「日本を同盟国友人リストから外せ」という、米有名シンクタンク員論説の真意

「日本を同盟国友人リストから外せ」という、米有名シンクタンク員論説の真意ーー10カ国をメッタ斬り
https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20200820-00193884/

 ※ これは、絶対読んでおくべき記事だ…。おそらく、2020年に読んだ記事の中で、いや、ここ2、3年で読んだ記事の中でのベスト3には入るものだ…。今、世界で起きていることを把握する際に、最も肝心なことを「大きく掬える視点」が出ていると思う…。

1、2次大戦以後の世界秩序は、「パクス・アメリカーナ」だった…。
 国力、軍事力とも圧倒的で、「世界のグランドデザイン」を設計・構築した…。

2、「パクス・アメリカーナ」が提供する「世界秩序」は、むろん「アメリカの世界戦略」に基づくものだった…。
 しかし、それが提供してくれる「安定した秩序」は、各国にそれなりに「利」を提供してくれるものだった…。特に、「経済活動」は「先行きの計算ができること」を必須とするから、各国はそれに乗っかった…。

3、ライバル(「パクス・アメリカーナ」への挑戦者)は存在し、それはソ連だった…。
 核保有国だったので、「全面戦争」するわけにいかず、「冷戦」という形で争った…。世界のあちこちで、「小規模な小競り合い」は生じた…。それは、ある意味「代理戦争」だった…。

4、冷戦は、「ソ連崩壊」という形で決着した…。

5、今また、新たな「ライバル」が登場した…。それは、北京政権国だ…。
 これまた、核保有大国なので、「全面戦争」するわけにはいかない…。
 しかも、「人口大国」で、「グローバル経済」に組み込めば、「大きな市場」となる可能性があり、積極的に「育成」すらした節(ふし)がある…。さらに、「低賃金労働者」の「宝庫」だったから、「利」のために積極的に利用した節(ふし)がある…。
 それで、「グローバル・サプライチェーン」に組み込まれて、「アメーバ状に」市場経済の中に浸透した…。

6、しかし、そういう北京政権国がもたらす「利」と、それによってもたらされる「害」とを、利益考量した場合に、最近「価値判定」に従前までとは違う判断がなされた気配がある…(そこに、どういう利益考量がなされたのか、その考量の判断の「要素」は何だったのか、は知らない…)。

7、そういうことで、最近、「アメリカの世界戦略」に大きな「戦略変更」があった気配がある…。

8、アメリカ自体が置かれている状況は、二次大戦直後とは大きく違っている…。ソ連と冷戦を戦っていた時とも、大きく違っている…。

 ライバル国である北京政権国も、ソ連とは違った形の挑戦者だ…。
 
 自陣営の「経済体制」に、アメーバ状に食い込んでいるし、「IT大国」で、それを利用した「大衆の心理操作」に長けている…。「人間の欲望」を深く理解しており、「欲望を突いての操り」に長けている…。軍事力で圧倒して勝利する…、というタイプのライバルでは無い…。

9、しかし、それでも、まずやるべきことは、「圧倒的な軍事力」を構築して、隙を作らないことだ…。

10、それも、なるべく「リソース」を節約して、浮いた「リソース(人員、予算、設備)」を、「異なるタイプの戦い」につぎ込む必要がある…。

11、それには、旧来からの「同盟関係」も、惰性で継続するのでなく、根本から見直し、「リソース」の配分を組み替える必要がある…。

12、そのためには、提供されている「世界秩序」に見合っただけの「負担分担」を、請求していく必要がある…。
 特に、日本国の場合は、「防衛費」の増額だけでなく、「アメリカの世界戦略」に、応分の負担ができるような、「国家体制の変更」までも要求していく必要がある…。

 まあ、以上のような話しだろう…。

『「アメリカの同盟国数カ国を、友人リストから外す時が来た」。

こんな刺激的なタイトルの論説が、今年の8月にアメリカで発表された。

中では、アメリカの同盟国10カ国を、次から次へとバッサバッサと切り倒しているのだが、なんと日本は「トリ」を務めるという、大変名誉な地位(?)を担っている。

著者はダグ・バンドウ氏という、首都ワシントンD.C.にあるケイトー研究所というシンクタンクの研究員である(「カトー研究所」とも呼ばれる)。

ケイトー研究所は、2018年の調査では、アメリカで第10位、世界で第15位に入るシンクタンクである。

このランキングは『2017 Global Go To Think Tank Index Report』によるものだ。ペンシルバニア大学の「シンクタンクと市民社会プログラム」が発表した。

日本語では8月12日に、韓国の『中央日報』日本語版が報じていたので、見た読者もいるのではないか。

記事タイトルは「米シンクタンク研究員『もう日本との親善断つべき時』」という、更に刺激的なものだった。

ここでは、以下のように書かれていた。

米シンクタンク、ケイトー研究所のダグ・バンドウ専任研究員はホームページに「同盟国との問題:数カ国と友人関係を断つ時」という報告書を通じ、日本、フィリピン、スペイン、イタリア、ドイツ、エジプト、サウジアラビア、トルコなどとの同盟を断ち、米国の国益に合致する同盟を結ぶべきと主張した。

バンドウ専任研究員は日本に対して「いまや日本との親善を断つべき時」とした。彼は「日本はきれいで謙虚で良い国」としながらも、「中国と北朝鮮が軍事的に活発になったが日本は『平和憲法』の裏に隠れ続けている」とした。世界3位の経済大国である日本の国防費はGDPの1%水準にとどまっているとし、「第2次大戦は終わり、日本は回復し、民主主義は深く根を下ろした」とした。

出典:中央日報日本語版サイトより。
米中関係が緊張を増すなかで、このようなことを言うダグ・バンドウ氏の真意は何なのか。このような記事を発表する「ケイトー研究所」とは、どういうシンクタンクなのか。

抜粋して記事を書く予定だったのだが、あまりにも面白い論説なので、長いが全文を訳して掲載することにする。

「アメリカ様」に頼っているのは、日本だけではないことがよくわかる。読んでいて苦笑の連続だった(笑っている場合ではないのだが)。

※以下の訳文で、太字と小見出しは筆者がつけた。

「同盟国の問題:同盟国数カ国を、友人リストから外す時が来た」
The Problem with Allies: It’s Time to Unfriend a Few Countries

著者 ダグ・バンドウ

初出:2020年8月8日 アメリカン・スペクテーター(オンライン)

ケイトー研究所HP。バンドウ氏を紹介するページ
アメリカの多くの同盟は、正式なものでも非公式なものでも、一つの目的を果たすことになっている。

それは、米国の安全保障を強化するということだ。同盟は手段であり目的ではない。効果として他国を守ることになるかもしれないが、究極の目的は、アメリカをより安全にすることであるべきだ。

しかし、ワシントンの当局者たちは、軍事パートナーをフェイスブックの友達のように扱うようになっており、人気があると自慢する権利を際限なく積み重ねていっている。

この場合、アメリカ人は簡単に勝利を主張することができる。近年、アメリカはモンテネグロと北マケドニアを北大西洋条約機構(NATO)に加えた。次はグランド・フェンウィック大公国か?(訳注:有名小説に出てくる架空の欧州の王国)。それは世界の友好度を競う「くじ」において、アメリカに圧倒的なリードをもたらすだろう。

実際に今は、苦しいプロセスを始めるには、良い時期だろう。役に立たない、あるいは逆効果の同盟国との友好関係を解消するためのプロセスだ。

彼らを敵のように扱うという意味ではない。ただ、彼らの健勝を願い、自分の問題には自分で責任を持ち始めるようにしてもらうだけだ。例えば、自分の身は自分で守ることなど。

アンクル・サムがいつまでもソフトタッチで、国庫のドアを大きく開けて、軍隊を送る準備ができていると期待するのではなく(訳注:アンクル・サムとはアメリカを擬人化した男性キャラクターのこと)。

真っ先に外したいサウジアラビア
ワシントンは、サウジアラビア王国から始めるべきだ。

共産主義は悪だが、少なくとも理論的には魅力がある。今日、絶対君主制よりも愚かな統治形態があるだろうか? 

しかし、数千人のサウジアラビアの王子たちは、個人的な楽しみのために、国の資源を略奪しているのだ。イスラム教の聖地を維持するために献身している、高潔な禁欲主義者のふりをしながらである。

権力を維持するために、アメリカを含む世界中で原理主義的なワッハーブ派の教えを支持し、キリスト教徒やユダヤ教徒、その他の宗教的少数者を悪魔とみなしているのだ。

皇太子のムハンマド・ビン・サルマーン氏は、砂漠の中にある都市国家の集合体のようなものを事実上支配しており、ヨットやフランスのシャトー(城)、レンブラントの絵画などで散財をしながら、エリート富裕層に自由のための身代金の支払いを強要したことで知られている。

サウジアラビア王国は、残忍なほどに抑圧的な国で、政治的な反対意見や宗教的な多様性は一切認めていない。

この王国はイランよりもはるかに悪い国である。イランは、不公平だが結果が出ないわけではない選挙を行っており、迫害の危険はあるものの、キリスト教徒やその他の宗教的少数派の信仰を認めている。

サウジアラビアの独裁者として知られる皇太子は、どちらも許さない。実際、彼は政治的抑圧を強化し、ブログの書き手やその他の人々が、黙秘して、自分の支配を永遠に称賛することを行わないというだけの理由で逮捕している。

アメリカの安全保障にとってさらに悪いことに、彼は傲慢で、愚かで、無謀である。

彼はイエメンを侵略した。イエメンは何十年にもわたって戦争状態にあり、内紛の最新ラウンドを、イランを巻き込んだ宗派戦争に変えてしまった。

皇太子はレバノンの首相を誘拐し、シリアではジハード主義(訳注:アルカイダやイスラーム国の思想的拠り所とされる)の反乱軍を支援し、リビアでは内戦資金を提供し、カタールを操り人形の国にしようとし、エジプトでは残忍な弾圧に助成金を出した。

サウジアラビアの首都リヤドは、もはやかつてのように重要ではない。エネルギーの影響力は弱まっており、是が非でも自国民が守るような種類の社会を創る必要がある。事実上の傭兵として米兵を雇うことを永遠に期待するのではなく。

米大統領がこのような卑劣な政権を無批判に受け入れるという光景は、ワシントンの評判と世界的な信頼性を損なっている。

利益ゼロのモンテネグロ
モンテネグロは、素晴らしい観光地であり、映画の舞台でもある(訳注:ジェームズ・ボンドの『007 カジノ・ロワイヤル』が有名)。

しかし米当局者達は、この切手の国をNATOに迎え入れたとき、好かれようと必死になった。

フリーダムハウスの「一部が自由」の評価付けの説明によると、以下のとおりである。

「モンテネグロでは多数の政党が政権を目指して争っているが、野党は分断されており、その指導者達は頻繁に嫌がらせを受けている。そして政権党である社会民主党(Democratic Party of Socialists)は、1991年から政権を握っている。汚職は、深刻な問題である。調査するジャーナリストや、政府に批判的なジャーナリストは、多くの非政府組織(NGO)と同様に、圧力に直面している」

もっと重要なのは、首都ポドゴリツァは、地政学的に無関係である。NATOにモンテネグロを加えて、アメリカの防衛上のコミットメントは拡大されたが、それに伴う利益は何もない。

モンテネグロは今年、6,500万ドルすべてを軍事に費やすことになるが、これはペンタゴン(米国防総省)にとっては丸め誤差によるエラーであり、すべての支出を説明することはできないと認めている。

モンテネグロの人口は、米国議会選挙区の一つよりも人口が少なくて、2350人の男性が武装している。その広大な装甲部隊は、8隻の装甲兵員輸送車で構成されている。海軍は350人の水兵と、5隻の巡視船を配備しており、アドリア海を手の内で良好な状態に保っている。

空軍は飛行しない航空機を数機、飛行すると思われるヘリコプターをパン屋の1ダース保有している(訳注:パン屋の1ダースとは13のこと。よく一つおまけしてくれることから)。少なくともモンテネグロをNATOに加盟させたことは、別の文学的風刺の構造を生みだした。

外国の脅威など感じていないドイツ人
対照的に、ドイツはリアルな国である。

実際、ヨーロッパ最大の経済規模と、(ロシアを除いて)最大の人口を持っている。明らかに歴史はベルリンに重くのしかかっているが、それは自国やヨーロッパの防衛に貢献することを避けるための、使い尽くした言い訳になっている。

6年前、ドイツは、2024年までにGDPの2%を軍事費に充てることを約束した他のNATO加盟国に加わることになった。これは恣意的な基準ではあるが、少なくとも防衛へのコミットメントを示している。

昨年のドイツは1.38%だった。30カ国中17位という真ん中あたりの位置にあるが、絶対的な不足額は、他のどのNATO加盟国よりも大きい。

同時に、ドイツ軍の実際の準備態勢は、モンテネグロと似たり寄ったりの可能性がある。連邦議会の軍事コミッショナーのハンス=ペーター・バルテルス氏はかつて、「人員も物資も不足しており、時に不足の上の不足に直面することがある」と訴えたことがある。

しかし、はるかに有名なアンゲラ・メルケル首相は、ドイツのコンプライアンスを2030年まで先送りにした。軍隊への支出がそのレベルに達することはないだろう。メルケル首相はあと数年で退陣するだろうから、彼女の公約は無意味である。

さらに悪いことに、彼女はキリスト教民主同盟(訳注:メルケル首相が属する政党で中道右派)を、(大連立を組んでいる中道左派政党の)社会民主党ライトに変えてしまった。次の政権は緑の党が率いることになるかもしれない。

最後に、外国の脅威から身を守る必要があると考えているドイツ人は、ほとんどいない。

ドナルド・トランプ大統領が、在ドイツ米軍を縮小するという計画に対する彼らの最大の不満は、経済的なものだ。シュトゥットガルトの市長は「この街はアメリカ人の消費力を失ってしまう」と嘆いていた。ヴィルゼックの市長は、失われる雇用を列挙した。ワシントンの政策立案者は、米国の利益に焦点を当てるべきなのだ。

歴史的に、ドイツはしばしば名前だけで同盟国を選び、効果的な軍隊は言うに及ばず、軍隊を配備することもできない瀕死状態の国家を選んだのだった。第一次世界大戦ではオーストリア・ハンガリー、第二次世界大戦ではイタリア。

今日のアメリカにとっては、フィリピンがそうである。マニラは半失敗状態(国)であり、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領によって、さらに危険性が増している。

去って嬉しいフィリピン大統領
ドゥテルテ大統領は、フィリピンで選出された大統領の中で、最もこれ見よがしに反米的な大統領である。

アメリカがかつて残忍にフィリピンを植民地化し、先住民の独立運動を抑圧しながら、20万人の民間人を死なせたことを、しばしば思い出させる。おそらくこのことは、麻薬使用者や麻薬の売人に対する無法な暴力や超法規的な殺人を奨励している彼の、悪い人権の記録を説明しているのだろう。

フリーダムハウスは、この国は「部分的にしか自由ではない」と判断している。「法の支配と司法の適用は行き当たりばったりで、政治的・経済的エリートに大きく有利になっている」と指摘し、「活動家やジャーナリストに対する凶悪犯罪には、依然として免責が常態化している」と指摘している。

米国の安全保障にとってさらに悪いのは、彼の一貫性のなさである。彼は大統領就任早々に中国に突進してゆき、フィリピン国家のアメリカからの「分離」を宣言した。後になって、中国の代償は高すぎると認めたのだった。

ドゥテルテ氏は、政治的同盟国へのビザの拒否に、腹を立てた(訳注:比大統領の側近、デラロサ上院議員のアメリカ入国ビザを、米政府が拒否したことを指すのだろう。この上院議員は、超法規的殺人を含む、強硬な麻薬犯罪関連対策を国家警察長官として推進してきたという)。

そして大統領は今年初めに、両国間の軍事協力を規定している「訪問米軍に関する地位協定」の破棄を通知したと発表した。しかし、今から数週間前、彼は心変わりした。

昨年、中国の船がフィリピンの漁船に衝突してゆき、沈没させた。残念ながら、ドゥテルテ大統領と前任者たちは、北京ではなくモンテネグロとの戦いに適した海軍を作っていた。フィリピン海軍の旗艦は、半世紀前のアメリカ沿岸警備隊の不要品である。

どの艦隊も、上海を封鎖して報復しようとはしなかった。そこで彼はトランプ政権に戦争に行くように要求した。「私は今、アメリカに呼びかけている。私は『訪問米軍に関する地位協定』を引き合いに出している。アメリカは、第7艦隊を中国の前に集結させてほしい。私は今、彼らに求めているところである」。

しかし、それだけではなかった。「彼らが南シナ海に入る時、私は入る。私は最初にそこに行く第7艦隊に同乗する。それから私はアメリカ人に『OK、すべてを爆撃しよう』と告げるだろう」

トランプ大統領は、ドゥテルテ大統領の戦争招致を拒否した。これでアメリカが必要とする友人が一人減った。

私欲しか興味がないエジプト支配層
ワシントンは、エジプトにも言うべきである。立ち去れ! 

この中東の国は、かつて米国にとって重要だった。しかし、アラブ世界での主導的役割を失った。カイロの指導者が何を言おうと、もはや誰にとっても重要ではない。

さらに、政権は、かつてイスラエルにとって脅威であったイデオロギー的な焦点と、目的の真剣さの両方を放棄してしまった。今日、政治的支配をしながら経済をコントロールする軍の将校階級は、ほとんど自己肥大にしか興味がない。

将軍から大統領に転身したアブドルファッターフ・アッ=シーシーは、前大統領ホスニー・ムバーラクが誇りに思うような権威主義国家を作り上げた。

自由主義者からムスリム同胞団のメンバーまで、何万人もの人々が、抗議からアッ=シーシーの権威主義的な統治を単に批判することまで、あらゆる理由で逮捕されている。正義は嘲笑に過ぎず、死刑が一括して言い渡される。

検閲は着実に厳しくなっており、アッ=シーシーは、政府の多くの犯罪に少しでも光を当てようとする独立したNGOさえも閉鎖した。社会的な安全弁なしで、民衆の爆発への圧力は高まるばかりだ。

そしてエジプトの刑務所は、ムバラクの刑務所以上に、イスラム過激主義の孵卵器となっている。

ロシアと仲良しのトルコ
NATOの家事(維持管理)は、トルコでは継続すべきである。

トルコは強力な軍事力を保有しているが、欧州にとって唯一もっともらしい深刻な脅威であるロシアよりも、同盟国の仲間であるギリシャや、EU加盟国のキプロスに対してその軍事力を行使する可能性が高い。実際、トルコの船は最近、リビアへの武器禁輸の実施を求めているフランスとギリシャの船と対峙した。トルコは禁輸を甚だしく破っていたのだ。

トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンは、いかなる批判も拒絶しているが、『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、「一部のNATO大使は、トルコは現在、グループの民主的価値観と集団的防衛に対して、公然と挑戦をしていると考えている」という。

かつて世俗国家(政教分離国家)であったトルコ共和国は、長い間、二つの重要な役割を果たすと考えられていた。一つは、ヨーロッパ南東部の前線であるモスクワを封じ込め、特にソ連・ロシアの黒海艦隊を封鎖すること。もう一つは、中東への橋渡し役として、穏健なイスラム民主主義を現実に示すことであった。両方の機能は今では駄目になってしまっている。

2015年、トルコ軍がシリアで活動していたロシア機を撃墜した際に、プーチン大統領と一時的に衝突した後、エルドアン大統領は対立から撤退し、モスクワと親密な関係を築いた。シリアのアサド政権の将来を巡って意見が分かれているにもかかわらず、両政府は軍事的対立を回避して、発生した事件を解決するために協力してきた。

アンカラはまた、ロシアのS-400対空システムの購入を決定した。このことは、米国がトルコにF-35を販売する予定がキャンセルとなり、トルコによる共同生産作業を中止する原因となった。NATOの誰一人として、ロシアとの戦争になったらトルコが参加するとは信じていない。

さらに、エルドアン氏の初期のリベラルなアプローチは、政治的なおとり商法であったように見える。

首相になり、後に大統領になる前に、彼は民主主義とは列車のようなものだと言った。つまり、目的地に着けば降りるということだ。彼は何年も前に降りた。唯一の未知のことは、2023年の再選を確実にするために、彼がどのような権威主義的な戦術を使うかということだ。

フリーダムハウスは、トルコを「自由ではない」と評価している。「最初に自由化の改革を行った後、エルドアン政府は、政治的権利と市民の自由をどんどん軽蔑するようになった。そしてその権威主義的な性質は、2016年のクーデター未遂の後に完全に強化された。統治への反対者が明確にわかると、劇的な弾圧を行ったのだ。2017年に採択された憲法改正により、権力は大統領の手に集中した」。

それ以来、何万人もの人々が投獄され、仕事を解雇された。多くの人々は、エルドアンと彼の熱烈な支持者の心の中だけで明らかになっている、広大で幻想的な陰謀の一部であると非難されている。

タダ乗り欧州代表、スペイン
スペインは、はるかに快適で、民主的で、発展した国だ。

しかし、スペインは、ヨーロッパがアメリカに国防をタダ乗り、あるいは少なくとも安価乗りしている問題をよく示している。

マドリッドの軍事費はここ数年変動しており、2019年にはGDPのわずか0.92%を占めただけで、5年前と変わらない。国防費は1ドル当たり1ペニーさえも使っていない!(訳注:1ペニーは1セントのこと。1ドル=100セント/ペニー。つまり「100円に対して1円すら使っていない」という意味)。

スペインの軍隊は十分に訓練され供給されているが、国が貢献できる能力と比較すると小さすぎる。

スペインは、EU27加盟国の中で、5番目に大きな経済をもっている(訳注:GDPを見るならEU27の場合4番目だと思うのだが。イギリスを入れたEU28なら5番目。何の指標が基準なのだろうか)。ヨーロッパの5大経済大国のうち、ドイツ、イタリア、スペインの3カ国は、国防上の重要な役割を果たすことにほとんど関心を示していない。

もちろん、それは彼らの選択である。しかし、欧州の最も重要な経済大国が責任を負わないのであれば、ヨーロッパはどうやって自衛するのだろうか? 

ワシントンは彼らをカバーするべきではないし、彼らは、言葉の深刻な意味における同盟国であるというふりをするべきではない。

ジョージアはNATOに入るな
ジョージ・W・ブッシュ政権は、ジョージアの大統領がミハイル・サアカシュヴィリであった時、その国に夢中になっているように見えた(訳注:同大統領は米コロンビア大学やワシントン大学で学業経験をもつ。当時日本では、国名は「グルジア」と呼ばれていた)。

ワシントンに熱狂的なファンがいたにもかかわらず、彼の人権記録は、望まれるべきものを残した。ロシアと戦争をして、アメリカを紛争に引きずり込みたかった彼の願望もそうだった。

ジョージアは、まさにNATOに入るべきではない種類の国である。米国の安全保障にとって重要ではない。ソビエト連邦と帝国ロシアの一部として、モスクワと歴史的なつながりがある。予測できない、無責任な指導者たち。モスクワとの未解決の紛争。

プーチン大統領は、アブハジアと南オセチア(原注:長い間ジョージアの支配に抵抗していた小さな領土)を支援することで、ジョージアからの分離を助けるために自らの役割を果たした。

欧州のオブザーバーは、ジョージアが2008年8月にロシア軍がいる領土を標的にして、銃撃を始めたと断言している。

(訳注:このロシアとジョージアの国境にある領土に起こった紛争は、「8月戦争」とも呼ばれる。一般的に信じられている話は、次のようなものだ。「元ソ連だったジョージアは、民主化してロシアから離れようとした。ロシアは怒り、領土問題が存在する場所に戦争をしかけてきた。大国ロシアに攻撃されてしまったこの小さな国は、アメリカに救いを求めた」。しかし著者は「違う、そうではない」と言いたいのである)。

国際監視員を務める英国兵ライアン・グリスト氏は、「ジョージアの攻撃は完全に無差別だった。ロシアの挑発行為に対して、もしそれが本当にあったとしても、不釣り合いだったことは、私には明らかだった」と述べた。

攻撃は十分に計画されていた。当時、ドイツの『Der Spiegel』誌は、「NATOの将校たちは、ジョージアの攻撃は、南オセチアのポジションに対して計算されたものであると考えていた。地上における事実をつくるためである」と報じていた。

サアカシュヴィリ自身の当局者たちは、米国の支援を期待していると断言した。彼はCNNに出演して訴えた。「これはもうジョージアのことではない。アメリカのことだ、アメリカの価値観のことだ。我々は自由を愛する国民であり、今まさに攻撃を受けている」と訴えた。「だから、核戦争を始めて私を救済しなさい!」と。

ジョージアの人々に同情するのには、もっともな理由がある。しかし、アメリカ人はジョージアのケンカをアメリカのケンカにして、自分たちの未来を危険にさらすべきではない。

そして、大トリの日本
最後に、日本を友達リストから削除する時だ。

(訳注:ここでは「defriend」という動詞が使われている。SNSの友人リストから友人を削除する時に使うネット用語)。

もちろん日本は素晴らしい国だ。豊かで、清潔で、礼儀正しく、複雑で、異なっていて、興味深い。しかしながら、中国と北朝鮮が軍事的に活発になっても、日本は「平和憲法」の陰に隠れ続けている。

真実を言えば、北朝鮮も中国も、アメリカの安全保障を直接脅かしてはいない。彼らはアメリカを攻撃することには興味がない。太平洋にあるアメリカの(訳注:島々の)領有権を奪うことにも興味がない。

彼らの目は東アジアに据えられている。北朝鮮は韓国と、ワシントンが入ってくる可能性を心配している。中国はモンロー・ドクトリンの中国バージョンを実施し、アメリカを領土問題やその他の紛争に巻き込まないようにしたいと考えている。

アメリカの同盟国は、アメリカが核武装勢力と戦争をすることを期待するのではなく、自国を守るために、自国のできることをすべて行うべきである。

日本は、世界第3位の経済大国であり、明らかに軍事的にもっと多くのことをする余裕がある。日本の防衛費は、何年にもわたってGDPの1%を超えてきた。最近では、そのレベルにすら達していない。このわずかな量で、長年にわたって本格的な軍隊の創設を可能にしてきたのだ。

しかし、もし東京が本当に北京を恐れるのであれば、ーー北京は尖閣諸島・釣魚島を領有し、第二次世界大戦中に日本の略奪によって生み出された憎しみをほとんど捨てていないーー、日本人は1ドルに対して1ペニー以上の貢献を進んで行うべきだ。

彼らがそうしないという事実は、恥知らずな同盟国の安価乗りの、もう一つの例である。北マケドニアのような地政学的に無効な国が、約束の支出をするかどうかは、重要ではない。しかし、日本は、太平洋における同盟国の防衛の基礎であるべきだ。

第二次世界大戦は終わった。日本は復興した。民主主義は深く根付いている。フィリピンのようなかつての敵は、日本にもっと行うように促している。アメリカはタダ乗りする人をもう一人、友人として必要とはしていない。

アメリカが利益を得るのは、他の国々と共に協力する時であるが、それは安全保障上の脅威に立ち向かい、他の共通の目的を促進するためである。

しかし、正式な同盟とは、この目的を達成するための手段であって、同盟そのものが目的ではないのだと捉えなくてはならない。目的を達成するために、アメリカ人は自分の安全を犠牲にするのだ。

同盟国、パートナー、友好国、呼び方はなんであれ、このような国家が、米国の利益を推し進めることをやめたとき、それは変化のときなのだ。もはや自分の役割を果たさなくなった同盟国を友達リストから削除するといったように。

(論説終わり)

ワシントンD.C.にあるケイトー研究所。Wikipediaより
なぜこのような主張をするのか
読んでみて、いかがだっただろうか。

同盟国メッタ切りであるが、この著者の言うことには真理のトゲがある。

現実には大変複雑な状況を単純化しすぎている感は否めないが、それでも鋭い。

日本人から見ると、中国に対する脅威が感じられないのが不思議である。「脅威を感じるなら、自分で防衛しろ」と怒られそうだが、現在の米中対立は、世界の覇権をめぐる争いであり、米ソ対立のようにイデオロギーの対立でもあるはずだ。

なぜこれほど、中国を無視できるのだろうか。

このケイトー研究所の思想的な立ち位置に、大いに関係がありそうだ。

完全自由主義者たち
著者バンドウ氏が属する「ケイトー研究所」というシンクタンクは、ほぼ「完全自由主義」の思想的立場にある。

フランス語版のウィキペディアが見事にまとまっているので、引用したい(フランスは本当に思想に強い)。

ケイトー研究所は、その規約の中で、「個人の自由、政府の縮小、経済的自由、平和」を擁護する政策を提唱していると発表しています。

その中で民営化を求めているのが、航空宇宙局、米国郵政公社、公共テレビ、社会保障、運輸保安局、公共交通機関などです。また、廃止を求めているのは、最低賃金、反トラスト法、アファーマティブ・アクション(訳注:差別撤廃のための優遇政策。人種等で人数割り当てを行う)、福祉国家、関税障壁などです。

非介入主義的な外交政策を支持しており、ジョージ・W・ブッシュのイラク侵攻、バラク・オバマのリビアへの介入、イエメン紛争への米国の関与を批判しています。

最近では、トランプ大統領が望む「イスラム教徒入国禁止令」を強く批判しています。

こういった思想は「リバタリアニズム(完全自由主義)」と呼ばれる。ケイトー研究所は、よくこの立場を擁護しているということだ。

しかし、個人の自由がそれほど大事なら、経済活動に国家統制をはかる中国など、天敵中の天敵なのではないのだろうか。国家資本主義で対抗してくる中国に対して、そんなにのん気で良いのだろうか。

おそらく「中国の国家資本主義経済などは、『見えざる手(アダム・スミス)』によって、勝手に自滅するだろう」、だから「軍事的脅威さえなければ、ほっておけばいいのだ」くらいにしか思っていないのではないかーー実際に、それだけの強さがアメリカにはあるかもしれないが。

個人の自由が大事なのに、アメリカの国益を中心に据えるところは、思想的にはご都合主義的ではある。でも、だから現実の政治の世界において、バンドウ氏は注目されるのかもしれない。

米共和党に対する影響
ケイトー研究所のリバタリアン主義は、共和党内にある保守主義の運動の流れに関連があると言われる。

影響を受けた有名な人物は、ロナルド・レーガン元大統領である。バンドウ氏は、レーガン政権では大統領特別補佐官として勤務していた。

レーガンを支持した保守層の源流となっている人物では、バリー・ゴールドウォーターが有名である。彼は1964年の大統領選で、共和党の正式候補者だった人物だ。ジョンソン民主党候補者に大敗して、大統領にはなれなかった。

トランプ大統領は、防衛費の分担金として、年間約80億ドル(約8500億円)の負担を求めていると、日本政府高官に伝えたという。トランプ大統領は、同じ共和党大統領として、レーガン大統領の流れをくんでいると言えるかもしれない。

日本に対して「第二次大戦なんて、とっくの昔に終わった。軍事はどうぞ自分のお金でやってください。軍事大国になっても構いません」と聞こえる意見を言うアメリカ人は、こういう思想的立ち位置にいるケースがあるのだと、覚えておいて損はないだろう。

どうする、日本人
日本の国防問題となると、「アメリカが憲法を押し付けたくせに」という日本人は、相当数いる。

しかし筆者は、もし日本の市民が憲法の改定を望み、民主的手続きを踏んだ決定をするのなら、アメリカが一丸となって国家権力でつぶしにかかることはないだろうと思っている。

戦後75年も経っているし、アメリカは民主主義国だからだ。

公にはなっていない秘密の軍事協定等はあるのかもしれないが、アメリカ内にだって様々な意見があるのだから、障壁はあったとしても外交努力で、日本市民の意志を実現できないことはないと思う。

論説の著者ダグ・バンドウ氏は、多数派日本人の「アメリカに軍事は任せておこう。寄らば大樹の陰だし、言うことを聞いてさえいれば、経済繁栄を享受できるんだから」という、心の底の本音を見抜いているようだ。

21世紀になり、平成時代も終わり令和となって、「アメリカが押し付けた憲法」と言うのは、思考停止ではないだろうか。

米中の緊張が高まる中、日本に最も迫られているのは、「自分の国の軍事をどうしたいか」という当たり前の問いなのではないだろうか。

追伸:韓国について
長くなったが、最後にこの論説の報道をした、韓国『中央日報』の記事に触れておきたい。

『中央日報』は、日本経済新聞と友好関係にある新聞社だと言えば、カラーが伝わるだろうか。

本記事の最初に述べたように、『もう日本との親善断つべき時』という誤解を招きそうなタイトルをつけながらも、なぜこの論説に注目したのだろうか。

言外に「韓国は同盟国なのに、名前すら出ていない」「アメリカの中に、日本が再度軍事大国化しても構わないという意見がある」ことを指摘しているのではないだろうか。

米中の緊張が高まる中、韓国人の間には、朝鮮半島が再度戦争の舞台になってしまうのではないかという、漠とした恐怖が現れ始めていると感じる。

その中で、常にアメリカに忠実な日本ですら友達を切られてしまうかもしれないのに、GSOMIA問題などでアメリカに反抗した韓国は一体どうなってしまうのか、論説では視界にすら入っていない、見放されてしまうのか、という恐怖があるのではないか。

さらにもう一つ重要なこと、それは隣国日本が、軍事大国になってしまうのではないかという恐怖である(このことは、最近の韓国の異常ともいえる反日を、一部説明してくれるかもしれない)。

筆者は、韓国人識者の「怖い」という思いが、この論説に注目させたのではないかと想像している。』