コンビニに明日はあるか 大手3社トップインタビュー

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62778500Y0A810C2H11A00/

『日本に誕生して約半世紀、コンビニエンスストアがもがいている。コロナ下で変容する消費への対応が遅れ、売り上げは低迷。もともと24時間営業など事業モデルの制度疲労が起きていただけに、衰退論もささやかれる。来年以降は大量のフランチャイズチェーン(FC)加盟店が契約更新期を迎え、閉店を決める店主が増える可能性も。コンビニはどう生きるのか。セブン―イレブン・ジャパンの永松文彦社長、ファミリーマートの沢田貴司社長、ローソンの竹増貞信社長にそれぞれ聞いた。

■「ビール届ける便利さ磨く」セブン永松氏
――コロナによる戦略や消費動向の変化は。

「コロナ下では(消費者宅に届ける)『ラストワンマイル』が非常に重要だ。テスト段階だが注文品の受け取りロッカーを店頭に置いたり、店から自宅に届けたりする取り組みを強化する。そもそも自宅やオフィスから歩いて数分の場所にあるコンビニは、ラストワンマイルの拠点そのものだ。例えば自宅の冷蔵庫のビールがなくなったら、スマートフォンで最寄りのコンビニにさっと注文できれば便利だ。他のネット通販と比べても短時間で商品を届けたい」

永松文彦 セブンーイレブン・ジャパン社長

「商品面ではお得感のある『セブンプレミアム』と、少し良いモノの『セブンプレミアムゴールド』を前面に出し、健康関連も増やしている。また内食需要を受けて、冷えた酒類を総菜コーナーなどの横に置く新レイアウトを9月から8千店で導入していく」

――画一的な店舗から、個店の特徴を磨く施策を打ち出している。

「47年前の創業時は、コンビニを日本に根づかせるためにワンフォーマットの徹底が必要だった。だが2万店となると、店舗間で客単価に2倍もの差が出てくる。例えば北海道北見市は周囲に店が少なく、米や大容量の酒など1回の購入量が多い。明確になった違いを理解して品ぞろえするため、春から立地別のレイアウトを提案している」

【関連記事】
セブン、人事評価で脱「売上至上」 店舗支援3300人
コンビニ3社、都内で共同配送の実証実験 8月
コンビニ、レジ袋派が4割 有料化で店頭500人超調査

「この実現を目指し、本部の人事評価制度も変えた。オーナーとの情報共有をより密にし、店の本質的な部分を改革していきたい。目先の数字も大事だが、長期的なスパンで仕事のプロセス部分を重視する。本部も個々の加盟店が目指すビジョンを共有して進む方向に変わっていく」

――昨年から24時間営業ではない時短営業を希望する店が増えた。現況と見通しは。

「時短営業店は1日時点で560店。ただ時短のテスト運用を含めても時短営業の店は横ばいで、24時間に戻す店舗も増加傾向にある。コロナ下では近くの店で短時間に買い物を済ませたい消費者が増え、コンビニの利便性があらためて見直された。店舗により差はあるが、パート・アルバイトの応募者数は倍増し、人手不足も解消しつつある」

――フランチャイズチェーン(FC)加盟店オーナーの高齢化も進む。

「開業後15年たったオーナーが契約更新する割合は92%に達し、30年たつオーナーも同じ水準だ。加盟店が安心して経営に専念できるよう努力を続けなくてはいけない。ロイヤルティー(経営指導料)の見直しや省人化設備の導入、エシカルプロジェクト(販売期限間近の商品にポイント付与)などを実施した。足元で不良品の削減額は人件費の上昇を上回り、5%の利益増につながっている」

■「不振の加盟店は直営化で再生」ファミマ沢田社長
――大手3社で4月以降の売り上げの落ち込みが最も大きい。対策は。

「売り場を作り直す。ニーズに合った売れるものを、売れる場所に陳列する。チェーン展開のなかで、ある程度のパターンは必要だった。だがワンパターンの時代は終わった。きめ細かくニーズに対応しないといけない。住宅地では冷凍食品、日用品、野菜のボリュームを増やしていく」

沢田貴司 ファミリーマート社長

「社員にはここまで落ちたのだから、(できることを)やり尽くせと発破をかけている。チャレンジできる組織になってきた。新しいプロジェクトを社内で公募すると、若手から手が上がってくる。失敗はオーケーな会社にしたい」

――6月に時短営業を本格的に始めた。

「24時間営業が是か非かという議論は乱暴だが、加盟店の意見を聞いてよかった。見えてきた傾向は全て加盟店に伝え、24時間を続けるかどうかを判断してもらう姿勢はこれからも変えない。ただ、あらゆる判断を加盟店だけに委ねることは間違いだと思っている」

「24時間営業が問題となった大きな理由は、人手不足だった。コロナ下でパート・アルバイトの応募が増え、人手不足は解消されている。6月に時短営業を始めた約790店のうち100店弱は、24時間営業に戻した。長期的には、経済や雇用の動向次第だ」

――夜間の外出を控える動きも強くなっている。24時間営業は必要か。

「必要だ。ワクチンができれば消費者の行動はまた戻る。コロナ後を見据えた柔軟性が大事だ」

――高齢化に伴うFC加盟店オーナーの事業承継をどうするか。

「販売不振で経営を断念した店などを立て直す『店舗再生本部』を設けた。後継者がいない場合にもこの枠組みでいったん本部が経営を引き継いで直営化する。社員が入って店を作り直し、またFCに戻す仕組みだ」

「事業承継は間違いなく今ある課題だ。ただコンビニのビジネスモデルはおもしろい。個人事業主が稼げるモデルをもっと伸ばしていきたい」

――コロナで消費者はどう変わったか。

「お客さんの動きが大きく変わった。ドル箱だった都市部に人が出てこなくなり、売り上げが極端に減った。住宅地の店舗は巣ごもり需要で客数が増え、客単価も上がっている。構造改革などを進めていた影響もあり、コロナ対策に手を打つのが遅れ、ボディーブローで効いている」

■「古い規制はデジタル化の重荷」ローソン竹増氏
――「個店主義」を掲げている。どんな店作りを目指すのか。

「どこへ行っても同じ品ぞろえのコンビニでは選ばれない時代だ。目指すのは『マイクロローカライズ』。例えば、農家に取れたての野菜を店に持ってきてもらい店頭で販売する。その野菜を使って店内厨房で弁当や総菜をつくる。ここまでやって初めて新しい地域密着型のコンビニになれる。店舗がコミュニティーの一部となり、地域で必要とされているものがわかる好循環につなげたい」

竹増貞信 ローソン社長

「デジタル化とローカライズの両立がカギになる。看板は同じローソンでも、オーナーによって全く違う店舗になる。本部はそのメニューを用意する。オーナーに『自分の店はこうしたい』と思ってもらえるようにならなければならない」

――デジタル化を進めるには課題も多い。

「古い規制がリアルの現場でデジタル化を止めてしまっている。今の仕組みでは、酒もたばこも無人で売れない。年齢確認を人がやることになっているからだ。現状で顔認証や静脈認証による年齢確認は技術的に可能となっている。ただ、制度が追いついていない。規制緩和を求めるというよりは、一緒に変化していくスタンスだ。デジタル化が進めば店舗のモデルはより多様化できる。レジのない『ローソンGO』のようなスピード重視の店も作れる」

――高齢化するFC加盟店オーナーの事業承継も課題だ。

「加盟店のオーナーには、複数店経営を推奨している。また社員や従業員に店舗を譲り、オーナーが対価を得るプランも用意している。親から子どもに引き継いでもらうなど、事業承継が始まっている例も数年前から増えてきた」

「加盟店のオーナーは仲間であり運命共同体。それぞれのオーナーで抱えている事情は異なっており、本部は一人ひとりのオーナーの悩みを聞くことに尽きる」

――24時間営業の見直しは。

「24時間営業ではない店舗のパッケージがあり、時短営業を検討する加盟店は相談してほしいというメッセージを出した。当初、40店舗ほどだった時短営業店は、約320店舗まで増えた」

「ただ、新型コロナの感染拡大で飲食業界などから労働力が流れ込んできた。昨年までと状況が一変し、人手不足はいったん緩和している。人手不足を理由に時短にしていたオーナーが24時間営業に戻して商売するという雰囲気がある」

■24時間営業なお焦点 同質化のジレンマ
「お客が来ないのに店を開ける意味はどこにあったのだろう」。西日本の住宅街にある1軒のコンビニ。2019年に午前0時から朝までの営業をやめたという、あるフランチャイズチェーン(FC)オーナーはため息をつく。それまで深夜から早朝にかけての来店客は「片手で数えるほどだった」。

深夜にコンビニで買うニーズは変化(2019年3月、都内)

時短営業に切り替えて、毎月の売り上げは5~8%落ちたが、いつ来るかわからない客を待って真夜中にレジカウンターで過ごすことはなくなった。今では「24時間営業は非効率でしかないという思いが強い」と話す。

昨年、国民的な議論を呼んだコンビニ24時間営業の見直し。今回3社トップは「従業員が集まるようになり、24時間営業しやすくなった」と口をそろえた。コンビニがコロナで働く場を失った人の雇用の受け皿になっている事実はある。

だが、24時間営業の問題は、人手不足が解消すれば解決されるものではない。コロナ下で夜間に外出する人が減るなど、消費行動や生活が大きく変化した。深夜にコンビニで買うニーズは減っている。十分な従業員を抱えていても夜間の売り上げが減れば、店舗の経営はいっそう成り立ちにくいのではないか。

もうひとつ今回トップ3人は、ともに全国一律の店舗モデルからの脱却を唱えた。地域の事情に応じて「個店」それぞれの魅力を高めようということであり、3社が同質化した競争から抜け出す意味もあるはずだ。

だがここで気になるのは個店経営を目指す戦略自体が「同質化」しているという皮肉だ。業界の同質化競争は想像以上に根強いようだ。それぞれファミリーマート、ローソンへの統治を強める伊藤忠商事、三菱商事は、こうした業界の悪弊から離脱する知恵を出せるかどうかが問われる。

「子どもにはバトンを渡せない」。九州地方の加盟店オーナーはこう話す。コンビニ大手は21年以降、大量の加盟店がFC契約の更新期を迎える。事業承継は今後の大きな課題になる。収益の源である加盟店をつなぎ留めるためにも、制度疲労による衰退論を退け、未来のコンビニ像を明確に示す必要がある。

(宮嶋梓帆、池下祐磨)』