外食の客足、復活の3条件 全国1万店データ分析

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62925950R20C20A8TJ1000/?n_cid=NMAIL006_20200824_H

『新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、飲食店の客足の戻り方に差が出ている。トレタ(東京・品川)の顧客管理サービスを導入する全国1万店のデータによると、来店客の回復は「ランチ」「住宅街立地」「少人数」ほど早かった。営業スタイルや出店戦略も変化を迫られそうだ。

お盆休み明けの午後、東京・吉祥寺を歩くと、真新しい看板や張り紙が目についた。「昼飲み始めました!」「昼飲みOK。12時より」。あるビストロは、6月から土日の昼間営業を始めた。「お酒を安くしているのでぜひ昼間に来てほしい」という。

こうしたお店が目に付くようになった理由は、客足がランチ時間帯にシフトしているからだ。それは予約や顧客情報の管理にトレタを活用している約1万店のデータにも如実に表れている。同社のサービスは高級店から個人経営の居酒屋まで幅広い店が導入している。

消費者が予約の際に指定した来店時刻などから推計すると、8月10~16日は午後9~11時台の来店客数が前年同期比55%のマイナスだった。緊急事態宣言が出ていた4月下旬の98%減よりは回復したものの、38%減まで戻したランチ(午前11時~午後2時台)と比べると苦戦ぶりが目立つ。

東京都などが8月に入って午後10時以降の営業自粛を要請している影響も大きいが、自粛と関係ない午後5~8時台も48%減と回復が遅い。消費者が感染防止のため、滞在時間が長くなりがちな夜の外食を避けている状況がうかがえる。

店舗の立地別にみても、客足の回復にはバラツキが出ている。

人口の密集する東京都内で調べると、代表的なオフィス街である千代田区や中央区は8月10~16日の来店客数が前年同期比6割前後のマイナスだった。両区の飲食店はビジネスパーソンが主要顧客で、コロナ禍で在宅勤務が浸透したことが重荷となっている。

対照的なのが住宅の多いエリアだ。高級住宅街の自由が丘などがある目黒区は25%減で、3月上旬と同水準まで回復した。成城や二子玉川といった人気エリアを抱える世田谷区は8%減まで戻り、前年並みが視野に入っている。

以前は仕事帰りにオフィスの近くで飲食していた人々が、家族と自宅近くの飲食店を訪れるようになったとみられる。9割が郊外にあるアークランドサービスホールディングスのとんかつ店「かつや」は7月の既存店の客数が3.4%減まで回復、持ち帰りのまとめ買い需要も取り込んで売上高は6.9%のプラスに転じた。

感染リスクが高いとされる大人数での宴会も、前年と比べるとほとんど開かれていない。8月10~16日は1~2人での来店が前年比21%のマイナスまで回復したのに対し、3~5人のグループは41%減、6~10人は65%減だった。11人以上の大人数になると82%減という深刻な状況が続く。

「飲食店の出店戦略や営業の手法は、消費者が日々職場に出かけることを前提に築かれてきた」。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎氏は指摘する。だがコロナ禍によってその前提は崩れた。これからの外食産業は、「ランチ」「住宅街立地」「少人数」でも稼がなくてはならない。

変化に対応する動きはすでに出ている。「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーは6月、新業態「つかだ食堂」の展開を始めた。特徴は定食やおかずメニューの充実だ。居酒屋としての性格が強い塚田農場の一部を、家族連れなどがランチでも訪れやすい店舗へと順次転換する。

プロントコーポレーションは7月末、東京・港にワイン居酒屋「ディプンティーナ」の1号店を開いた。仕事帰りの女性が1人で立ち寄れる店、というのがコンセプト。少人数での来店を意識し、大皿ではなく小皿で1人分の量を提供するメニューを充実させた。高めのテーブルで立ち飲みもでき、来店客の滞在時間も30分程度と短いケースが多い。

トレタのデータからは、常連の大事さも浮かび上がってくる。8月10~16日の客層を分析すると、その店を訪れるのが3回目以上のリピート客の数は前年同期比18%減にとどまった。逆に初めて訪れるいちげん客は40%減となっている。

苦境にあるときこそ、なじみの店を支えたくなるのが消費者心理だ。今後は広告宣伝を投じて新規顧客を開拓するより、つながりを深めて常連になってもらう努力が重要になる。

(藤村広平)』