り、トミ川で泳ぎもしたという。

このリークは、ナワリヌイ氏に毒を盛るのは不可能だったということを示す狙いとみられる。「不適切あるいは疑わしい接触は一切」見られなかったとも強調している。

それでも、記事は監視活動の規模を浮かび上がらせている。要員がナワリヌイ氏の支持者のクレジットカードを照合確認し、寿司の出前注文やホテル予約についてもチェックし、同氏を車で尾行していたことを明らかにした。

プロエクトは、クレムリンの高官が同サイトの記者にナワリヌイ氏の公表前の検査結果を見せ「毒を盛られたということは完全にない」ことが証明されたと語ったとしている。

By Max Seddon

(2020年8月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

中国、南シナ海で再び軍事演習 陸空は参加せず

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63021720V20C20A8FF1000/

『【北京=羽田野主】中国の人民解放軍が南シナ海や台湾に近い沖合などの4カ所で再び軍事演習を始めた。これまでとは違い、陸空軍は参加せず、海軍主体の演習にした。国内向けにアピールしつつ米国との緊張が高まらないように配慮している様子がうかがえる。

中国全人代の会期中、人民解放軍代表団の会合に臨む習近平国家主席=20年5月、北京(新華社=共同)
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解放軍は7~8月にも南シナ海や台湾周辺で演習をした。陸海空軍がそろって参加する統合型の訓練だった。今回は海軍だけの演習に絞った点が大きく違う。

北京の軍事関係筋は「民間船舶の立ち入り禁止区域からみて、海軍の艦艇による射撃訓練が中心になる」と指摘する。海軍が毎年各地でやっている射撃訓練をつなぎ合わせて大規模にみせかけているとの分析だ。

中国海事局は南シナ海や台湾に近い広東省の沖合などで24~29日の日程で軍事演習をすると発表している。

中国メディアは米海軍主催で17~31日に実施中の多国間海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」に対抗するねらいがあると強調した。

解放軍関係者は「米艦艇がリムパックに参加するためハワイに向かっているいまが演習の良い機会だ」と話す。米軍が「不在」のいまなら偶発的な衝突や緊張が高まるリスクは小さい。国内向けには強い習近平(シー・ジンピン)指導部をアピールすることもできる。

25日には米中の経済閣僚が貿易を巡り協議した。米中貿易協議の「第1段階合意」を引き続き着実に実施しそのための条件を整えることで一致した。今回の軍事演習はこうした外交日程に水を差さないように配慮した可能性もある。』

迫りつつある中国による南シナ海「防空識別圏」設定(6月4日(木)8時0分 JBpress)
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0604/jbp_200604_2245973674.html

GDP1万倍の街、深圳特区40年 米中対立の最前線に

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63015680V20C20A8I00000/

『【深圳=比奈田悠佑】中国南部の広東省深圳市が経済特区に指定されて26日で40年たった。市場化改革の実験場として中国経済をけん引し、経済規模は1万倍になった。通信機器の華為技術(ファーウェイ)など有力な民間企業を多く生んだが、米中対立や香港問題でかつてない逆風が吹く。

さびしい漁村だった深圳市は1980年、中国初の経済特区に指定されると急速に発展した。2019年の域内総生産は2兆7千億元(約40兆円)と上海、北京に次ぐ中国第3位の都市だ。1980年比の経済規模でみた深圳の1万倍は、中国全体(216倍)はおろか、同じ時期に特区になった広東省珠海市(1600倍)や福建省アモイ市(900倍)も大きく上回る。

テレビの品質をチェックする工員(1982年、深圳市)=新華社・AP
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成長の起爆剤が緩い規制だ。輸入関税や法人税を減免し、外資をはじめ多くの製造業が深圳市に工場を建設した。競売による国有地使用権の民間払い下げや企業破産は深圳で全国に先駆けて実施された。かつての計画経済から市場経済への改革開放のモデル都市になった。

中国国務院(政府)の研究者は「政府が民間経済に介入しなかったことが深圳の成長の秘訣」とみる。北京と深圳の双方で勤務経験のある銀行員は「北京の監督当局は『とにかく法律や規制を守れ』の一点張り。深圳の役人はまず『何か困っていることはないか』と聞いてきた」と話す。

深圳が香港と隣接していることも成長に有利に働いた。安価な労働力を求める外資系電機メーカーなどが香港経由で深圳市に進出し、加工貿易の産業集積地となった。電子部品の製造、流通はいまも盛んで国内外のメーカーを引きつける。

ライトアップされた中国・深圳のビル群(2019年)

40年しか歴史がなく、国内各地から人材が集まる「移民都市」として街が形成されたことも魅力だ。工場での仕事を求めて地方から流入した労働者や子世代はその後、通信やネット企業の発展を支えた。大都市となったいまでも戸籍の取得条件は北京や上海より緩く、中国全土の若者が集まる。平均年齢は32歳と中国全土(38歳、中央値)より若い。

ロボット掃除機の製造ライン(2019年、深圳市)=ロイター
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深圳発のグローバル企業は多い。ファーウェイは通信基地局で世界首位の3割超のシェアをにぎり、20年4~6月期にはスマホ出荷でも世界首位に立った。ネットサービスの騰訊控股(テンセント)は「フォートナイト」を開発する米エピックゲームズなど世界のゲーム開発会社やフィンテック企業に積極出資する。ドローンのDJIは米国や日本など先進国で大きな収益を上げる。

グローバル企業が多い分、米中摩擦の打撃も大きい。米政府はファーウェイ製品を使う企業と政府機関の取引を禁じ、同盟国にも排除を呼びかける。米国の技術を用いて製造した半導体やソフトウエアの同社への供給も絞る。米国で1900万人が利用するテンセントの対話アプリ「微信(ウィーチャット)」も米国で禁止される見通しだ。

特区成立30周年の記念式典に出席した胡錦濤・元国家主席(2010年9月、深圳市)=ロイター
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香港での国家安全維持法の施行も逆風となる。「一国二制度」の香港は世界から中国への玄関口となり、隣接地の深圳も大きな恩恵があった。国家安全維持法で香港の競争力も陰りそうで、香港経由のカネや人の流入が鈍れば深圳への打撃は小さくなさそうだ。

もともと人件費の高騰や不動産バブルで工場立地拠点としての深圳の魅力は衰えており、市政府の危機感は高まる。

8月中旬には全国で最も早く高速通信規格「5G」の基地局を市内全域に整備した。7月にはIT産業や製造業を活性化するため、高速通信網やデータセンターなどのインフラを整備する計画も打ち出した。25年までに官民で4119億元(約6兆円)を投じる。

深圳市の特区成立を巡っては、秋に国家主席が現地を訪れて祝う慣例がある。20周年に江沢民(ジアン・ズォーミン)氏、30周年には胡錦濤(フー・ジンタオ)氏が記念式典に参加した。今年は隣接する香港の情勢が緊迫するなか、習近平(シー・ジンピン)国家主席の深圳入りがいつ実現するか、どんなメッセージを発するか注目される。

改革開放と経済特区 中国建国の父、毛沢東が発動した文化大革命で荒廃した国内経済を立て直すため、鄧小平氏は1978年に改革開放にかじを切った。計画経済を見直し、ヒトやカネの動きを市場に委ねる試みで、海外企業を誘致するために経済特区が設けられた。80~81年に広東省深圳市、珠海市、汕頭市、福建省アモイ市が経済特区となった。深圳は企業へ積極的に工業用地を貸し出したりして資金を捻出、水道や道路などのインフラを整備して加速度的に発展した。』

泥まみれ李克強視察と青空の習近平講話が示す苛烈

泥まみれ李克強視察と青空の習近平講話が示す苛烈
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63015800V20C20A8I10000/

『各地で深刻な洪水被害が伝えられて久しい中国。それでも国家主席の習近平(シー・ジンピン)は一切、被災地に足を踏み入れていなかった。ところが、いわゆる「北戴河会議」が終わるやいなや、突如、水害にあった安徽省に現れたのだ。驚きである。

「(この夏、意見を交わした)長老らから中国政治における治水の特別な意味を諭されたに違いない」「自らというより共産党の内部から圧力を受けての行動だろう」。党内ではこういう受け止め方が多い。

■「戦狼外交」しばし棚上げ

災害対応に当たる軍人らをねぎらう習近平国家主席(奥左から4人目、19日、中国安徽省肥東県)=新華社・共同
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確かに元国家主席の江沢民(ジアン・ズォーミン)は、1998年夏から長江流域や東北部で起きた大洪水の救援を指揮するため、予定していた日本公式訪問まで延期。前国家主席の胡錦濤(フー・ジンタオ)も名門、清華大学の水利学部を出た水力発電関係のエンジニア。前首相の温家宝は地質の専門家である。皆、治水には一家言ある。何やらきな臭い。

それだけに最高指導部内で珍しい動きも見られる。習が動いた2日後、競うように首相の李克強(リー・クォーチャン)も1000キロほど離れた別の洪水被災地に姿を見せた。共産党内序列1、2位が時を同じくして被災地視察のため首都、北京を空けるのは極めて異例だ。しかも今は米中衝突さえあり得る非常時なのに、である。

電話協議したライトハイザー米通商代表(左)と中国の劉鶴副首相=共同
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とはいえ陰に長老らの圧力もあると考えれば2人の行動はストンと落ちる。危険な対米関係は結局、11月の米大統領選で決着がつくまで打つ手に乏しい。しばらくはコントロールしにくい反米デモにつながるような雰囲気を抑えつつ、最低限、必要な対抗措置をとり、様子を見るしかない。

遅れていた中国の副首相、劉鶴(リュウ・ハァ)と米通商代表部(USTR)代表のライトハイザーの電話協議が25日(中国時間)にあり、2月に発効した「第1段階合意」の進展を確認したのもこの流れにある。いわゆる派手な「戦狼外交」はしばし棚上げになる。

■晴天の下の習近平氏

20日、中国重慶市郊外の被災地を視察する李克強首相(中央、中国政府の「微博(ウェイボ)」から)=共同
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20日、李克強は雨靴を水中に踏み入れて泥まみれになりながら、なお水害の渦中にある重慶市の被災地を視察した。普通なら、民に寄り添う「親民宰相」として全国の庶民らから大称賛されそうなものだが、奇妙なことにそうなっていない。多くの中国国民はこの泥まみれ視察を知らないのだ。

当初、視察を伝えたのは李を頂点とする国務院系列の中国政府網によるインターネット報道だけ。国営通信の新華社、国営中央テレビ、共産党機関紙の人民日報など主要中国メディアが公式報道したのは3、4日も後のことだった。異例の遅れであるうえニュースの扱いもせいぜい4番手と小さい。

これらの報道には李がいつ重慶を訪れたのかという日付さえない。もし明記すれば「なぜこんなに報道が遅れたのか」と疑問を持たれるからだ。地元、重慶のメディアの報道も中央に倣って大幅に遅れた。習近平の側近である陳敏爾が重慶トップとして李克強の視察に同行していたのに、あえて数日間、無視したのだ。

対照的だったのは、別の洪水被災地を視察した習近平を扱ったあふれんばかりの報道である。北戴河明けの18日午後、トップが訪れたのは安徽省。ただし、そこは既に洪水が過ぎ去り、復興段階に入っていた。

習の安徽省視察日程は18~21日。これに対し李の重慶訪問は20日からで、習の後半日程と完全にかぶっていた。別格の指導者である「核心」となった習を目立たせるには、李の報道を曖昧にするしかない。

泥まみれで、水につかった農産物を手に表情も厳しい李。対して青空の下、革靴姿でにこやかに話す習。同じ被災地視察なのに、対照的な2人の扱いには、別の政治的な意味もあった。

大禹(う)治水――。習は安徽省の被災地で、黄河の治水に成功した伝説上の聖王で夏王朝の創始者とされる「禹」にわざわさ触れた。自然災害と戦ってきた数千年の歴史を強調したのである。

■毛沢東に倣う習主席

「北戴河会議」で長く注目されてきた江沢民元国家主席(中)と胡錦濤前国家主席(左)の握手。右後方は朱鎔基元首相(1999年、北京の人民大会堂で)
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古代から連綿と引き継いできた中国の伝統では、治水に特別な意味が込められている。水を治める能力があるものこそが王や皇帝にふさわしいのだ。それほど暴れる河川を鎮めるのは難題だった。できなければ農民が苦しみ、死に追いやられる。

習も「核心」である以上、これを意識せざるをえなかった。そもそも今年は農暦で必ず大乱が起きるとされる60年に1度の庚子(こうし)の年。既に新型コロナウイルス感染症のまん延という苦難があったが、災いはそれだけではなかった。洪水、水害でも1998年を超す被害が出つつある。

習の安徽省視察にはもう少し生臭い現代政治上の演出も見えた。新中国の建国から間もない1950年、淮河は大洪水に見舞われた。その後、毛沢東は「淮河の治水工事を必ずやり遂げよ」と強く指示。習が今回、視察した堰(せき)も毛の命令を受けた突貫工事で完成したものだった。

今後の政局を乗り切るためにも、自らを淮河の治水を命じて成功させた建国の父、毛沢東になぞらえたい。それには被災のまっただ中ではなく、復興途上の被災地の青空こそふさわしい。毛の揮毫(きごう)を記した壁の前を笑顔で闊歩(かっぽ)する習の写真を中国メディアが配信した意図もそこにあった。

習が、禹の事績と並べて口にしたのは、古代から伝わる故事「愚公、山を移す」。どんな難事業でも諦めてはならないという戒めもまた毛沢東が好んで使い、ソ連訪問の際、会談したスターリンにまで紹介している。中ソ提携に絡め、スターリンが、ロシアの民話である「大きなカブ」を持ち出して、力を合わせる大切さを説いたのに”対抗”したのだ。

ただ、現代の国際政治で毛沢東は一転、鬼門である。トランプを再び大統領選候補者に正式指名した米共和党は、2016年綱領で毛沢東に先祖返りする習近平政治を批判していた。「中国の現在の指導者は毛沢東路線に回帰している」。この綱領は今回も踏襲された。

■次期5カ年計画でも影薄い李首相

24日、米共和党大会の会場で演説するトランプ大統領(ノースカロライナ州シャーロット)=AP
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泥まみれの李克強は、今後の長期経済計画を巡る議論からもやや距離のある場所に置かれている。24日、北京中心部にある要人の執務地、中南海で習近平が主宰する重要会議が開かれた。来年から始まる2021~25年の5カ年計画策定を前にした経済の専門家らからの意見聴取である。

そこにはイデオロギー・宣伝を担当する党内序列5位の最高指導部メンバー、王滬寧(ワン・フーニン)や、経済担当の最高指導部メンバーで副首相の韓正、習に近い政治局委員の劉鶴、同じく習側近の共産党宣伝部長の黄坤明らも控えていた。

本来、経済運営が主たる業務である李克強の姿はない。次回共産党大会での最高指導部人事は22年秋以降で、首相の地位は少なくとも23年春まで保たれる。それなら来年からの5カ年計画の議論を仕切るのは李でよいはずだが、どうも影が薄い。

洪水視察を巡る李の報道の扱いが極端に不平等なのも同じ理由だ。習サイドが宣伝部門を牛耳り、政治日程組み立ての主導権を握っているからである。習時代の中国政治は常に苛烈である。

10月に予定する党中央委員会第5回全体会議(5中全会)では次の5カ年計画のほか、2035年までの超長期の経済展望も議論する。習はそれも意識して「眼はじっくり先を見据え、大勢を把握しなければならない」と長期的な視点を訴えた。

厳しい対米関係や国内経済を踏まえた戦略を語ったようで、その実、まだまだ長く君臨するであろう自分に付き従うべきだと暗に勧めているようにもみえる。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
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習近平帝国の暗号 2035
著者 : 中澤 克二
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,980円 (税込み)

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中沢克二(なかざわ・かつじ) 1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞
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経済が破綻してくると流行るもの : 机上空間

http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/23502265.html

 ※ いつもながら、鋭い視点を出されておられる…。丸々、引用させていただきます…。

『明確な指標が出ていなくても、実質的な国の経済が破綻してくると、暮らしている国民は敏感に反応するものです。日々、収入をやりくりして、生きていく事を繰り返しているのですから、国が持ち出す統計とか政治家の言葉なんかより、「自分がどう感じているか」の方が、確実に真実に近い。

経済破綻が始まる国には、共通の現象が起きます。一言で言ってしまえば、堅実な労働による収入の増加や、節約による貯金よりも、一発逆転的なギャンブル要素の高い投資に人々が熱中するという現象です。大多数の人は、長い人生を生きるに当たって、堅実な道を選びます。もし、努力による収入の増加や、節約による貯金で、財産が増え、一生を生きていける目処が立つなら、一部の人を除いてギャンブル的な事を好んでやる事もありません。

アメリカで起きた年金を担保にした株式投資ブーム、中古住宅の転売ブームに見るように、普通に暮らしていた人が、投資・投機に手を出さないと、今の生活を維持できなくなってくると、経済のほつれが表面化してきます。投資は自己責任という言葉がありますが、アメリカの場合、当時のブッシュ政権と、ロビー活動を通じて有利な法制度を制定させた金融業界によって、普通の生活が維持できなくなった労働者階級が、投資に走らざるを得ない環境へ追いやられたと考えたほうが正しいと思います。

人工的に演出された投資ブームに乗って、でたらめな融資で借金が膨れ上がり、借金を資本とした資金で、経済が好回転して見せかけの好況が演出される。このハリボテ経済の着地点が、リーマンショックだったわけです。今は、中国が同じ道をたどっています。

巨大な経済機構を持たない後進国は、安い元手でできる、宝くじや、ねずみ講のような不確実な投資に、なけなしの資金を投じる事になります。どちらも、確率は低いですが、儲かる人間は一定数存在します。その少ない勝者に加わる事に、賭けて手元の資金を溶かすわけです。これも、そうでもしないと、一生、今の環境から逃げ出せない絶望が、先にあります。なので、無謀な賭けが救いに見えるわけです。

ちょっと目端の効く人間ならば、高級外車や不動産が暴騰している地区の物件を、借金してでも購入するようになります。経済が悪化すると、インフレで通貨の価値が下がりますが、モノに替えておけば、財産価値の担保になりますし、場合によっては価値が上がるからです。これが、起きているのが、お隣の韓国です。

法的にペナルティーをかけても、なおソウル市の不動産の価格が高騰し続けるのは、購入者が命をかけて借金して捻出した資金で不動産を買っているからです。もちろん、借金の額が大きければ、支払う金利も大きくなるので、参加したら降りる事のできないチキンレースのようなものです。それでも、社会的に成功するには、賭けないと他に方法が無いのです。社会が閉塞してくると、そういう発想に捕らわれてしまいます。高級外車がバンバン売れているのも、同じ理由からです。

地道に努力して得られる財産を侵食する程、早いペースで国の経済が悪化すると、手元の現金が尽きないうちに、勝負に出て大きな成果を得ようとします。ある一定数の人々は、それで成功して大きな財産を築けます。しかし、大方は、もう再起して貯蓄できるあてのない財産を溶かして、路頭に迷う事になります。

こう考えると、経済が健全で、未来に希望が持てる事が、モラルや社会構造の全てにおいて、とても重要である事が判ります。思想によって決定され、描かれた未来が、経済を抜きにして人々を幸福にする事は、あり得ないのです。思想というのは、経済的に安定した社会が、余力で実現を目指すものです。

ただし、社会の一部の人間が、経済的な恩恵を受ける為に、他所を犠牲にする事に思想を使おうとするならば、経済的な事を抜きにして戦う必要があります。その体制が固まれば、世の中の大部分は、中世の農奴のように、少数の利益の為に人生を捧げる道具に成り下がるからです。

多くの場合、思想の先に幸福があるものとして、社会の仕組みやら教育やらに手を付けます。しかし、経済が安定していなければ、どんな思想も歪み、人々を逆に傷つけるのです。』

賭博場と化した株式市場 予想されるロビンフットの大量死

https://globalstream-news.com/200619-2/

『4月後半に米国政府は、市民一人につき1200ドルの給付金を支給した。在日米国人の知人は5月初めに米国財務省から小切手を受け取った。知人家族は米国にいて1200ドルの給付金と納税額とを相殺して、残りの税金を払うことにしたという。このように、米国では給付金の支給は速やかに行われた。

 この1200ドルを元手に、ロックダウンで自宅に閉じ込められた人たちの一部が「にわかデイトレーダー」になった。ネット証券会社ロビンフッドでは、ロックダウン直後から新規の口座取引数が急増した。

 下のグラフを見ると、2018年には口座取引数がおよそ500万で、その後なだらかに増加していった。が、ロックダウン直後から約2ヶ月で一気に約1500万件も増加した。

 新規に取引開始した人たちの多くは、年収3万5千ドルから7万5千ドルのミドルクラス、いわば「普通の人たち」である。彼らは、コロナショックで急落した株式市場で「人気銘柄」FAAMG(フェイスブック、アマゾン、アップル、マイクロソフト、グーグル)を買い始めた。この勢いで、株価下落を予想してショート(空売り)を仕立てていたヘッジファンドは、猛烈な買い戻し(ショートカバー)を迫られた。

 また、最近、コロナショックで大手レンタカー会社ハーツが破綻し、破産裁判所は資金調達のために10億ドルもの新株の売却を命じた。すると、ハーツ株を割安とみた大衆ロビンフッド投資家が大量に買いに走った。この群集行動で破綻企業の株価が上昇する事態となった。

 ロビンフッドのトレーディングプラットフォームはなぜこれほど人気なのか。このフィンテック企業は二人のスタンフォード大学卒業生によって設立されたベンチャーだ。若者にも株やオプション、仮想通貨取引を無料で提供しようという志に基づき、大衆売買手数料はほぼゼロ、しかも月額費用を払うと信用取引で一定の融資を受けられるサービスも付いている。

 一方、ロビンフッドは投資家口座の売買動向をビッグデータとして高速取引/クウォンツ系ヘッジファンドに高値で売っている。これが、同社が大衆にタダ同然でトレードさせても儲かる仕組みである。

 このようなビッグデータビジネスは珍しくはない。例えば、私の会社でもヘッジファンド情報やポートフォリオ構築ツールとして米国の高価なアナリティックスを使っているが、アナリティックス提供会社はデータサブスクリプションの他に、我々顧客がいつ何を検索し分析したかといったログをビッグデータに引き込んで加工し、そのデータを異なる顧客に高値で売っている。

 話を元に戻すと、ロビンフッドプラットフォームに群がる大衆投資家の群集行動は、ヘッジファンドのトレンドフォロアーたちに大いに利用されている。

 そして、ロビンフッドデータの二次使用でさらに儲けるツールも現れた。大学生が開発/プログラミングしたロビントラックのプラットフォームである。ロビンフッドとロビントラックには資本関係はない。ロビントラックは、ロビンフッドのデータをダウンロードして公的なAPIと繋いだシンプルなプラットフォームで、何人のロビンフッドのリアルな投資家がある特定の銘柄を保有しているのかリアルタイムで見ることができる。

 例えば、ハーツ(HTZ)を保有しているロビンフッド投資家数の増加は、下のロビントラックでトップスリーにランクインしている。ハーツの人気の高さが伺える。このような人気集中銘柄ランキングは、個人投資家の動向をトレンド分析するクウォンツ系ヘッジファンドや投資銀行の自己勘定トレーディング部門で活用されている。

 その結果、大衆投資家はより大きな資本家に手の内を先読みされてしまう。株式市場は賭博場と化しており、その元締めはFRBと大資本家たちだ。相場の荒波は繰り返しやってくる。彼らの資本量と情報量が、相場を支配している。

 次の2番底へ向かう局面では、多くの小さな投資家たちが逃げ遅れ、大量死するだろう。とにかく、こういう時期は安全第一。ミドルリスク/ミドルリターン型の資産防衛、長期分散投資が安全です。』

リクルートの4~6月期、純利益62%減

リクルートの4~6月期、純利益62%減 求人広告の利用減少
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL26HT4_W0A820C2000000/

 ※ 純利が62%減とは、ショッキングな数字だ…。
 コロナによる「需要減」を、モロに受ける業界だから、やむを得ないところだろう…。業界最大手にしてこれだから、他は推して知るべしだろう…。
 しかし、7月の連結売上収益は15%減と、回復の兆しは見えている…。
 米国の「血清療法の認可」の報道とか、各国の「ワクチン開発」の進捗の報道とか、明るい材料も聞こえている…。
 トップの峯岸さんが言う通り、「シミュレーションの想定の範囲内」に収まっているのだったら、無闇に動揺するべきことでもないんだろう…。
 それよりも、苦境にあって重要なことは、「次の収益源につながるようなタネ」の発見だ…。そういうものは、何か飛躍的な、超人的な思考・考察の結果見つかるというものではなく、「日々の業務」の中に転がっている…。それを発見・掬いとれるだけの「眼力」が備わっているのか…。そういう「眼力」を備えるべく、日々己を鍛錬しているのかこそ、振り返ってみるべきだ…。

『リクルートホールディングス(6098)が26日発表した2020年4~6月期連結決算(国際会計基準)で純利益は前年同期比62%減の223億円となった。求人検索サイト「インディード」を含む主力の「HRテクノロジー」では、有料求人広告の利用が減少。国内の宿泊予約サイトや飲食店サイト「ホットペッパー」などが含まれる「メディア&ソリューション」も振るわず、全事業で減収となった。

売上高にあたる売上収益は20%減の4754億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で顧客の採用活動や広告出稿が減り、「HRテクノロジー」事業は28%減、「メディア&ソリューション」は29%減った。全体の営業利益は63%減の266億円だった。

21年3月期通期の業績予想についてはコロナ感染拡大の影響により合理的な見積もりが困難として引き続き未定とした。直近の状況について、7月の連結売上収益は前年同月比約15%減だったとしている。

4~6月期の決算発表については、コロナ感染拡大を受け通常とは異なる決算プロセスとなるため、東京証券取引所が順守を求めている決算期末後45日以内の公表はできないと6月に公表していた。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕』

組織・人事のプロが見た2021年卒採用

「口だけのJOB型採用」「氷河期の再現は本当にない?」コロナ禍で振り回される就活生
組織・人事のプロが見た2021年卒採用
https://newswitch.jp/p/23493

 ※ 多分、決定的に誤解していることがあると感じる…。
 それは、「会社」というものは、「利益獲得目的団体である」ということだ…。
 あなたは、生涯賃金「2億円の投資案件」として、採用される…(上場企業だったらな)。
 この先30年、ヘタすると40年あなたに投資した投資資金は、「塩漬け」となる…。
 30年先、40年先の「経済状況」を、誰が見通せる?「リーマン」みたいな経済危機に襲われても、会社存続のために「儲けのタネ」を見つけ出し、「自分を変えて、適合させて行く。」そういう可能性を持っている「人間」なのかどうか、を判定しようとしているんだ…。人事担当者は、そういう使命を帯びて、その職に就いている…。眼力無く、「2億円の投資案件」に失敗したら、そういう評価を下され、別の人間に取って代わられるだけの話しだ…。採用する側だって、その「目利き」の能力が問われているんだ…。
 ジョブ型というものも、「やや、専門性に寄っている」というだけの話しで、本質に変わりは無い…。直接対面だろうが、オンラインだろうが、本質に変わりは無い…。大体、大学や大学院で学んだ「現在の技術」が、30年先や40年先にも、「そのまま通用する」ということが、あろうハズが無い…。その時々で、会社が必要とする「技術」は、当然に変容していく…。そういう「変容・変化」に適応していける可能性があるのかが、判定されているんだ…。
 文系出身者が担当者に多く就いているのは、彼らが「多くの書物を読み、間接経験が豊富」だからだ…。
 文句を言っているあなたは、その担当者に匹敵するだけの「多くの書物」を、読んだのか?「豊かな間接経験を数多く積んで」、「豊かな人間性を涵養した」のか?そういう「人間性」こそが、苦境に襲われたときに、「状況を突破していく力(ちから)の元」となる…。
 そういうことを、省みる必要がある…。

『新型コロナウイルスの感染拡大が2021年卒の学生の就職活動を翻弄している。4-5月の緊急事態宣言は就活のピーク時期に重なり、企業説明会の中止やオンライン化、選考の遅れにつながった。さらに、特定の職務に適した人材を採用して職務に応じた処遇を行う「JOB(ジョブ)型採用」への移行を宣言する企業が相次いだほか、早期インターン活動も拡大しており、今年の学生は今まで経験したことのない就職活動を求められている。

企業側も同様、未経験の事象に翻弄されているといってよいだろう。コロナが発生する前は空前の売り手市場で青田買い合戦を繰り広げ、コロナ禍では急遽オンライン中心の選考体制の構築に取り組んだ。

「まるで異なる採用を、1年で2回も組み立てた感じ」(大手食品メーカー人事)
こうした声は、多くの企業に共通するはずだ。加えて、今後が不透明な事業環境において、22年卒の採用活動も早々に始めなければならない。今年の企業の人事部門は、まさに3年分の仕事に取り組んでいるようなものだ。

学生も企業も苦悩の真っただ中にある今、21年卒採用を総括するのは時期尚早だろう。しかし、技術系という比較的恵まれた就職・採用環境の下で活動する大学や企業、学生に接する筆者の立場からも今年の就活は危うさが目に付く。

21年卒就活は、学生にとって「学びや経験、スキルをもとにキャリアをスタートできる場」になっているのか、企業にとって「各職場や企業全体の成長をけん引する学生と出会える場」となっているのか。「JOB型採用」「オンライン化」「内定率」という3つのキーワードから、特に理工系学生による就活の現場で起きていることを確認したい。

JOB型採用は進んだのか ~空手の演舞を求められた工学修士生~
日立製作所や資生堂、富士通、KDDIなど名だたる日本企業が、「JOB型」への移行を進めている。就活においても、総合的学力やコミュニケーション力ではなく、仕事に直結する専門性やスキルを重視した選考が進む。数多くのメディアが喧伝し、学生も期待したキーワードだ。

しかし、JOB型採用の本命といえる業界の人事からは心細い声が聞こえてくる。

「実際に具体的なJOBを定めて採用されるのは、ごく一部の上位校出身者のみ」(大手電機メーカー人事)
「大多数の学生にとっては、採用基準は総合職基準。コロナで先行きが見えない中、どんな仕事を担当するかなど約束できない」(大手システム人事)
一方、学生からも「がっかりした」との声は多い。

「自分はけっして(上位校に通う)Sランク学生ではないが、この技術では日本でも3本の指に入る研究室でしっかり履修してきた。その学びをまさに生かせるメーカーに応募したが、一次・二次とも面接官は文系の人事担当者。技術的な話はほぼ通じず、高校時代の空手部の話ばかりを深堀されてがっかりした」(地方公立大学機械工学部修士2年)
研究テーマの応用性について対話をするつもりだった彼が、オンライン面接で披露させてもらえたのは、人事担当者からリクエストされた、高校時代に学んだ空手の演舞だったというのは笑えない話だ。

JOB型採用といいながら、職場の選考方法が変わっていないとの声もある。

「JOB型の人事制度をアピールしているメーカーだったので、研究テーマや使える設計機器、言語などを説明したが、アルバイトの話や人間関係、高校時代からの成功体験、失敗体験といった質問が中心だった。JOB型採用といって専門性を見ていたのは超上位校向けの早期インターン選考時だけだったのではと疑ってしまう」(私立大学工学部4年生)
ごく一部の取り組みを、さも全体のように伝えるのは企業人事の悪い癖の一つだろう。

オンライン化された就活と就学が生んだもの ~不器用と器用な学生の分断~
2021年採用はオンライン選考が本格化した年として記憶されるのは間違いない。

「例年5月になると学生が就活のために上京してしまい研究が進まないが、今年はオンライン選考が多かったため、地方の学生や大学にとってはメリットが多かった」(地方国立大学准教授)
「試行錯誤だったが、オンライン中心の面接やSNSを通じた小刻みな対話で選考したり接触したりする、従来よりも効率的かつ効果的な手法が見えてきた」(大手輸送機器人事)

写真はイメージ
こうした声が上がるように、多くの関係者がオンライン化を歓迎する。コロナが収束した後も、オンライン就活は常態化していくはずだ。一方で、オンライン化の無視できない弊害を指摘する声もある。

「就活も終盤になると学生が面接に慣れてくるものだが、オンライン面接主体の今年は、面接が苦手な学生が苦手なままでいる感じがする。リアルと違って、自分の面接の課題が分かりにくいのではないか」(大手建設機械人事)
「講義のオンライン化で登校がないため、教授が学生の就活状況を把握するレベルが極端に下がっている。キャリアセンターには接触がなく、相談もされていない。9月になって、今年の就活に取り残されていた学生がたくさん出てくることを懸念している」(私立大学キャリアセンター)
オンライン化は、対面以上に不器用な学生を置き去りにするリスクを持つ。学びや経験、スキルではなく、かつての「コミュ力至上主義」の風習が戻ってはいないかが心配される。1993-2005年頃の就職氷河期では、仕事を担う十分なスキルがあるのに不器用で面接を上手にこなせなかったがために、仕事に出会えない学生がたくさんうまれたからだ。

就職氷河期は起こらなかったのか ~内定率だけでは測れない実態~
その年の就職の厳しさを表す内定率は、7月に回復基調となった。このため、「航空業界など特定の業界の志望者を除けば、21年採用では氷河期は起こらなかった」と評する声が多い。少子高齢化の日本は、慢性的な若者不足のため、もはや氷河期などは発生しないという見方もある。

しかし筆者は、全体としての「率の高さ」だけで、就職環境の善し悪しを評価してよいか疑念を持っている。下のグラフは、文系に比べれば「売り手市場」とされる機械・電気系の大卒就職志望者の就業先別構成率についてリーマン・ショック直後で不況期の10年卒と19年卒を比較したものだ。

企業に人気の理工系学卒のため、就職率にはそれほど大きな乖離はない。10年は95.2%、19年は98.5%だ(文部科学省・厚生労働省『大学・短期大学・高等専門学校及び専修学校卒業者の就職状況調査』より)。ただ、不況期の10年と売り手市場の19年では、就職先の産業に違いがあることがわかる。

不況期に就職率が高まった就職先には「卸売業・小売業」と「教育・学習支援業」がある。つまりスーパーマーケットや学習塾産業だ。ここに含まれる多くは「アルバイト先への就職」と推察される。就活に疲れた学生が、企業の面接に嫌気がさし、アルバイト先にそのまま就職したというわけだ。私自身は小売業出身であり、業界を差別するつもりはない。ただ、言葉を選ばずに言えば、理工系学生の多くが自ら進んで選ぶ職場かと考えると疑問だ。

21年卒について、今現在において公的データは何もないが、今後「学びやスキル、経験」を生かそうとする学生が本来望む業界でキャリアがスタートできる年であったのかしっかり注視していくべきだろう。「理工系学生の就活環境はコロナ禍においても前年と変わらなかった」といった見解を数100-1000人程度のアンケートを基に算出した内定率だけで結論付けるのは、22年卒生に大いなる誤解を生みかねない。

技術者が枯渇している日本の企業が取り組むべき課題
エンジニアの採用や教育、派遣に携わる当社(フォーラムエンジニアリング社)では、新卒社員の採用面接時には学生時代に履修したことや研究テーマの確認に大半の時間を割いている。学生からは「技術で成長を目指すメーカーにこそ、アルバイト経験などではなく、このような面接をしてほしい」と言われる。

そうした採用活動を通して理工系学生は、優秀だが話下手が少なくないと感じる。だから、自身の学びやスキルをどれだけの人が、器用な就活強者の文系学生のように、人事担当者に説明できるかは疑問だ。

一方、日本の基幹産業である機械や電気、輸送機器に関わる技術者の現状に目を向ければ、その人口はたった64万人にとどまる(17年国勢調査)。全国の理工学部の大学1年生だけでも10万人いるにもかかわらずだ。数多くの理工系学生たちは、学びを軽視し、コミュニケーション力や器用さアルバイトでの成功体験を求める日本の就活慣行の中で、他の道を選んでしまったのだろう。結果、この国の基幹産業の技術的な未来を担っているのは、人口比でたった0.5%になってしまった。

今年は、日本の採用の大きな転換点となるといわれている。この転換は果たして、「学びやスキル、経験を生かして働ける社会」「技術立国日本の復活」に向かっているのだろうか。』