米の対中警戒、「冷戦期のソ連以上」に

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『【ワシントン=中村亮】トランプ米政権が中国の脅威を「冷戦期のソ連以上」とみなして警戒している。中国は核兵器を含め大幅に軍備の拡張を続け、積極的な海洋進出も見せている。ソ連と異なり成長力も高く、強い経済を背景に今後も軍事力の増強が続く見通しだ。偶発的な衝突のリスクへの不安も出ている。

米国とロシアは17日からウィーンで核軍縮をめぐる高官級協議を開く。

これまでの米ロ核軍縮協議で、米国は中国が保有する核弾頭は現在の数百発から2020年代のうちに倍増以上になると訴えてきた。最新鋭のミサイルや戦略爆撃機の配備も踏まえ、中国を加えた核軍縮の枠組みが必要だと主張している。

同協議で米国の交渉責任者を務める国務省のマーシャル・ビリングスリー大統領特使(軍備管理担当)は14日、日本経済新聞のインタビューに応じた。中国の軍拡について「ロシアにとっても懸念のはずだ」と指摘し、中国に軍縮を促すようロシアに秋波を送った。

将来の核軍縮の枠組みをまず米ロで固めた上で、その後に中国に参加を迫る「2段階方式」にも言及した。「とても賢い手法だ」と述べ、米ロで中国に軍縮を迫る方法を模索する考えを示した。

米国では冷戦を戦ったソ連より中国の方が脅威だ、との見方も広がる。

ポンペオ米国務長官は12日、訪問先のチェコで演説した。ソ連を引き合いに出して「中国共産党の脅威に対抗するのはより困難だ」と強調した。

7月下旬にはレーガン元大統領がかつての対ソ戦略で「信頼せよ、しかし確かめよ」の方針だった、と紹介した。その上で「中国に関していえば『信頼するな、そして確かめよ』になる」と、ソ連以上の不信感で中国に臨むべきだと訴えた。

冷戦下の経済競争に敗れたソ連と異なり、いまの中国は近い将来、米国を経済面で追い抜く勢いだ。豊富な資金を軍事力に投入している。ソ連に比べると海軍力の強化も目立つ。空母や潜水艦などの展開力が高まれば、米国本土が戦闘機やミサイルの脅威にさらされる懸念も出てくる。

米国は軍事面で次々と手を打つ。米海軍は2月、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に「小型核弾頭の実戦配備を始めた」と明らかにした。

小型核は通常型に比べて爆発力が小さく、敵国の軍事施設や重要インフラを局所的に攻撃できる。「使いやすい核」といわれ、米軍は抑止力強化につながると説明する。配備先は公開していない。中国の周辺であるインド太平洋地域が有力だといわれている。

空軍は4月から、米領グアムに戦略爆撃機のB52、B1、B2を交代で継続的に配備する運用をやめた。04年から続けてきたやり方をやめ、米本土から機動的に派遣するよう切り替えた。

規則的に運用すれば作戦を見抜かれやすい。元国防総省高官は「運用の不確実性を高めて中国をけん制する」と話しており、中国の脅威に敏感になっている。米メディアによると14日には台湾に戦闘機F16の最新型を66機売却すると発表。原子力空母も南シナ海に派遣して演習をしている。

ビリングスリー大統領特使は14日、開発中の中距離ミサイルについて日本がアジアでの配備候補地になると語った。日本が「敵基地攻撃能力」の保有を検討していることにも支持を表明した。いずれも北朝鮮だけでなく、中国の脅威も念頭に置いたものだ。

一方で米中では偶発的な衝突のリスクもある。元国防総省高官は「ロシアに比べて中国との対話ルートは細い」と懸念を示す。米ロには冷戦期から不測の事態に備えた意思疎通の仕組みがあった。米ロが駐留するシリアでは軍当局者が綿密に連絡を取り合う。米中にはこうした枠組みは乏しい。エスパー国防長官は年内の訪中を探っており、米中の軍当局者間の関係を強化する狙いがある。』